けったいな初恋

寿里~kotori ~

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けったいな初恋

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「つまんねー」

それがオレ、月島天乃(つきしま そらの)の口癖・・・

今年、高校生になり、相当に偏差値高い東京の学校に合格したので田舎の親元を離れて都内に移住した。

田舎の公立中学なんて雄の猿と雌の猿しかおらず五月蝿くてマジで「ウキキ―!!」と聞こえると思ったら本物の日本猿が教室に乱入してたが、ぶっちゃけクラスメートより賢そうに感じたくらいだ。

そんなわけで猿と会話なんて成立しないのでオレに同郷の友達はいない。これでオレが勉強しかできない陰キャだったら虐めとか少しは歯応えあるイベントが待ってただろうがオレは生憎、成績は常にトップなうえに運動もできて顔面にソバカスがあるが、わりとイケメンな方だと思う。なのでウキキ~と陰口言われる程度で虐めもなかった。

女子からは何度か告白されたがこちとら雌の猿なんて御免こうむるので相手にせず適当に旅行に来たと言う女子大生で童貞捨てた。やっぱり雌猿と寝ると後腐れあるしな。

そーゆーわけで親の反対を押しきり上京して下宿した先はオレが地元で唯一、人間と認めている矢島さんという都会から移住してきた物書きの友人の家だ。

なんでも凄い資産家の息子だが両親が急逝してしまい孤独らしい。職業は大学で教鞭をとる文学者。いかにも金持ちのボンボンが就きそうな仕事だと思う。

「俺の大学の後輩で良い奴だよ!少しぬけてるけど月島くんがいれば寂しくないしアイツも助かる」

そこで紹介された住所に荷物もって向かったら予想より遥かに立派な邸宅で緊張しながらチャイム押しても誰も出てこない。

(今日はオレがくるから家にいるって話だよな?)

全く応答ない様子に居心地が悪くなり失礼だが門からなかに入り家の気配を伺うことにした。もしセコムが鳴ったらヤバイがそのときはそのときだ。

試しに玄関のドアノブをガチャリとしてみたらかなり意外なことに鍵が開いている。

(もしかして、勝手に入れって意味?)

荷物重いし疲れたので無理にそう納得させオレは玄関をあけて一応「お邪魔します」と呼びかけた瞬間、生まれて初めて頭が硬直した。

玄関のすぐそばに20代半ばとおぼしき線の細い男が死んでる・・・もとい意識を失い仰向けで倒れているのだ。どんなに偏差値高い高校に入れてもイキナリ玄関あけたら2秒で意識不明者発見だと反応に迷う。

「だっ!大丈夫すか!?えと、救急車!!違う、その前にAED!!」

慌てて倒れている青年の心音を確かめると普通の鼓動であり外傷なども皆無でよく聞くとスース~と寝息がすることから、単なる鍵もかけず玄関で寝てる人と言う結論がでた。

(鍵もしないで玄関で爆睡?この人、何がしたいの?)

ハッキリ言って高校入試より難問だがスヤスヤ眠っている青年の安らかなかんばせはオレが今まで見た猿および人間なんぞ問題にならないほど綺麗だった。

「やっぱ都会の奴は野郎でもキレーなんだな」

思わず独りごちるとオレはこの眠り姫をとりあえず玄関よりマシな寝床に運ぼうと抱き上げたらビックリするほど軽く楽々に運べた。

ぎっくり腰になった母親を介抱したときの方がよほど重量がある。恐らく田舎の母はオレがいま下宿先の玄関で何故か爆睡してる細っこい兄さんをお姫様抱っこしてるなんて夢にも思わないだろう。オレだって想定外だ。母さん、オレは元気です。

豪華なソファーのある部屋を見つけたので青年をそこに寝かせてしばし寝顔をみていたが、そのうちに違和感を覚えた。

「こんなデカイ家で金持ちのはずなのに手伝いみたいな人がいない。通いとかか?」

室内は美しく整っているので誰かが手を加えてることは確かだが思えば年若い青年が両親が死んだとはいえ1人で住むにはでかすぎる。

「税金とかスゲー額とられてそー」

そんな事を考えながらキョロキョロと部屋を見ているといつの間にか外から雷鳴が轟き、どしゃ降りの雨になっていた。

「無理に侵入して正解だった。つーか、この人いつまで寝てんだよ」

身体を冷やすと思い何か身体にかけてやるものはないか探したが見つからず仕方なく自前のジャケットをかぶせようとしたら青年がうっすらと瞳を開きはじめたので、挨拶と勝手に入ったことを謝罪しようとしたらちょうど雷鳴が鳴り響き、寝ぼけてるらしい青年の細くしなやかな腕がオレの背中に絡みついた。

「あの・・・」

この雷と大雨でまだ寝ぼけてるとか脳ミソ大丈夫か、この兄さん!?

