お屋敷メイドと7人の兄弟

とよ

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休憩時間4

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 ユジはいつも勇敢だ。誰彼構わず話しかけて、すぐ仲良くなる。勉強も運動も、がむしゃらにやって、なのに飽きたらあっさりやめてしまう。どんなに才能があってもだ。
 俺は何につけあんまり上手じゃなくて、音楽だけはちょっぴりマシにできたから、細々とやり続けている。まごまごして、ユジに引っ張ってもらわないとなんにもできない。昔からそうだった。

 だから、レイラとライラに初めて会った時、きらきら眩しいライラよりも、銀鼠色みたいに落ち着いた微笑みを返してくれるレイラに惹かれた。このひとの側でなら、ちゃんとゆっくり呼吸ができると思った。

 太陽みたいなユジがいないクリスマス、ふと窓の外を見上げると雪が降っていた。
 その白さと静けさにレイラを思い出した。雪にはない、温もりと清潔な匂いも。

 会いたくなって呼んだらすぐ来てくれた。レイラはいつも丁寧にお辞儀をする。普段と変わらない彼女に安心した。
 ライラは最近ずっと体調が悪いらしい。兄さん達が言っていた。大丈夫?と聞くと、曖昧な笑みで濁された。あんまり良くないのかな。心配だ。

 キスを交わしながらネグリジェを脱がせると、真っ白できめ細やかな裸体が現れる。そこで気づいた。彼女と一対一でセックスするのは初めてだ。
 急に緊張してきて、まごついたら、にっこり笑って抱き締めてくれた。いつもの感触に心が安らぐ。

 俺はたっぷり時間をかけてクンニするのが好きだ。レイラのむっちりした太ももの間に顔を埋めて、舌と唇で好きなだけ愛撫すると、艶めいた溜息をついて、俺の髪を撫でてくれる。
 あの夜のレイラはいつにもまして静かで、窓ガラスをそっと曇らせるような湿った吐息に、ほんの少しだけ喘ぎを忍ばせて、そうして俺に身を任せてくれた。

 お互いの体をゆっくり溶かしあうようなセックスのあと、柔らかい身体を抱き締めながら寝入った。
 初めて自分一人で味わったレイラは、ずっと握りしめていた水晶みたいに、温かくて、清かった。

 明け方、レイラがそっとベッドを抜け出す気配がした。薄青い光に浸りながら、床に落ちたネグリジェを拾う、背中の優しい曲線を、今でも覚えている。
 
 レイラ。
 俺はどこで間違えちゃったのかな。
 俺のせいじゃないって、みんな言うけれど。そんなの嘘だ。

 レイラの、透き通るように綺麗な身体と、気高く透明な心。
 もう赤黒く爛れてひび割れてしまった。
 
 それでもあの落ち着いた笑みをたたえて紅茶を注いでくれるレイラに、俺は何の役にも立たない話ばっかりしている。
 
 甘えてごめんなさい。
 頼ってごめんなさい。
 傷つけてごめんなさい。
 言えない言葉達はゆっくりゆっくり喉に、肺に、折り重なって、俺はもう、呼吸のしかたがわからない。

 息苦しくて眠れない夜、せめてもの償いに祈るんだ。
 どうか、どうか。

 レイラが、ひび割れたままの泣き顔を、見せられる誰かに出会えますように。
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