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慈愛力の脅威
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ミモザ王子は次期女王陛下の王婿となる。
王婿とは女王陛下の配偶者となる男性に与えられるポジションで王配とも呼ばれる。
女王の夫なので絶大な権力を握れる可能性もあるがミモザ王子は権力に興味がなかった。
頭脳明晰で14歳離れした冷静な観察力と分析力を持ったミモザ王子だが、気難しいと誤解されるほど子供らしさを出さない。
鮮やかなオレンジに近い金髪、サファイアのように澄んだ瞳、端正な面立ちに恵まれた結構な美少年なのに何を考えているか読めないため近寄りがたい印象をまわりに与えてしまう。
そんな少し周囲に誤解を与えやすい以外は鋭敏で王家らしい誇り高さと器の大きさを持ったミモザ王子だったが、こんな完璧ともいえる王子にも弱点があった。
モモはそのミモザ王子の弱点の被害を近習になってから一身に被っている。
ミモザ王子に長く仕えている従者のシルフィに、モモはラン・ヤスミカ領に旅立つ前に忠告されていた。
「離宮でお暮らしのときは顕著ではないけど、ミモザ王子は慈愛力が常人離れしている!要は困った人を看過できないお人柄。ミモザ王子ご自身も自覚しているから気難しく振る舞っているが、自分をかえりみず他者に尽くすから道中、危険に巻き込まれぬようお守りしてくれ!」
たしかにミモザ王子は野心的とは無縁な献身的な性格で、自分に仕えてくれる者に対しても慈悲深い。
「まあ……俺を近習にしたりダイアナ王女に献身的に尽くしたり、ミモザ王子はお優しいけどそこまで危ないもんか?」
シルバー家の嫡男ミシェルも相当なお人好しなのでモモはその程度の寛容さだと少々ミモザ王子の慈愛力を甘く見ていた。
そして……ラン・ヤスミカ領までの道中で散々な目に遭い、現在進行形で振り回されている。
「ミモザ王子!今回はユーリ殿の兄君エセル殿が快くキトリを引き取ってくれましたが、言わせてください!」
大きく息を吸ってモモは怒鳴った。
「哀れに感じても迂闊に浮浪児を拾うな!世話ができないのなら同情心で助けるな!それは見捨てるより残酷なんだよ!」
キトリはモモとミモザ王子がこっそり隣国に潜入しているとき出会った孤児で人買いに売られる寸前であった。
ミモザ王子が無謀にも有り金をはたいて人買いと交渉してキトリを助けてしまった。
モモが少し目を離したらミモザ王子がいないので必死で探して見つけたと安心したら、すでにミモザ王子はキトリを人買いから救っていたのだ。
人買いは大金に満足して去ったが呆然としているモモに向かってミモザ王子は思案顔で言ったのである。
「モモ。訳あってこの子を引き取ったがどうするべきか?」
政治的な面では大人顔負けなくらい相手の数手先以上を読んでいるミモザ王子だが、可哀想な子供を前に先をまったく読まず有り金を溶かした。
御忍びで隣国に潜入している立場で幼い子供を保護するなんてなにを考えてるのかとモモはぶちギレたいのを寸前で堪えて作戦を考えた。
それが……申し訳ないが、ラン・ヤスミカ家になんとかしてもらう作戦である。
これが前回のキトリ侵入事件だ。
作戦は成功してキトリは幸運にもラン・ヤスミカ家の嫡男エセルの養子となり大切に育てられている。
モモやミモザ王子もエセルが召使でなく養子としてキトリを引き取るとは予想外であった。
キトリはエセルの実子である双子のジャン&クレールともすぐに打ち解けて元気にラン・ヤスミカ家の子供として暮らしている。
リンは侵入者と誤解していたとはいえ、キトリを手荒に扱ったのを謝罪してユーリも新しい甥っ子を可愛がっている。
ミモザ王子も大概だがラン・ヤスミカ家の面々も慈愛力が半端ない。