何とか本当に覚醒させようと声を出そうとするオレは言葉が物理的に出せなくなった。青年がふわりと笑うとオレの唇にがっつりキスしてきたためである。

拝啓
田舎の父さん、母さん、お祖母ちゃん、きっと信じてくれないだろうが外で雷鳴が轟き大雨がザンザン降り注ぐなか、これから世話になる下宿先の兄さんちのソファーでオレは襲われる形で男とセックスしました。

お兄さん殴るなり通報するなり逃げるなりできたけどさ・・・・・・男でもこんな美人が無防備に誘ってきたらやっぱのっかるだろ!こちとら15歳、御年頃なんだから


ソファーがどろとろに汚れるくらいセックスしたら兄さん再び爆睡・・・・・・どうしてこうなった!?
なんか、もう全体的グダグダだが疲れてたのと本能的に満足したのでオレも傍らで寝ることにした。
この数時間で色々ありすぎて激しい雨音も雷鳴もいつの間にかオレの聴覚から遠ざかっていって知らない兄さんに身体を密着させ眠りこけたのだ。

こんな具合にオレ、月島天乃と文学者の嵯峨愛希(さが なるき)さんとの生活はスタートした。

ビックリしたけど結構、悪くないスタートだとまずまず満足だ。年上の綺麗な男の乱れた姿はエロいと学校では学べないことを身をもって知ったし。

雷鳴と大雨を感じながらセックスすると気持ちが昂る


「天乃くんが来るから前の晩は緊張して眠れなくて・・・ほら、僕って大学にいてもまず教員じゃなくて学生だと勘違いされるし。遠いところから親元離れて上京する子に安心できる下宿先だとアピールするために玄関で待ってたら寝不足がタタって寝ちゃった」

以上があの日、嵯峨愛希さんが自宅玄関付近で倒れていた真相である。

このドジっ子ぶりからお察しのとおり愛希さんはソファーでオレとセックスしたことを全く記憶しておらず明け方にソファーで目覚めたとき傍らにオレが寝ててもオレがホームシックで甘えてるだけど勘違いしている有り様だ。ソファーが精液で汚れてたし何より子供とはいえ15歳男子になかで射精されてるのにスルーした。マジで大丈夫かこの人?

「愛希さんって大学でなに教えてんの?」

「六条御息所の生涯・・・要するに源氏物語研究かな」

「あー、あの嫉妬で生き霊ぶっぱなす女か~」

「相手への愛と未練と自身のプライドをあそこまで拗らす一方で彼女は光源氏も認める聡明な女性だよ。逆に彼女がもっと単純だったら物語はつまらない・・・僕は彼女は生き霊なんてほんとは飛ばしてなくて源氏の無自覚な罪の意識が生んだ幻だと思うんだ」

つまり愛希さんは生き霊テロ女について研究して大学で教えているのだが、そんな生産性ないテーマに学生は満足するのか首を傾げたら意外と人気なのだと久々に連絡した矢島さんが教えてくれた。

「ひたすら光源氏の愛情たのみな紫の上より今の子って愛ゆえに生き霊とばすくらいアクティブな六条の方がうけるらしい。特に女子に人気だよ」

「それ、愛希さんが若くて綺麗め男子だからじゃない?」

「ははは!それもあるかもな!!大学時代のアイツのアダ名、カレカノ泥棒だし」

繊細な見てくれに反して凄まじいアダ名ついてやがる!!!

