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39:トモダチの圧力
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馬車の対面でニヤニヤ笑いを浮かべるトモダチを、白けた視線で見据えながらミオは忌々し気に吐き捨てる。
「では、なんと呼べばいい? ペド野郎か? わかりやすくロリコンのほうがいいか」
「べド? ロリコン? どういう意味かね。キミの考えた最上級の誉め言葉かな? だとしたら照れるねえ。ああでも、受け取ってあげてもいいよ。褒められたり感謝されるのって、キライじゃないんでね」
ミオの悪口を軽口で受け流して、トモダチは視線を外さずに肩をすくめた。
前世でつかっていた幼児性愛者に対する罵倒の意味を、この世界のトモダチが理解できなくても当然なはずだ。
だがトモダチの態度から見て、理解しながふざけて見せていると、ミオはみなした。
だからミオは、男らしく直球で応える。
「悪口に決まっているだろう」
「おいおいそんなはずはないよ。余は、キミを助けた恩人だよ。まさか忘れたわけではないよねえ」
トモダチの言は、一応事実だった。
ミオは、脇に置いた禍々しいステッキに視線を送る。トモダチが宿っていた黒いドクロがあしらわれたステッキだ。
ステッキの化身と思われる〝トモダチ〟は、ミオに妖魔の王を滅するほどの力を与えてくれた。
元妖魔で、今はより強い何かに生まれ変わった強い存在を、家臣として用意してもくれたし、重傷を治してくれもした。
ただし、大きな代償を伴う助力だった。
ミオは忌々しさを隠さずに、事実を口にする。
「ああ、お前の力で大敵を屠って、壊された俺の身体を治してくれもした」
「うんうん。分かっているじゃあないか」
トモダチは、白髪をかきあげつつ笑った。
ミオは、トモダチが力の代償について、事前に提示しなかった不実を責めなかった。
何重にも意味のない行為だからだ。
代償もなく強い力を行使するなど、地球でもその他の星でも異世界でも不可能だ。
借り物の力を行使し、強大さに酔うばかりで、代償に考えが及ばなかったミオにも落ち度があった。
なにより禍々しくとも可憐極まるロリな外見はともかくとして、ミオの精神は武術家のつもりだった。
武術家は現実主義者であり、道徳家を気取る武道家とは違う。卑怯やズルイという観念はあまり持たない存在だ。
敵対する相手を殺すために、一騎打ちと偽って標的を呼び出して、門下生と共に囲んで嬲り殺しにしたり、家族を人質を取ったりするなどの卑劣な行為を、古い武術家は当然のように行っていた。
剣術家でありながら弓や鉄砲で狙撃したり、果ては毒を用いたりする者さえいた。
勝てれば、目的を果たせるならば、それで良い。武術家の持つドス黒い精神性だ。
目的のために、トモダチはミオに力を与えて行使させ、その衝撃で負った傷を癒してみせた。
ロクでもないやりくちであっても、手段を選ばないトモダチの精神性は、武術家的だ。ミオにも納得できた。
ただし、ミオは低くない利子が設定されている債務者のような立場だ。トモダチに歓迎も感謝も捧げようとは思わなかった。
「お前の力で壊された身体を治されても、感謝する気にはならん」
ミオに反論されると、トモダチは首を傾げながら肩をすくめた。
ついでに変顔までしていた。
舐めてやがるな。
ミオは復讐を誓った。
同時に、トモダチの顔は、借金の返済を迫るヤクザのような表情に切り替えられた。
「感謝しを捧げてもらえないのは、悲しいね。でもいいさ。余は寛大なのだ。約束さえ守ってもらえれば、文句はないよ」
急激に強まったトモダチの圧力に、ミオは息をのんだ。
「では、なんと呼べばいい? ペド野郎か? わかりやすくロリコンのほうがいいか」
「べド? ロリコン? どういう意味かね。キミの考えた最上級の誉め言葉かな? だとしたら照れるねえ。ああでも、受け取ってあげてもいいよ。褒められたり感謝されるのって、キライじゃないんでね」
ミオの悪口を軽口で受け流して、トモダチは視線を外さずに肩をすくめた。
前世でつかっていた幼児性愛者に対する罵倒の意味を、この世界のトモダチが理解できなくても当然なはずだ。
だがトモダチの態度から見て、理解しながふざけて見せていると、ミオはみなした。
だからミオは、男らしく直球で応える。
「悪口に決まっているだろう」
「おいおいそんなはずはないよ。余は、キミを助けた恩人だよ。まさか忘れたわけではないよねえ」
トモダチの言は、一応事実だった。
ミオは、脇に置いた禍々しいステッキに視線を送る。トモダチが宿っていた黒いドクロがあしらわれたステッキだ。
ステッキの化身と思われる〝トモダチ〟は、ミオに妖魔の王を滅するほどの力を与えてくれた。
元妖魔で、今はより強い何かに生まれ変わった強い存在を、家臣として用意してもくれたし、重傷を治してくれもした。
ただし、大きな代償を伴う助力だった。
ミオは忌々しさを隠さずに、事実を口にする。
「ああ、お前の力で大敵を屠って、壊された俺の身体を治してくれもした」
「うんうん。分かっているじゃあないか」
トモダチは、白髪をかきあげつつ笑った。
ミオは、トモダチが力の代償について、事前に提示しなかった不実を責めなかった。
何重にも意味のない行為だからだ。
代償もなく強い力を行使するなど、地球でもその他の星でも異世界でも不可能だ。
借り物の力を行使し、強大さに酔うばかりで、代償に考えが及ばなかったミオにも落ち度があった。
なにより禍々しくとも可憐極まるロリな外見はともかくとして、ミオの精神は武術家のつもりだった。
武術家は現実主義者であり、道徳家を気取る武道家とは違う。卑怯やズルイという観念はあまり持たない存在だ。
敵対する相手を殺すために、一騎打ちと偽って標的を呼び出して、門下生と共に囲んで嬲り殺しにしたり、家族を人質を取ったりするなどの卑劣な行為を、古い武術家は当然のように行っていた。
剣術家でありながら弓や鉄砲で狙撃したり、果ては毒を用いたりする者さえいた。
勝てれば、目的を果たせるならば、それで良い。武術家の持つドス黒い精神性だ。
目的のために、トモダチはミオに力を与えて行使させ、その衝撃で負った傷を癒してみせた。
ロクでもないやりくちであっても、手段を選ばないトモダチの精神性は、武術家的だ。ミオにも納得できた。
ただし、ミオは低くない利子が設定されている債務者のような立場だ。トモダチに歓迎も感謝も捧げようとは思わなかった。
「お前の力で壊された身体を治されても、感謝する気にはならん」
ミオに反論されると、トモダチは首を傾げながら肩をすくめた。
ついでに変顔までしていた。
舐めてやがるな。
ミオは復讐を誓った。
同時に、トモダチの顔は、借金の返済を迫るヤクザのような表情に切り替えられた。
「感謝しを捧げてもらえないのは、悲しいね。でもいいさ。余は寛大なのだ。約束さえ守ってもらえれば、文句はないよ」
急激に強まったトモダチの圧力に、ミオは息をのんだ。
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