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西の離宮の朝昼
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王宮の西側に建っている離宮の主人であるミモザ王子の1日のルーティンはだいたい決まっている。
起床してすぐに沐浴をして着替えたら従者のシルフィが用意した紅茶を飲みながら読書をする。
朝食はパンとスープのみで王子の食事メニューとは思えないほど質素なものだ。
朝食を食べていると側付きとして仕えているモモが起きてくるので会話をする。
「おはようモモ。朝食を済ませたら手紙の仕分けを手伝っておくれ」
「はーい。ミモザ王子……何度も言ってるけど食べ物が粗末すぎ!国王陛下からのお金は充分にあるんだ。もう少し食べないと栄養不足になる」
これじゃあ、ラン・ヤスミカ領の人々の食事の方が豪華だとモモがからかうとミモザ王子は澄ました顔で告げた。
「このパンとスープだって食べられず死んでしまう者もいる。僕は元来少食だから必要最低限の食事でよいのだ」
「そりゃ……そうだけど……。体力をつけるにはもう少し食べないと」
ミモザ王子だけが質素に生活しても飢えている民衆を救えるわけではない。
そんなことミモザにもわかっているが王家とはいえ食べきれないほどの豪華な食事など必要ないと考えていた。
「別にモモまで僕に合わせる必要はない。パンとスープで足りないならシルフィにハムやチーズを持ってこさせる」
「んじゃ!お言葉に甘えて!食べられるときに食べ物は口に入れないと飢えたとき困るんだ!」
貧民窟で育ったモモにとっては、シルバー家に運良く拾われても再び飢えるという強迫観念が常にある。
ミモザ王子もそれがわかっているのでモモが遠慮しないよう別メニューの食事を用意している。
本来は離宮の主人であるミモザ王子は1人で食事をする決まりだが側付きのモモとは仕事の打ち合わせもあるので同じテーブルに座らせている。
「ダイアナ王女との婚約が知られてから宮廷にいる貴族連中からの手紙が山ほどくる。うっとうしい」
「今まで王子を無視していた貴族だって状況が変わったからお近づきになりたい!そんなもんですよ!」
「わかっている。しかし、そんな者たちの手紙を大量に読まないといけない僕の立場を誰も考えはしない。返事だって書く必要性があるというに」
「あはは!ご機嫌伺いの手紙ばっかで有益な情報とかないですからね!でも、俺だって結構代筆してますよ?」
他人の筆跡を真似るプロであるモモが大活躍するのだがミモザ王子はわざとらしいご機嫌とりの手紙のなかからでも耳よりな情報を解読する天才であった。
朝食が終わるとミモザ王子とモモは手分けして貴族から届けられる大量の書簡を読み進めていく。
「ふむ……。モモ!この手紙とこっちは要注意だ。返事は僕が書こう。他の手紙の内容も聞かせておくれ」
「みんな示し合わせたみたいに同じような文面ですよ?王子をやたら誉めて持ち上げる手紙ばっか!仕事とはいえうざい!」
「投げやりにせず手紙を注意して読んでくれ。同じような手紙の文章でも違和感を感じたものはないか?」
ミモザ王子に見つめられて、モモはハッとしたように手紙の束から1通を取り出した。
「この宮廷でダイアナ王女の取り巻きをしてる貴族の手紙が怪しい!手紙の内容は王子と王女の結婚を祝福してるけど!」
モモが手紙を見せるとミモザ王子はあらかじめわかっていたかのように微笑んだ。
「この貴族は僕の父上……亡き王弟の取り巻きだった男の息子だ。ダイアナ王女の即位を陰で反対して僕を担ぎ上げようとしていた急先鋒」
「そうだ!なのに宮廷ではダイアナ王女に媚を売ってる。ダイアナ王女も彼は信用できないとミシェルに言ってた」
「モモ。この貴族は僕がダイアナ王女……姉上と結婚をしたら首尾良く僕を王座にすえるために行動を起こす。今のうちに適当な理由をつけて宮廷を出禁させよとシルバー家のクロードに伝えよ」