「本当にミモザ王子の行動には驚かされる!ラン・ヤスミカ家がキトリを見捨てたらどうするつもりだったのか!?」
ラン・ヤスミカ家別邸の厨房にてモモはシオンに愚痴っていた。
シオンの傍にはエドガーがいて彼はシオンの腰を抱きながらイケメンフェイスで告げた。
「このラン・ヤスミカ家が哀れな孤児を見捨てると思うか?見くびってもらっては困る」
「それは確信してましたが……。エドガー様はお世話になっているだけでラン・ヤスミカ家の者ではないでしょう?」
「私はここでシオンと死ぬまで暮らす。シオンと同じ墓に入れるよう父上にお願いしなくては」
悠々ニートライフを満喫しつつ終活まで父クロードにお願いするエドガー・イリス・シルバー25歳。
それを聞いていたシオンは野菜の皮を包丁で器用に剥きながら冷静に言った。
「悪いエドガー。俺、死んだ妻子と同じ墓に埋葬してほしいってエクソシストに頼んでる。お前はほかをあたれ」
「ならばシオンとシオンの妻子と私が同じ墓でよかろう?天国のシオンの妻子も許してくれる」
「嫌だ。妻子が許しても俺が許さない」
「ならばシオンの墓の隣に私の墓をつくらせよう。隣ならばよかろう?」
なんだか、ミモザ王子の愚痴が脱線してエドガーとシオンの墓の駆け引きとなってきている。
シオンはエドガーに付きまとわれながらも超絶手際よく料理をしながらモモに顔を向けた。
「隣国で不幸な人を助けていたらキリがない。でも……危険を承知で俺の祖国の子供を救ってくれたミモザ王子を非難はできないな」
シオンにとって隣国は嫌な思い出が詰まった故郷だが、最愛の妻とわずかな時間を過ごした場所でもある。
「俺の育った伯爵家は荒んでてな。両親はお互いに口を利かない。母は兄ばかり溺愛する。父は俺を跡継ぎにしたけど厳しくて愛情なんて皆無だった」
「なんだよ?珍しいな。シオンが過去を語るなんて」
モモが怪訝な顔をするとシオンはエドガーに張り付かれながら手早く料理を続けながら言ったのだ。
「俺は結婚して初めて家族……妻に優しく接してもらった。それで救われたんだ。妻は俺がとても寂しそうにみえるって憐れんでくれた」
それだけ言うとシオンはエドガーに味見をさせながらモモを見ると泣くのを堪えているような笑顔で告げる。
「過度な慈愛の心は身を滅ぼす危険がある。そう考えるとミモザ王子がしたことは無謀かもしれない。でも、だからこそ、王子は王婿に相応しいんだよ」
国王になるには優しすぎるミモザ王子だからダイアナ王女は自分の花婿に選んだのだろう。
ダイアナ王女は確信しているのだ。
ミモザ王子は絶対に自分を裏切らないと。
女王陛下の善き王婿となり生まれてくる子供たちの優しい父親となり、信頼できる臣下になれる。
「ミモザ王子は最初から自分は王の器ではないと自覚していたのか」
そう考えるとモモは途端にミモザ王子に感じる違和感の正体がわかり腑に落ちた。
鋭敏な知性を誇り、寛容な態度から王座を狙えると誤解されたが、そもそもミモザ王子は玉座に相応しくなかったのだ。
「ミモザ王子が本当に怜悧なら俺を近習にはしないか……」
モモは天才的な賢さと破滅的な慈愛の心を持っているミモザ王子は急に危なっかしくなってきた。
「そろそろ王子が待ってるから部屋に戻る」
「すぐに食事の支度が整うから食堂に来てくれよ」
シオンの言葉に頷くとモモは厨房を出ていった。
エドガーは懲りずにシオンに付きまとっている。
「シオン。やはり私もシオンの家族と同じ墓がよい。妥協してくれ」
「そうかよ。なら好きにしろ。多分、死んだ妻も子も最初は引くが許すだろ」
逆に心に消えない傷を負った貴方に希望を与えてくれたエドガーを冷たくするなと妻は怒るかもなとシオンは思うと堪らず涙が溢れた。
耐えられず泣き出したシオンの背中をエドガーは黙って擦り続けた。
