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Chapter3(Stargazer編)
Chapter3-⑨【Another Orion】
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タカユキは黙ったまま顔を振る。
「オリオンの右肩に当たる一等星をベテルギウスと言うんだ。」
赤く輝く星は夜空の中でも目立つ。
丸でケンゴの様だ。
「こいつが将来爆発するらしい。」
自慢げな蘊蓄に耳を傾ける。
「なら、手のないオリオンになっちゃうのか?」
星座絵を頭に浮かべ、聞いてみる
「まあ、いつかはな。
ただ640光年離れているから、俺達が生きている間は大丈夫だ。
もしかすると、もう爆発していて、俺達は残光を見てるのかもしれないな。
意外と博学だろ?」
ケンゴが弱弱しく微笑んだ。
「星オタクとは知らなかったよ。」
タカユキは笑いを飲み込む。
『俺達』という表現が、将来を共有している様で嬉しかった。
「ああ、生まれた所が田舎でさ、星を見るくらいしかする事がなかったんだ。」
ケンゴの生い立ちを垣間見て、何が何でも岩佐に抵抗しようと誓う。
「家に来いよ。
終電、もうないだろ?
手伝って欲しい事があるんだ。」
ケンゴがブランコから飛び下りた。
漕ぎ人のいなくなったブランコの揺れが小さくなっていく。
「うん…。」
ブランコが止まったタイミングで小さく答える。
静止するのを待ってみたが、激しい動悸は収まる気配がない。
室内は外見以上に豪華だった。
「誰かと住んでるのか?」
広いリビングに通されたタカユキは、夜景を見ながら聞く。
「まあな。滅多に帰って来ねぇけどな。
今日も帰らないと連絡あったから、遠慮するな。
それよか、腹減ってないか?
お前、働き詰めだろ。」
静寂を嫌う様に、ケンゴは話し続けた。
新宿のビル群が間近に見える。
「帰り際に岩佐さんが出前を取ってくれたから平気だよ。
それより手伝いって、何だよ?
まさか、ケツ貸せって言わないだろうな!」
落胆を悟られない様に、明るく振る舞う。
「馬鹿!逆だ。
反省を体現しなくちゃならねぇんだろ。」
ケンゴが苦笑した。
「こっち来い。」
ケンゴが手を掴んだ。
バスルームは明るく広々としていた。
バスローブを着たケンゴは、出しっ放しのシャワーの下に頭を突っ込む。
「なっ、何やっているんだ?」
複雑な思いは封印し、大袈裟に叫ぶ。
それを無視したケンゴは、シャンプーで髪を泡立てた。
「これで剃ってくれ。」
呆然と見守るタカユキに剃刀を渡す。
「そ、剃るって…、スキンヘッドにするのか?」
聞き返す声が震える。
「ああ。反省っていえば、普通坊主だろ?」
無邪気な笑顔に、釣られてしまう。
タオルの上に、髪の毛が積もっていく。
「これでスッキリしたぜ。
どうだ、似合うか?」
坊主頭が見上げる。
「あっ、うん。
凄く似合っているよ。」
動揺した口からはありふれた感想しか出てこない。
チャラいイメージは、ワイルドな風貌に取って代わっていた。
「なら、良かった。
お前もシャワー浴びちゃえよ。」
ケンゴは新しいバスローブに着替えると、出て行った。
もっと気の利いた事を言いたかったが、もう手遅れだ。
バスルームから出ると、パジャマが置いてあった。
それに着替え、リビングに戻る。
バスローブ姿のケンゴがソファーに横たわり、テレビを見ていた。
「ビール出しておいたぜ。」
テーブルの上の缶ビールを指差す。
一人掛けのソファーにチョコンと座る。
「アハハ、ザマねぇな!」
粉だらけのアイドルが画面いっぱいに映っていた。
ビールを一口飲み、隣のソファーを盗み見る。
『乾杯…。』
心の中で呟く。
そして一気に缶を傾ける。
何時しか一緒に笑っていた。
「そろそろ寝るか?」
番組が終わると、テレビを切ったケンゴが立ち上がる。
リビングを出て行く引き締まった脹脛が艶めかしい。
寝室は殺風景だった。
ベッドと床にパソコンが置いてあるだけだ。
「お前はベッドを使え。
俺はソファーで寝るから。」
ケンゴはそう言うと、さっさと部屋から出て行った。
ベッドに入り、ギュッと目を瞑る。
しかし睡魔は訪れてこない。
布団から懐かしい匂いがした。
それを胸いっぱいに吸い込む。
すると目は、益々冴え出してきた。
(つづく)
「オリオンの右肩に当たる一等星をベテルギウスと言うんだ。」
赤く輝く星は夜空の中でも目立つ。
丸でケンゴの様だ。
「こいつが将来爆発するらしい。」
自慢げな蘊蓄に耳を傾ける。
「なら、手のないオリオンになっちゃうのか?」
星座絵を頭に浮かべ、聞いてみる
「まあ、いつかはな。
ただ640光年離れているから、俺達が生きている間は大丈夫だ。
もしかすると、もう爆発していて、俺達は残光を見てるのかもしれないな。
意外と博学だろ?」
ケンゴが弱弱しく微笑んだ。
「星オタクとは知らなかったよ。」
タカユキは笑いを飲み込む。
『俺達』という表現が、将来を共有している様で嬉しかった。
「ああ、生まれた所が田舎でさ、星を見るくらいしかする事がなかったんだ。」
ケンゴの生い立ちを垣間見て、何が何でも岩佐に抵抗しようと誓う。
「家に来いよ。
終電、もうないだろ?