ミモザ王子を王位にと狂信的に画策している貴族をダイアナ王女のそばに近づけるのは危険だ。
そういう輩は別にミモザ王子を敬い崇拝しているのではなく自分の家の権力を増大させるためだけに動いている。
勘違いした野心家の愚行でダイアナ王女を危険に晒すわけにはいかないのだ。
ミモザ王子が西の離宮に数年間も引き込もっているのはそういう愚か者を遠ざける意味が込められていた。
西の離宮には基本的にミモザ王子が面会を許した者しか入れない。
国王陛下と王妃とダイアナ王女だけがミモザ王子の許可なしでも訪問できる人間である。
シルバー家の人間もミモザ王子の母方の親戚でもあるヴィオレッド家の人間も王子の許可なく訪ねてきても門前払いされる決まりだ。
モモやミシェルはミモザ王子が許しているから離宮への出入りが可能なだけである。
そして、王子が信頼している従者のシルフィと護衛のワト&ニノは基本は西の離宮から外に出ることもない。
そういう人を選んでいる態度がミモザ王子は高慢だとか気難しいとか陰気とか誤解される所以となった。
しかし、モモが考えても不毛な王座争いを水面下で避けているミモザ王子の態度は英断である。
もしかして極端に身体が虚弱体質だと強調するのも王位には相応しくないと周囲にアピールする手段なのかと思える。
「ミモザ王子。俺が離宮に出仕してから王子が寝込んでるとこを見たことないけど?」
本当に病弱なのかとモモが暗に質問するとミモザ王子は少し口角を上げた。
「幼き頃は早世した両親に似て身体が弱かった。だが、住まいをこの離宮に移したら途端に楽になったな」
「それって?宮廷で誰かミモザ王子の命を狙ってた奴がいたのでは!?」
毒薬かなにかで病死に偽装して暗殺を企む者がいても不思議ではない。
それくらいのことは平然とやってのける者なんて貴族には山ほどいる。
ミモザ王子は黙っていたがモモの顔を見てニコリと笑った。
「ここだけの話だぞ?口外は許さん。ミシェルにもな」
「え?はい!誓って誰にも言いません」
絶対に口外しないと誓ったモモにミモザ王子は真実を告げたのでモモはしばし唖然とした。
ミモザ王子はたしかに幼少の頃は丈夫ではなかった。
しかし、なんとか成長して物心ついてくると自分の周りの複雑さをすぐに自覚する。
国王夫妻やダイアナ王女が望んでいなくてもミモザ王子を消そうと企む者が周囲に隠れていることを。
それは国王が善意で連れてきた家庭教師であったり、シルフィが従者に就任する前の上級貴族の子弟であったりした。
ミモザ王子は自分の身が危ないという危機感と同時にダイアナ王女の身の上も危険だと察するようになる。
ミモザ王子の敵がいるならダイアナ王女を邪魔に思う貴族だってもちろん存在するのだ。
他国からしたらすぐに崩御しそうなミモザ王子が王位についた方が都合が良い。
そんなことを考えた末にミモザ王子は自分から毒薬を飲んで病弱を装っていた。
内情を知っているのは従者のシルフィだけである。
「これは誰にも言うなよ?ダイアナ王女にも。協力してくれていたシルフィが罰せられる」
「は……はい!わかりました。誰にも言いません。誓って!」
「ならばよい。さてと……手紙も大方片付いたから昼の軽食でもとっておいで」
ミモザ王子は午後に紅茶とサンドイッチを食べるが昼食というものをとらないスタンスであった。
モモにだけ昼食を食べさせて、ミモザ王子はひとりでなにやら考え事があるらしい。
「ミモザ王子?俺、ひとりで食べるの嫌なので一緒に食べてください」
「仮にも王子に命令するのか?僕はお腹は減っていない」
「なら!俺も食べないです!」
そう叫んだモモのお腹がグゥーっと鳴ったのでミモザ王子は思わず噴き出してしまった。
「やれやれ。降参だ。考え事はのちほどするから昼食にしよう」
「はい!やっぱ!お腹がすいたら食べないと!王子!お昼はサンドイッチと肉が食べたいです!」
