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103 煽る女
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自分の悪行を言い立てられて、政信も開き直る。
「余計なことをいうな。モフるぞ」
「今は気分じゃないんでー、ダメでーす」
飛び掛かって頭を撫でようとする政信を、ネコ科らしい俊敏さでかわし、アビーは舌を出した。
「畜生!」
「だーちゃんそれ差別用語」
言われてみれば、獣耳の人種がいる前で〝畜生〟はなかったかもしれない。アビーに嫌われたくない政信は、頭を下げる。
「ごめん」
「素直に謝れてえらーい。ナデナデしてあげるにゃー」
「御障りは禁止ですわ! ドロボー猫は手が早くていけませんわね」
政信の頭に延ばされたアビーの手を、カタリンが弾き飛ばした。
「ちょ、汚い手で触んなし。あーし王族なんよ。そこんところわかってんのかな?」
「ドロボー猫の排泄物でもついてそうな手から、家臣であるカタクラを守ってあげただけです。野良ネコは、病気持ちが多いですからね」
「誰に病気があるって言った? チンチクリンのクソ幼女」
アビーが両腕で胸を強調する姿勢を取るが、カタリンは怯まない。むしろ攻勢に転ずる。
下からアビーをねめつけながら吐き捨てる。
「ハンパ巨乳は、だまるっす」
「ハン、なんのハナシだし?」
「ムーナや珠緒ほどデカくない巨乳だからハンパ巨乳だって言ってんすよ。そもそも人かネコかはっきりしない時点で、ハンパモンなんじゃないっすかぁ?」
時と場所によっては、社会的生命なり法的保護なりを失いかねない差別発言を、カタリンはいとも容易く吐き出してのけたた。
異世界では差別という概念すらあるかどうかわからないが、マズイかもしれない。政信がフォローのために口を開こうとした次の瞬間、大音量が響き渡った。
解説のクロエだった。
「言ったー! 猫人領とも取引も付き合いもある鉱人領で、差別発言を堂々と言ってのけたー! 流石は傲慢、傲岸、高慢、ついでに不遜で知られるいけ好かない生物代表のハイエルフだっー!」
「おめーの発言も充分、差別的っすよね!」
「白い耳長の悪魔から抗議が来ましたが、当然のよーに無視したいと思いまーす」
「コラ解説、ポニテ引っこ抜くっすよ!」
カタリンの恫喝を聞いたクロエは、片手を耳に当てて「なに? きこえないよ」とでも言いた気なポーズをとった。
「いいぞクロエ!」
「だからお前が好きなんだ」
「クロエ結婚してくれー」
闘技場内は、大盛況だった。
「余計なことをいうな。モフるぞ」
「今は気分じゃないんでー、ダメでーす」
飛び掛かって頭を撫でようとする政信を、ネコ科らしい俊敏さでかわし、アビーは舌を出した。
「畜生!」
「だーちゃんそれ差別用語」
言われてみれば、獣耳の人種がいる前で〝畜生〟はなかったかもしれない。アビーに嫌われたくない政信は、頭を下げる。
「ごめん」
「素直に謝れてえらーい。ナデナデしてあげるにゃー」
「御障りは禁止ですわ! ドロボー猫は手が早くていけませんわね」
政信の頭に延ばされたアビーの手を、カタリンが弾き飛ばした。
「ちょ、汚い手で触んなし。あーし王族なんよ。そこんところわかってんのかな?」
「ドロボー猫の排泄物でもついてそうな手から、家臣であるカタクラを守ってあげただけです。野良ネコは、病気持ちが多いですからね」
「誰に病気があるって言った? チンチクリンのクソ幼女」
アビーが両腕で胸を強調する姿勢を取るが、カタリンは怯まない。むしろ攻勢に転ずる。
下からアビーをねめつけながら吐き捨てる。
「ハンパ巨乳は、だまるっす」
「ハン、なんのハナシだし?」
「ムーナや珠緒ほどデカくない巨乳だからハンパ巨乳だって言ってんすよ。そもそも人かネコかはっきりしない時点で、ハンパモンなんじゃないっすかぁ?」
時と場所によっては、社会的生命なり法的保護なりを失いかねない差別発言を、カタリンはいとも容易く吐き出してのけたた。
異世界では差別という概念すらあるかどうかわからないが、マズイかもしれない。政信がフォローのために口を開こうとした次の瞬間、大音量が響き渡った。
解説のクロエだった。
「言ったー! 猫人領とも取引も付き合いもある鉱人領で、差別発言を堂々と言ってのけたー! 流石は傲慢、傲岸、高慢、ついでに不遜で知られるいけ好かない生物代表のハイエルフだっー!」
「おめーの発言も充分、差別的っすよね!」
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「コラ解説、ポニテ引っこ抜くっすよ!」
カタリンの恫喝を聞いたクロエは、片手を耳に当てて「なに? きこえないよ」とでも言いた気なポーズをとった。
「いいぞクロエ!」
「だからお前が好きなんだ」
「クロエ結婚してくれー」
闘技場内は、大盛況だった。
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