妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

文字の大きさ
上 下
236 / 236
Chapter11(物怪編)

Chapter11-⑫【春が来てぼくら】後編

しおりを挟む
三浦は完全に気を失っていた。
「ちょ、ちょっとやり過ぎたかな?」
正気に戻ったリュウヘイの声が震える。
「正当防衛ですから、問題はないと思いますが…。」
中嶋は言葉を濁す。
根掘り葉掘り聞かれるのは間違いない。
その場合、この暴風雨の中、公園に行った理由を聞かれるだろう。
頭の固い警官にどこ迄話すかが問題だ。
「あっ!」
閃きが浮かぶ。
「ど、どうしたんだ?
何か不味い事があったか?」
リュウヘイが見開いた瞳を向けた。
「近くの派出所に上川という知り合いがいます。
彼だったら、話せば分かってくれると思います。
通報して来るので、車を脇に寄せておいて下さい。
それと指紋が流れ落ちない様、これに何か乗せておいて。」
中嶋は雨に濡れるナイフを跨いで歩き出す。
後方からクラクションが鳴る。
振り返ると、リュウヘイが運転席から身を乗り出していた。
「悪いがガソリンの携行缶を買ってきてくれ。
ガス欠なんだ!」
三浦が逃走を止めた理由が分かり、中嶋は笑みを浮かべた。
 
「ハンドルとナイフから三浦の指紋が出ました。
これで我々に非がない事が証明されました。」
上川からの電話を切った中嶋は安堵の表情を浮かべる。
「ああ、良かったな。」
ナツキが気のない返事をした。
「どうしたんですか?
まだ心配事がありますか?」
それを感じ度った中嶋が聞く。
「ああ、てんこ盛りだ。
臨時休業した上に、ビデオ撮影は中止だぞ。
被害額を考えたら、おちおち眠れねぇんだ。
あー、金が減ってくばかりだ。」
珍しく愚痴を溢した。
「そんなのこれから幾らでもリカバリー出来ます。
皆元気なんですから。
社長から貰った金は元々なかったと、考えればいいだけです。」
中嶋はナツキを宥める。
「はぁ、ポンコツのワタルの所為で大損だ。
あいつは当面タダ働きだ!」
仏頂面のナツキが椅子を蹴飛ばした。
これでは社員旅行の話は出来そうもない。
日本一周は一先ずお預けだ。
夏になったら提案してみよう。
 
「ちゃんと元に戻しておいて下さい。
店では私の命令に従う約束です。」
「はいはい、分かりました。
支配人様。」
ナツキはおどけて言う。
「そうそう、上川さんが後で顔を出すそうです。」
「何用だ?」
「特に用件は言ってませんでした。」
「ふーん。」
倒れた椅子を元に戻す。
「何か怪しいと思いませんか?」
「何がだ?」
「上川さんの制服って、妙にタイトなんです。
股間をモッコリさせてるし。」
「あの警官がゲイだと言うのか?」
「そこ迄は。
でも興味はありそうです。
ちょっと鎌をかけてみませんか?」
中嶋が悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。
「面白そうだな。
で、何をするんだ。」
ナツキは戻した椅子に腰掛ける。
ぐらつく事は黙っておく。
中嶋が顔を寄せてきた。
この男と組んで良かったと、つくづく思う。
自分とは全く真逆な不釣り合いな男だ。
発展場なら一生相まみえる事はない。
だがこの几帳面な男が今は頼もしく見える。
「おい、顔が近ぇよ。
キスすんなよ。」
ナツキは近寄った顔を掌で押し返した。
 
 
(完)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

終わり無い絶頂で男は全てを壊される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...