「モモは本当に食欲旺盛だな。僕はサンドイッチだけでよい」
従者のシルフィが用意したランチを食べながらモモは他愛ない世間話をミモザ王子に話した。
「それで!リン様のエロ薬をイッキ飲みしたシオンがエドガー様を誘惑して!そういう関係になってシオンはエドガー様をみると胸が苦しくなり過呼吸になってるそうです!エドガー様を見ると息が出来なくなるなんて!シオンがのろけ話をさんざん書いてきて」
人間の感情の機微に聡くて敏感なミモザ王子にはわかった。
シオンは全くのろけておらずエドガーのせいで過呼吸になるレベルにマジでメンタルをやられていると。
モモはそういう性道徳には、てんで鈍感なのでミモザ王子は息を吐くと告げた。
「モモ。シオンとやらが本当に壊れないうちに何とかしてやれ。亡き奥方を偲んでいた人間が媚薬で錯乱したとはいえ貞操を破ってしまったのだ。過呼吸になるほどショックであろう?」
「うーん!ユーリ様とリン様もシオンにかける言葉がないらしくて。誰も悪くない分、対処に困るそうで」
「まあ、エドガーとそのシオンという執事の問題だ。おそらくエドガーは責任をとるだろうな」
ミモザ王子の言葉を聞いてモモはエドガーはどうする気なのか思いを馳せた。
1番可能性としてあり得るのがシオンがエドガーの愛人に正式になることである。
それが最も順当だとモモが述べるとミモザ王子は再び息を吐いた。
「エドガーはそれで責任を取った形となるがシオンの気持ちはどうなる?」
心身に大ダメージを負ってしまったシオンが素直にエドガーの愛人におさまるかとミモザ王子に問われてモモは考え込んだ。
「最悪……シオンがラン・ヤスミカ家から出ていく可能性もありか?」
「それを真っ先に考えよ。モモ。シオンは隣国の元伯爵アンバー・ライラック家の嫡男であったと前に申したな?」
「え?はい。そうだけど?」
モモが頷くとミモザはそれ以上はなにも言わずサンドイッチを少し口にいれた。
ミモザ王子はラン・ヤスミカ家のエロ媚薬騒動を丸くおさめる手段を知っているのか?
モモはこの聡明な王子の顔を眺めたが容易にその思惑は見抜けなかった。
end
起床してすぐに沐浴をして着替えたら従者のシルフィが用意した紅茶を飲みながら読書をする。
朝食はパンとスープのみで王子の食事メニューとは思えないほど質素なものだ。
朝食を食べていると側付きとして仕えているモモが起きてくるので会話をする。
「おはようモモ。朝食を済ませたら手紙の仕分けを手伝っておくれ」
「はーい。ミモザ王子……何度も言ってるけど食べ物が粗末すぎ!国王陛下からのお金は充分にあるんだ。もう少し食べないと栄養不足になる」
これじゃあ、ラン・ヤスミカ領の人々の食事の方が豪華だとモモがからかうとミモザ王子は澄ました顔で告げた。
「このパンとスープだって食べられず死んでしまう者もいる。僕は元来少食だから必要最低限の食事でよいのだ」
「そりゃ……そうだけど……。体力をつけるにはもう少し食べないと」
ミモザ王子だけが質素に生活しても飢えている民衆を救えるわけではない。
そんなことミモザにもわかっているが王家とはいえ食べきれないほどの豪華な食事など必要ないと考えていた。
「別にモモまで僕に合わせる必要はない。パンとスープで足りないならシルフィにハムやチーズを持ってこさせる」
「んじゃ!お言葉に甘えて!食べられるときに食べ物は口に入れないと飢えたとき困るんだ!」
貧民窟で育ったモモにとっては、シルバー家に運良く拾われても再び飢えるという強迫観念が常にある。
ミモザ王子もそれがわかっているのでモモが遠慮しないよう別メニューの食事を用意している。
本来は離宮の主人であるミモザ王子は1人で食事をする決まりだが側付きのモモとは仕事の打ち合わせもあるので同じテーブルに座らせている。
「ダイアナ王女との婚約が知られてから宮廷にいる貴族連中からの手紙が山ほどくる。うっとうしい」
「今まで王子を無視していた貴族だって状況が変わったからお近づきになりたい!そんなもんですよ!」
