決闘で死んだ俺が凶悪なロリ令嬢として転生してしまったので、二度と負けないために最強を目指して妖魔との戦いに身を投じることにした

呉万層

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11:得物

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 部屋に乱入してきた異形の怪物を、ミオは観察する。



 ミオの目の前にいる存在は、妖魔でなければ、妖怪か悪魔とでも表現するしかない姿だった。



 鋭く汚らしい爪の付いた四本の足で立ち、小汚い茶色の皮膚で覆われた身体は、三メートルほどもあった。
 体重は、二百キロ前後にもなるだろう。
 シワだらけの顔には、釣りあがった大きな目玉が三つ、横一列に並んでいる。端から涎を垂らす口の中には、黄色く変色した不揃いな牙が並んでいた。
 背中にはコウモリのような羽が一対生え、尻尾の先にはネズミに似た邪悪な生物の頭が歯を剥いていた。
 

 
 巨大で禍々しい四足獣だ。



「なるほど妖魔か」




「そいつは獣鬼だ。見た目通りに強いし、仲間を呼ぶ厄介な奴だ。暢気に観察なぞしていないで、戦え。ミオ・オスロン」



 妖魔という呼称について納得するミオに、軍刀を引き抜いたハイテが戦いを迫る。



「淑女に戦えというのか? それ以前に、人を足手まとい扱いしておいて、戦いを強いるのか。お前の羞恥心は、どこへ遊びに言っているのだ。助けて欲しいなら、頭を垂れて哀願しろ」



 ハイテにキツイ嫌味を言っていながら、ステッキを握るミオは、やる気に満ち溢れていた。



 いや、ミオの心中に沸き起こるエネルギーは、やる気というほど、良い感情ではなかった。


 
 ステッキを握ったミオ脳内には、獲物を見つけた詐欺師のような喜びと、嗜虐心に猛る殺人鬼の精神とでもいうべき、昏く冒涜的な精神が沸き上がっていた。



 ミオが無駄に男気溢れる武術家の精神をもっていなければ、ステッキを握った時点で人格を飲み込まれてしまっていただろう。

 
 
 とはいえ、ステッキにより沸き上がる昏く猟奇的な力は強く、ミオを堕落させるために、精神を犯そうとしてきていた。


 
 唐手の呼吸法である息吹を用いて、ミオは精神を集中させ、自我を保つよう努めた。



 自然とミオは、唐手の型・セイサンの呼吸法を行っていた。



 自身の急激な変化に対応しようとするミオに、ハイテの冷静なようで苛立ちのこもった声がかけられる。



「流れるような悪口をたれる淑女が、どこの世界にいる。そのステッキを持っても死にも狂いもせなぬのなら、戦力になると判断しただけだ」



「死、狂う? どういう意味――」



「ギィッシャー!」



 ミオの問う声は、飛び掛かってくる妖魔・獣鬼によって中断された。

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