モモが部屋に戻るとミモザ王子は静かに書物を読んでいた。
「モモ。キトリで使い果たした金貨だが案ずるな」
「もう怒ってませんよ!ミシェルに送金させるので!俺も怒り過ぎました!」
素直に謝ろうとしたモモに対してミモザ王子はニヤリと笑うと大袋の金貨を見せた。
「ダイアナ姉上が追加で送金してくれた。僕が野に放たれたらお金が必要だから仕送りを増やすと手紙で約束してくれたから安心しておくれ」
「アンタ!婚礼前からヒモになるな!ダイアナ王女も嬉々として送金するなよ!」
「だから金貨は僕ではなくモモに管理してもらえと姉上の命令だ。モモ。金貨の管理をしておくれ」
ミモザ王子の性格を把握しているので支出を最小限にしたいダイアナ王女はモモに金銭管理を命じてきた。
これでハッキリした。
ダイアナ王女の方が圧倒的に王の器であると。
ミモザ王子は聡明で政治的センスにも優れているが慈愛は度を過ぎるとヤバいことになる。
しかし、モモは非道になれないミモザ王子だからこそ心から仕えることができるのだと実感した。
「そろそろ食事です。ミモザ王子。食堂に行きましょう?」
「そうだな。シオンの料理は美味だ」
2人で食堂に降りるとユーリとリンが仲良く食事の用意をしていてシオンの姿がない。
「あれ?シオンは?ユーリ殿」
モモが問いかけるとユーリは苦笑いして弁明を始めた。
「いま少し情緒不安定で泣いているからエドガー義兄上が慰めてくださっている」
「エドガー兄様が厨房でシオンを抱き締めているから大丈夫!」
主人夫婦に仕事をさせて情緒不安定になっているシオンをモモは呆れて呼びに行こうとしたがミモザ王子は阻止した。
「ソッとしておいてやれ。悲しみの発作は誰にでもある」
それよりユーリ殿とリンを手伝おうと微笑むミモザ王子を見てモモは思わず口からこぼれた。
「俺は王子の近習になれてよかった!未来の嫁に仕送りさせてる慈愛に満ちたヒモでも!」
モモの言い草にミモザ王子は稀にみる屈託ない表情で「それはなによりだ」と微笑んでいた。
end
王婿とは女王陛下の配偶者となる男性に与えられるポジションで王配とも呼ばれる。
女王の夫なので絶大な権力を握れる可能性もあるがミモザ王子は権力に興味がなかった。
頭脳明晰で14歳離れした冷静な観察力と分析力を持ったミモザ王子だが、気難しいと誤解されるほど子供らしさを出さない。
鮮やかなオレンジに近い金髪、サファイアのように澄んだ瞳、端正な面立ちに恵まれた結構な美少年なのに何を考えているか読めないため近寄りがたい印象をまわりに与えてしまう。
そんな少し周囲に誤解を与えやすい以外は鋭敏で王家らしい誇り高さと器の大きさを持ったミモザ王子だったが、こんな完璧ともいえる王子にも弱点があった。
モモはそのミモザ王子の弱点の被害を近習になってから一身に被っている。
ミモザ王子に長く仕えている従者のシルフィに、モモはラン・ヤスミカ領に旅立つ前に忠告されていた。
「離宮でお暮らしのときは顕著ではないけど、ミモザ王子は慈愛力が常人離れしている!要は困った人を看過できないお人柄。ミモザ王子ご自身も自覚しているから気難しく振る舞っているが、自分をかえりみず他者に尽くすから道中、危険に巻き込まれぬようお守りしてくれ!」
たしかにミモザ王子は野心的とは無縁な献身的な性格で、自分に仕えてくれる者に対しても慈悲深い。
「まあ……俺を近習にしたりダイアナ王女に献身的に尽くしたり、ミモザ王子はお優しいけどそこまで危ないもんか?」
シルバー家の嫡男ミシェルも相当なお人好しなのでモモはその程度の寛容さだと少々ミモザ王子の慈愛力を甘く見ていた。
そして……ラン・ヤスミカ領までの道中で散々な目に遭い、現在進行形で振り回されている。
「ミモザ王子!今回はユーリ殿の兄君エセル殿が快くキトリを引き取ってくれましたが、言わせてください!」