「本人は内気でボンヤリしてんのに男女ともにモテんだよ。魔性だよな!でも、優秀な奴だし信用できるから月島くんも仲良くしてやってくれ」

朗らかな矢島の言葉で通話が終わりかけたが切る寸前に矢島が思い出したように早口で喋りだした。

「嵯峨が月島くんがいると安心するって笑ってたぞ。なんか10歳近く下なのに、お兄ちゃんみたいだってよ!」

そう言われて通話は切れたがオレはなんだかモヤモヤしていた。確かに玄関で爆睡したうえに無意識に初対面の男子とソファーでエロいことする大人よりオレの方が数倍はしっかりしてると思うが正直、田舎から出てきた頼りになる年下認識されるのは不服だ。

じゃあ、どう思われたいのか考えると答えはひとつだがそうなるための最適解がわからない。

むしゃくしゃした気分を忘れるように参考書を開いたら窓に水滴が滴り雨が降り始めていた。

「さっきまで晴れてたのに・・・」

あの人、傘とか持ってるのかな・・・・・・

考えてる間にも雨は強さを増しているのでオレは机から離れると適当な傘を選んで家を飛び出したときタイミングよく雷鳴がかすかに鳴った。


・・・・・・⛈️

雨が本降りとなり嵯峨愛希は途方にくれていた

売店で傘を買うこともできるが通り雨かもしれないのでキャンパス内の図書館に避難したが一向にやまず雷まで鳴っている。風も強くなってきたし傘をさしても壊れる確率が高い。

「天乃くんはもう帰宅してるかな?」

ポツリと呟きながら荒れた外の様子を窓からチラチラ眺め本に目をおとしたが心はなんとなく落ち着かない。

両親を突然亡くし莫大な遺産を相続した自分のことを周囲は表向き憐れんでくれるが、その眼差しには羨望と嫉妬が混じっていて息がつまる。

実際に文学を学び研究者となり教鞭をとれる者など、わずかで経済的に恵まれている必要も出てくる。どんなに優秀でも文学部そのものが斜陽な現在、研究を断念して中学、高校の教員となるか企業に勤める者が圧倒的に多い。

「いい御身分だな、お前は」

学友達からそう言われても愛希は言い返すことができなかった。

唯一心を許せる先輩である矢島も物書きの気軽さで東京から遠く離れた土地に転居してしまい何となく独りで生活していくことが寂しくて塞ぎこみそうになった矢先、田舎に居を移した矢島に下宿人をおくことを勧められたのだ。

「とにかく生意気なガキ!ありゃ、一緒に暮らしたら退屈しないぞ」

子供を預かるなんて自分に出来るか心配だったが下宿人となった少年、月島天乃は賢くしっかり者で優しく、話していてとても楽しく、どこが生意気なのかよくわからない。

食事は各自で用意するが息子を心配する天乃の家族から米やら野菜が大量に届くので2人で焼き肉をしたりするがお互いに家事が不慣れなので野菜を切りすぎて途方にくれたり楽しく過ごしているが愛希は楽しそうに笑う天乃を見ているうちに奇妙な想いに苛まれ始めた。

(このまま、ずーっと彼と暮らせたら)

そうする為には何か最適解はないかと考えていると鞄のスマホが震動したので確認したら矢島からだった。

(調子どーだ?月島くんとは仲良くしてるか?こっちは山道で猿に囲まれて喰われるかと思った!)

自身で考えていても出ない答えはキリの良いところで信用できる者に助言を求めるに限ると思い愛希は返信をした。

(矢島先輩に相談します。
10歳も若い男子高校生に告白するのは犯罪ですか?)

しばし間があり普段はノリが軽い矢島にしては固くて長文の返信が届いた。

(告白なら犯罪じゃない。だがな、そういう関係におよんだら世間には未成年淫行罪って罪状がつく。よく考えろよ。お前が相談してくる時点で止めるの不可能だろうから俺はなんも言わん)

そのメッセージを眺めていたら雷雨は更に激しくなってきたが愛希はいてもたってもいられず図書館を飛び出し雨に身体を濡らしながら大学の門まで走るとそこに佇む少年を見て思わず抱きしめた。

「ごめん、傘・・・風でブッ壊れた」

抱きしめられながら謝る天乃の頬に軽くキスをすると愛希は呆然とする天乃の腕を引っ張り大雨でずぶ濡れになるのも構わず足早に歩き始め笑った。

「スッゴく雨が気持ちいい!!そう思わない、天乃くん!?」

「ハイになってるとこ悪いけどオレの話し聞いて・・・」

ザンザン降り注ぐ雨に負けず天乃は大きく口をあけて叫んだ

「愛希さんが好きだよ!逢ったときからずーっと!!」

ピカリ!!と雷鳴が轟いたが2人は気にせず、しっかり手をにぎりながら宵闇近づく夕刻の嵐のなかを飛ぶように駆け抜けていった。




end



















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