異世界ぎきょうだい不仁義～異世界にダークエルフとして転生したら、再会した弟分がハイエルフの令嬢になっていた～

１４３ 南洋大同盟編 １ 宣言

　政信たちは、酒場で顔を突き合わせて話し合った。


　酒を飲んだり口喧嘩をしたり、眠ったりした挙句、呆れたムーナが帰ってから三時間後、政信は新天地で方針を宣言する。


「まずは金策だ」


「色々話し合って、それですの？　結局ノープランですのね」


　やる気を出そうと政信は声を張るが、対するカタリンの声には、愛情も親しみも伺えなかった。


「仕方ないだろ。カタリン、俺はお前の身分とつり合いがとれる身分にならなきゃならない。そのために金がいる」
「マサノブ……」


　頬を上気させたカタリンと、政信は見つめ合った。


「急に二人の世界を作られて鬱陶しいけど、金が要るって意見には同意するわ。てことで、手っ取り早く借金でどう？　浜の砂粒がなくなっても、高利貸しなんて、どこにでもいるものよ」


　珠緒がさもグッド・アイディアを披露するかのように、得意気な顔で借金を提案した。


「いい考えだ。金融業者と契約が済み次第、褒美として、タマには債務者の称号を与えよう。名誉ある地位を意味する大切な役目だ。馬鹿みたいに喜んで受け取れ」


「遠慮しておくわ。奥ゆかしい私が、そんな重大な役を引き受けるわけないでしょ」


「遠慮なんて似合わない行為をしなくても、よろしくてよ。パンを差し出された飢えた乞食のように、大喜びして受け取りなさい」


「仲が良ろしくて、結構ね。でも、そんな手には乗るほど、私もアホじゃないわよ」


「なんだと！　タマのことをアホでマヌケだと信頼していたのに、裏切ったな」


「はいはい。最低な信頼をありがとう。別に私は裏切ったってことでもいいけど、アンタは裏切らないってことでいいのよね」


　半眼となった珠緒が、投げやりな言葉と、意味あり気な言葉を放った。


「当たり前だ。俺は裏切ったり嘘をついたりはしないぞ。なあ？」


「……それは、どうでしょう」


　政信から質問を受けたカタリンは、顔ごと目を逸らした。