大きく息を吸ってモモは怒鳴った。
「哀れに感じても迂闊に浮浪児を拾うな!世話ができないのなら同情心で助けるな!それは見捨てるより残酷なんだよ!」
キトリはモモとミモザ王子がこっそり隣国に潜入しているとき出会った孤児で人買いに売られる寸前であった。
ミモザ王子が無謀にも有り金をはたいて人買いと交渉してキトリを助けてしまった。
モモが少し目を離したらミモザ王子がいないので必死で探して見つけたと安心したら、すでにミモザ王子はキトリを人買いから救っていたのだ。
人買いは大金に満足して去ったが呆然としているモモに向かってミモザ王子は思案顔で言ったのである。
「モモ。訳あってこの子を引き取ったがどうするべきか?」
政治的な面では大人顔負けなくらい相手の数手先以上を読んでいるミモザ王子だが、可哀想な子供を前に先をまったく読まず有り金を溶かした。
御忍びで隣国に潜入している立場で幼い子供を保護するなんてなにを考えてるのかとモモはぶちギレたいのを寸前で堪えて作戦を考えた。
それが……申し訳ないが、ラン・ヤスミカ家になんとかしてもらう作戦である。
これが前回のキトリ侵入事件だ。
作戦は成功してキトリは幸運にもラン・ヤスミカ家の嫡男エセルの養子となり大切に育てられている。
モモやミモザ王子もエセルが召使でなく養子としてキトリを引き取るとは予想外であった。
キトリはエセルの実子である双子のジャン&クレールともすぐに打ち解けて元気にラン・ヤスミカ家の子供として暮らしている。
リンは侵入者と誤解していたとはいえ、キトリを手荒に扱ったのを謝罪してユーリも新しい甥っ子を可愛がっている。
ミモザ王子も大概だがラン・ヤスミカ家の面々も慈愛力が半端ない。
「本当にミモザ王子の行動には驚かされる!ラン・ヤスミカ家がキトリを見捨てたらどうするつもりだったのか!?」
ラン・ヤスミカ家別邸の厨房にてモモはシオンに愚痴っていた。
シオンの傍にはエドガーがいて彼はシオンの腰を抱きながらイケメンフェイスで告げた。
「このラン・ヤスミカ家が哀れな孤児を見捨てると思うか?見くびってもらっては困る」
「それは確信してましたが……。エドガー様はお世話になっているだけでラン・ヤスミカ家の者ではないでしょう?」
「私はここでシオンと死ぬまで暮らす。シオンと同じ墓に入れるよう父上にお願いしなくては」
悠々ニートライフを満喫しつつ終活まで父クロードにお願いするエドガー・イリス・シルバー25歳。
それを聞いていたシオンは野菜の皮を包丁で器用に剥きながら冷静に言った。
「悪いエドガー。俺、死んだ妻子と同じ墓に埋葬してほしいってエクソシストに頼んでる。お前はほかをあたれ」
「ならばシオンとシオンの妻子と私が同じ墓でよかろう?天国のシオンの妻子も許してくれる」
「嫌だ。妻子が許しても俺が許さない」
「ならばシオンの墓の隣に私の墓をつくらせよう。隣ならばよかろう?」
なんだか、ミモザ王子の愚痴が脱線してエドガーとシオンの墓の駆け引きとなってきている。
シオンはエドガーに付きまとわれながらも超絶手際よく料理をしながらモモに顔を向けた。
「隣国で不幸な人を助けていたらキリがない。でも……危険を承知で俺の祖国の子供を救ってくれたミモザ王子を非難はできないな」
シオンにとって隣国は嫌な思い出が詰まった故郷だが、最愛の妻とわずかな時間を過ごした場所でもある。
「俺の育った伯爵家は荒んでてな。両親はお互いに口を利かない。母は兄ばかり溺愛する。父は俺を跡継ぎにしたけど厳しくて愛情なんて皆無だった」
「なんだよ?珍しいな。シオンが過去を語るなんて」
モモが怪訝な顔をするとシオンはエドガーに張り付かれながら手早く料理を続けながら言ったのだ。
「俺は結婚して初めて家族……妻に優しく接してもらった。それで救われたんだ。妻は俺がとても寂しそうにみえるって憐れんでくれた」