「わかっている。しかし、そんな者たちの手紙を大量に読まないといけない僕の立場を誰も考えはしない。返事だって書く必要性があるというに」
「あはは!ご機嫌伺いの手紙ばっかで有益な情報とかないですからね!でも、俺だって結構代筆してますよ?」
他人の筆跡を真似るプロであるモモが大活躍するのだがミモザ王子はわざとらしいご機嫌とりの手紙のなかからでも耳よりな情報を解読する天才であった。
朝食が終わるとミモザ王子とモモは手分けして貴族から届けられる大量の書簡を読み進めていく。
「ふむ……。モモ!この手紙とこっちは要注意だ。返事は僕が書こう。他の手紙の内容も聞かせておくれ」
「みんな示し合わせたみたいに同じような文面ですよ?王子をやたら誉めて持ち上げる手紙ばっか!仕事とはいえうざい!」
「投げやりにせず手紙を注意して読んでくれ。同じような手紙の文章でも違和感を感じたものはないか?」
ミモザ王子に見つめられて、モモはハッとしたように手紙の束から1通を取り出した。
「この宮廷でダイアナ王女の取り巻きをしてる貴族の手紙が怪しい!手紙の内容は王子と王女の結婚を祝福してるけど!」
モモが手紙を見せるとミモザ王子はあらかじめわかっていたかのように微笑んだ。
「この貴族は僕の父上……亡き王弟の取り巻きだった男の息子だ。ダイアナ王女の即位を陰で反対して僕を担ぎ上げようとしていた急先鋒」
「そうだ!なのに宮廷ではダイアナ王女に媚を売ってる。ダイアナ王女も彼は信用できないとミシェルに言ってた」
「モモ。この貴族は僕がダイアナ王女……姉上と結婚をしたら首尾良く僕を王座にすえるために行動を起こす。今のうちに適当な理由をつけて宮廷を出禁させよとシルバー家のクロードに伝えよ」
ミモザ王子を王位にと狂信的に画策している貴族をダイアナ王女のそばに近づけるのは危険だ。
そういう輩は別にミモザ王子を敬い崇拝しているのではなく自分の家の権力を増大させるためだけに動いている。
勘違いした野心家の愚行でダイアナ王女を危険に晒すわけにはいかないのだ。
ミモザ王子が西の離宮に数年間も引き込もっているのはそういう愚か者を遠ざける意味が込められていた。
西の離宮には基本的にミモザ王子が面会を許した者しか入れない。
国王陛下と王妃とダイアナ王女だけがミモザ王子の許可なしでも訪問できる人間である。
シルバー家の人間もミモザ王子の母方の親戚でもあるヴィオレッド家の人間も王子の許可なく訪ねてきても門前払いされる決まりだ。
モモやミシェルはミモザ王子が許しているから離宮への出入りが可能なだけである。
そして、王子が信頼している従者のシルフィと護衛のワト&ニノは基本は西の離宮から外に出ることもない。
そういう人を選んでいる態度がミモザ王子は高慢だとか気難しいとか陰気とか誤解される所以となった。
しかし、モモが考えても不毛な王座争いを水面下で避けているミモザ王子の態度は英断である。
もしかして極端に身体が虚弱体質だと強調するのも王位には相応しくないと周囲にアピールする手段なのかと思える。
「ミモザ王子。俺が離宮に出仕してから王子が寝込んでるとこを見たことないけど?」
本当に病弱なのかとモモが暗に質問するとミモザ王子は少し口角を上げた。
「幼き頃は早世した両親に似て身体が弱かった。だが、住まいをこの離宮に移したら途端に楽になったな」
「それって?宮廷で誰かミモザ王子の命を狙ってた奴がいたのでは!?」
毒薬かなにかで病死に偽装して暗殺を企む者がいても不思議ではない。
それくらいのことは平然とやってのける者なんて貴族には山ほどいる。
ミモザ王子は黙っていたがモモの顔を見てニコリと笑った。
「ここだけの話だぞ?口外は許さん。ミシェルにもな」
「え?はい!誓って誰にも言いません」
絶対に口外しないと誓ったモモにミモザ王子は真実を告げたのでモモはしばし唖然とした。
ミモザ王子はたしかに幼少の頃は丈夫ではなかった。
