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22:入校
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ミオが辛らつな言葉を発すると、校長は口を結び、他の者たちは目を見張った。
注目を浴びるミオは、挑発的な笑みを、深くさせた。
「違うのか? 特設戦闘科は、生徒は出世や貧困から抜け出すことを夢見る庶民か貧民で、訓練用施設や機材などは、何もかも低質だったり、そもそも存在しなかったりするのだろう? ああ、もちろん教官も」
「なぜそう思う」
「口の減らない生意気な小娘に、わざわざお偉い校長殿があてがうような学科だ。良い環境が用意されているとは思えない。俺は外見ほど、夢見がちじゃないのでな。それに、今のお前たちの態度で、大体わかろうというものだ。普通は表情を崩さないであろう護衛や使用人たちが、あんな表情をしているんだぞ」
ミオが指し示す護衛の男女も、メイドたちにも、怒っている様子はなかった。
むしろ、テストでカンニングを発見された生徒のように、気まずそうな表情を浮かべていた。
「人数不足の埋め合わせのために用意された、戦闘要員の教育機関となれば、あらゆるものが劣悪で当然だ。それとも、否定するか?」
「大した推理力だ」
「推理というほどモノではない」
傲然と答えるミオに対して、校長は白けたような態度だった。
「小娘にしては、大した推理力だという意味だ。状況を推察できたのなら、転科せぬのだな」
「いいや、するね」
ミオは転科届の署名欄に、素早く筆を走らせた。
校長をはじめとする周囲の者たちは、一斉に息をのんだ。
「これで俺は、特設戦闘科の生徒様というわけだ。よろしいな」
反対の声はなかった。
「よろしい。今日は客室で休め。明日、案内をよこす」
「おう」
ミオは、長い髪をかきあげつつ、短く答えた。
注目を浴びるミオは、挑発的な笑みを、深くさせた。
「違うのか? 特設戦闘科は、生徒は出世や貧困から抜け出すことを夢見る庶民か貧民で、訓練用施設や機材などは、何もかも低質だったり、そもそも存在しなかったりするのだろう? ああ、もちろん教官も」
「なぜそう思う」
「口の減らない生意気な小娘に、わざわざお偉い校長殿があてがうような学科だ。良い環境が用意されているとは思えない。俺は外見ほど、夢見がちじゃないのでな。それに、今のお前たちの態度で、大体わかろうというものだ。普通は表情を崩さないであろう護衛や使用人たちが、あんな表情をしているんだぞ」
ミオが指し示す護衛の男女も、メイドたちにも、怒っている様子はなかった。
むしろ、テストでカンニングを発見された生徒のように、気まずそうな表情を浮かべていた。
「人数不足の埋め合わせのために用意された、戦闘要員の教育機関となれば、あらゆるものが劣悪で当然だ。それとも、否定するか?」
「大した推理力だ」
「推理というほどモノではない」
傲然と答えるミオに対して、校長は白けたような態度だった。
「小娘にしては、大した推理力だという意味だ。状況を推察できたのなら、転科せぬのだな」
「いいや、するね」
ミオは転科届の署名欄に、素早く筆を走らせた。
校長をはじめとする周囲の者たちは、一斉に息をのんだ。
「これで俺は、特設戦闘科の生徒様というわけだ。よろしいな」
反対の声はなかった。
「よろしい。今日は客室で休め。明日、案内をよこす」
「おう」
ミオは、長い髪をかきあげつつ、短く答えた。
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