それだけ言うとシオンはエドガーに味見をさせながらモモを見ると泣くのを堪えているような笑顔で告げる。
「過度な慈愛の心は身を滅ぼす危険がある。そう考えるとミモザ王子がしたことは無謀かもしれない。でも、だからこそ、王子は王婿に相応しいんだよ」
国王になるには優しすぎるミモザ王子だからダイアナ王女は自分の花婿に選んだのだろう。
ダイアナ王女は確信しているのだ。
ミモザ王子は絶対に自分を裏切らないと。
女王陛下の善き王婿となり生まれてくる子供たちの優しい父親となり、信頼できる臣下になれる。
「ミモザ王子は最初から自分は王の器ではないと自覚していたのか」
そう考えるとモモは途端にミモザ王子に感じる違和感の正体がわかり腑に落ちた。
鋭敏な知性を誇り、寛容な態度から王座を狙えると誤解されたが、そもそもミモザ王子は玉座に相応しくなかったのだ。
「ミモザ王子が本当に怜悧なら俺を近習にはしないか……」
モモは天才的な賢さと破滅的な慈愛の心を持っているミモザ王子は急に危なっかしくなってきた。
「そろそろ王子が待ってるから部屋に戻る」
「すぐに食事の支度が整うから食堂に来てくれよ」
シオンの言葉に頷くとモモは厨房を出ていった。
エドガーは懲りずにシオンに付きまとっている。
「シオン。やはり私もシオンの家族と同じ墓がよい。妥協してくれ」
「そうかよ。なら好きにしろ。多分、死んだ妻も子も最初は引くが許すだろ」
逆に心に消えない傷を負った貴方に希望を与えてくれたエドガーを冷たくするなと妻は怒るかもなとシオンは思うと堪らず涙が溢れた。
耐えられず泣き出したシオンの背中をエドガーは黙って擦り続けた。
モモが部屋に戻るとミモザ王子は静かに書物を読んでいた。
「モモ。キトリで使い果たした金貨だが案ずるな」
「もう怒ってませんよ!ミシェルに送金させるので!俺も怒り過ぎました!」
素直に謝ろうとしたモモに対してミモザ王子はニヤリと笑うと大袋の金貨を見せた。
「ダイアナ姉上が追加で送金してくれた。僕が野に放たれたらお金が必要だから仕送りを増やすと手紙で約束してくれたから安心しておくれ」
「アンタ!婚礼前からヒモになるな!ダイアナ王女も嬉々として送金するなよ!」
「だから金貨は僕ではなくモモに管理してもらえと姉上の命令だ。モモ。金貨の管理をしておくれ」
ミモザ王子の性格を把握しているので支出を最小限にしたいダイアナ王女はモモに金銭管理を命じてきた。
これでハッキリした。
ダイアナ王女の方が圧倒的に王の器であると。
ミモザ王子は聡明で政治的センスにも優れているが慈愛は度を過ぎるとヤバいことになる。
しかし、モモは非道になれないミモザ王子だからこそ心から仕えることができるのだと実感した。
「そろそろ食事です。ミモザ王子。食堂に行きましょう?」
「そうだな。シオンの料理は美味だ」
2人で食堂に降りるとユーリとリンが仲良く食事の用意をしていてシオンの姿がない。
「あれ?シオンは?ユーリ殿」
モモが問いかけるとユーリは苦笑いして弁明を始めた。
「いま少し情緒不安定で泣いているからエドガー義兄上が慰めてくださっている」
「エドガー兄様が厨房でシオンを抱き締めているから大丈夫!」
主人夫婦に仕事をさせて情緒不安定になっているシオンをモモは呆れて呼びに行こうとしたがミモザ王子は阻止した。
「ソッとしておいてやれ。悲しみの発作は誰にでもある」
それよりユーリ殿とリンを手伝おうと微笑むミモザ王子を見てモモは思わず口からこぼれた。
「俺は王子の近習になれてよかった!未来の嫁に仕送りさせてる慈愛に満ちたヒモでも!」
モモの言い草にミモザ王子は稀にみる屈託ない表情で「それはなによりだ」と微笑んでいた。
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