しかし、なんとか成長して物心ついてくると自分の周りの複雑さをすぐに自覚する。
国王夫妻やダイアナ王女が望んでいなくてもミモザ王子を消そうと企む者が周囲に隠れていることを。
それは国王が善意で連れてきた家庭教師であったり、シルフィが従者に就任する前の上級貴族の子弟であったりした。
ミモザ王子は自分の身が危ないという危機感と同時にダイアナ王女の身の上も危険だと察するようになる。
ミモザ王子の敵がいるならダイアナ王女を邪魔に思う貴族だってもちろん存在するのだ。
他国からしたらすぐに崩御しそうなミモザ王子が王位についた方が都合が良い。
そんなことを考えた末にミモザ王子は自分から毒薬を飲んで病弱を装っていた。
内情を知っているのは従者のシルフィだけである。
「これは誰にも言うなよ?ダイアナ王女にも。協力してくれていたシルフィが罰せられる」
「は……はい!わかりました。誰にも言いません。誓って!」
「ならばよい。さてと……手紙も大方片付いたから昼の軽食でもとっておいで」
ミモザ王子は午後に紅茶とサンドイッチを食べるが昼食というものをとらないスタンスであった。
モモにだけ昼食を食べさせて、ミモザ王子はひとりでなにやら考え事があるらしい。
「ミモザ王子?俺、ひとりで食べるの嫌なので一緒に食べてください」
「仮にも王子に命令するのか?僕はお腹は減っていない」
「なら!俺も食べないです!」
そう叫んだモモのお腹がグゥーっと鳴ったのでミモザ王子は思わず噴き出してしまった。
「やれやれ。降参だ。考え事はのちほどするから昼食にしよう」
「はい!やっぱ!お腹がすいたら食べないと!王子!お昼はサンドイッチと肉が食べたいです!」
「モモは本当に食欲旺盛だな。僕はサンドイッチだけでよい」
従者のシルフィが用意したランチを食べながらモモは他愛ない世間話をミモザ王子に話した。
「それで!リン様のエロ薬をイッキ飲みしたシオンがエドガー様を誘惑して!そういう関係になってシオンはエドガー様をみると胸が苦しくなり過呼吸になってるそうです!エドガー様を見ると息が出来なくなるなんて!シオンがのろけ話をさんざん書いてきて」
人間の感情の機微に聡くて敏感なミモザ王子にはわかった。
シオンは全くのろけておらずエドガーのせいで過呼吸になるレベルにマジでメンタルをやられていると。
モモはそういう性道徳には、てんで鈍感なのでミモザ王子は息を吐くと告げた。
「モモ。シオンとやらが本当に壊れないうちに何とかしてやれ。亡き奥方を偲んでいた人間が媚薬で錯乱したとはいえ貞操を破ってしまったのだ。過呼吸になるほどショックであろう?」
「うーん!ユーリ様とリン様もシオンにかける言葉がないらしくて。誰も悪くない分、対処に困るそうで」
「まあ、エドガーとそのシオンという執事の問題だ。おそらくエドガーは責任をとるだろうな」
ミモザ王子の言葉を聞いてモモはエドガーはどうする気なのか思いを馳せた。
1番可能性としてあり得るのがシオンがエドガーの愛人に正式になることである。
それが最も順当だとモモが述べるとミモザ王子は再び息を吐いた。
「エドガーはそれで責任を取った形となるがシオンの気持ちはどうなる?」
心身に大ダメージを負ってしまったシオンが素直にエドガーの愛人におさまるかとミモザ王子に問われてモモは考え込んだ。
「最悪……シオンがラン・ヤスミカ家から出ていく可能性もありか?」
「それを真っ先に考えよ。モモ。シオンは隣国の元伯爵アンバー・ライラック家の嫡男であったと前に申したな?」
「え?はい。そうだけど?」
モモが頷くとミモザはそれ以上はなにも言わずサンドイッチを少し口にいれた。
ミモザ王子はラン・ヤスミカ家のエロ媚薬騒動を丸くおさめる手段を知っているのか?
モモはこの聡明な王子の顔を眺めたが容易にその思惑は見抜けなかった。
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