手伝って欲しい事があるんだ。」
ケンゴがブランコから飛び下りた。
漕ぎ人のいなくなったブランコの揺れが小さくなっていく。
「うん…。」
ブランコが止まったタイミングで小さく答える。
静止するのを待ってみたが、激しい動悸は収まる気配がない。
室内は外見以上に豪華だった。
「誰かと住んでるのか?」
広いリビングに通されたタカユキは、夜景を見ながら聞く。
「まあな。滅多に帰って来ねぇけどな。
今日も帰らないと連絡あったから、遠慮するな。
それよか、腹減ってないか?
お前、働き詰めだろ。」
静寂を嫌う様に、ケンゴは話し続けた。
新宿のビル群が間近に見える。
「帰り際に岩佐さんが出前を取ってくれたから平気だよ。
それより手伝いって、何だよ?
まさか、ケツ貸せって言わないだろうな!」
落胆を悟られない様に、明るく振る舞う。
「馬鹿!逆だ。
反省を体現しなくちゃならねぇんだろ。」
ケンゴが苦笑した。
「こっち来い。」
ケンゴが手を掴んだ。
バスルームは明るく広々としていた。
バスローブを着たケンゴは、出しっ放しのシャワーの下に頭を突っ込む。
「なっ、何やっているんだ?」
複雑な思いは封印し、大袈裟に叫ぶ。
それを無視したケンゴは、シャンプーで髪を泡立てた。
「これで剃ってくれ。」
呆然と見守るタカユキに剃刀を渡す。
「そ、剃るって…、スキンヘッドにするのか?」
聞き返す声が震える。
「ああ。反省っていえば、普通坊主だろ?」
無邪気な笑顔に、釣られてしまう。
タオルの上に、髪の毛が積もっていく。
「これでスッキリしたぜ。
どうだ、似合うか?」
坊主頭が見上げる。
「あっ、うん。
凄く似合っているよ。」
動揺した口からはありふれた感想しか出てこない。
チャラいイメージは、ワイルドな風貌に取って代わっていた。
「なら、良かった。
お前もシャワー浴びちゃえよ。」
ケンゴは新しいバスローブに着替えると、出て行った。
もっと気の利いた事を言いたかったが、もう手遅れだ。
バスルームから出ると、パジャマが置いてあった。
それに着替え、リビングに戻る。
バスローブ姿のケンゴがソファーに横たわり、テレビを見ていた。
「ビール出しておいたぜ。」
テーブルの上の缶ビールを指差す。
一人掛けのソファーにチョコンと座る。
「アハハ、ザマねぇな!」
粉だらけのアイドルが画面いっぱいに映っていた。
ビールを一口飲み、隣のソファーを盗み見る。
『乾杯…。』
心の中で呟く。
そして一気に缶を傾ける。
何時しか一緒に笑っていた。
「そろそろ寝るか?」
番組が終わると、テレビを切ったケンゴが立ち上がる。
リビングを出て行く引き締まった脹脛が艶めかしい。
寝室は殺風景だった。
ベッドと床にパソコンが置いてあるだけだ。
「お前はベッドを使え。
俺はソファーで寝るから。」
ケンゴはそう言うと、さっさと部屋から出て行った。
ベッドに入り、ギュッと目を瞑る。
しかし睡魔は訪れてこない。
布団から懐かしい匂いがした。
それを胸いっぱいに吸い込む。
すると目は、益々冴え出してきた。
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