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Chapter11(物怪編)
Chapter11-⑨【台風】前編
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「ほらっ、土産のちんすこうだ。
遠慮せずに食え。」
ナツキは乱暴に包装紙を破ると、箱を開ける。
そして自ら個装の袋を破り、次々に口へ放り込んだ。
「甘いな。茶くれ、茶だ。」
中嶋はその声を聞いて微笑む。
『本当にこの人は凄いな。
いるだけで安心出来る。』
視線をワタルに向ける。
「先に食わせて下さいよ。」
「茶が先だ。」
「もう勝手なんだから。
ちんこすう、取っておいて下さいよ。
ナカジーさんも飲みますか?」
「ちんこすうではなく、ちんすこうです。
私にもお茶をお願いします。」
「チンコ吸うじゃ、変だと思ったんですよ。」
昨日迄、怯えていた男が笑い転げていた。
ドアが開き、来客を知らせた。
「いらっしゃい…。」
声が詰まる。
入口に立っていたのが警官だったからだ。
警官は物珍しそうに店内を見回していた。
「ご苦労様です。
何かご用ですか?」
如才なく話し掛ける。
「最近、変わった事はありませんか?」
目線を戻した警官が話し出した。
「変わった事と言いますと?」
「先日、この店の前にいた不審な男が暴走しまして、行方を探しているのです。
その男はこの店を監視していた様子でした。
心当たりがないかと、話を聞きに来たのです。」
警官が用件を言う。
不審な男と聞いて、直ぐにピンときた。
三浦に違いない。
ナツキは黙ったまま煙草を吹かしている。
『店内は禁煙だと言ったのに。』
中嶋はナツキを睨む。
「こんな店に来る奴は殆ど不審者だぜ。
それだけじゃ、分からねぇな。」
視線を無視したナツキが口を開く。
「そっ、そうですか。
まあ確かに…。」
警官が口籠った。
「もし何かありましたら、ご連絡しますので宜しくお願いします。」
中嶋は取り繕う様に言う。
余程ナツキの方が不審に見える。
「私は三丁目派出所の上川と言います。
では見慣れぬ不審者を見掛けましたら、ご一報をお願いします。」
警官は敬礼すると、ナツキを一瞥した。
「今度、私服の時に寄ってくれ。
サービスしてやるぜ。」
中嶋は小さくナツキの足を蹴る。
「そっ、それはどうも…。」
警官が出ていくと、店の外迄見送った。
「そんな事があったのか。
しつこい奴だ。」
ちんすこうを口に入れながら、中嶋の話を聞いている。
「暫くは手を出してこないと思いますが、いつ襲ってくるか分かりません。
気を抜かない事です。」
中嶋はワタルを見る。
神妙な顔付きで頷いているが、不安は尽きない。
ターゲットは間違いなくワタルの筈だ。
撮影を拒まれたら、ナツキの沖縄出張が無駄になってしまう。
そして自分の思惑も。
「撮影迄、家に来ないですか?
ランマの使っているトレーニング器具もあるので、出歩く事が少なくなります。
一人でいるより、リスクは回避される筈です。」
思い切って提案してみる。
「だな。そうしろ。
俺が狙うなら、絶対お前だ。」
ナツキの言葉で青ざめた顔が頷く。
「よっし、決まりだ。
しっかりボディーガードしろよ。
手負いの奴は無茶するからな。」
その言葉でナツキを見る。
邪な思いが見透かさせた様でドキッとした。
(つづく)
遠慮せずに食え。」
ナツキは乱暴に包装紙を破ると、箱を開ける。
そして自ら個装の袋を破り、次々に口へ放り込んだ。
「甘いな。茶くれ、茶だ。」
中嶋はその声を聞いて微笑む。
『本当にこの人は凄いな。
いるだけで安心出来る。』
視線をワタルに向ける。
「先に食わせて下さいよ。」
「茶が先だ。」
「もう勝手なんだから。
ちんこすう、取っておいて下さいよ。
ナカジーさんも飲みますか?」
「ちんこすうではなく、ちんすこうです。
私にもお茶をお願いします。」
「チンコ吸うじゃ、変だと思ったんですよ。」
昨日迄、怯えていた男が笑い転げていた。
ドアが開き、来客を知らせた。
「いらっしゃい…。」
声が詰まる。
入口に立っていたのが警官だったからだ。
警官は物珍しそうに店内を見回していた。
「ご苦労様です。
何かご用ですか?」
如才なく話し掛ける。
「最近、変わった事はありませんか?」
目線を戻した警官が話し出した。
「変わった事と言いますと?」
「先日、この店の前にいた不審な男が暴走しまして、行方を探しているのです。
その男はこの店を監視していた様子でした。
心当たりがないかと、話を聞きに来たのです。」
警官が用件を言う。
不審な男と聞いて、直ぐにピンときた。
三浦に違いない。
ナツキは黙ったまま煙草を吹かしている。
『店内は禁煙だと言ったのに。』
中嶋はナツキを睨む。
「こんな店に来る奴は殆ど不審者だぜ。
それだけじゃ、分からねぇな。」
視線を無視したナツキが口を開く。
「そっ、そうですか。
まあ確かに…。」
警官が口籠った。
「もし何かありましたら、ご連絡しますので宜しくお願いします。」
中嶋は取り繕う様に言う。
余程ナツキの方が不審に見える。
「私は三丁目派出所の上川と言います。
では見慣れぬ不審者を見掛けましたら、ご一報をお願いします。」
警官は敬礼すると、ナツキを一瞥した。
「今度、私服の時に寄ってくれ。
サービスしてやるぜ。」
中嶋は小さくナツキの足を蹴る。
「そっ、それはどうも…。」
警官が出ていくと、店の外迄見送った。
「そんな事があったのか。
しつこい奴だ。」
ちんすこうを口に入れながら、中嶋の話を聞いている。
「暫くは手を出してこないと思いますが、いつ襲ってくるか分かりません。
気を抜かない事です。」
中嶋はワタルを見る。
神妙な顔付きで頷いているが、不安は尽きない。
ターゲットは間違いなくワタルの筈だ。
撮影を拒まれたら、ナツキの沖縄出張が無駄になってしまう。
そして自分の思惑も。
「撮影迄、家に来ないですか?
ランマの使っているトレーニング器具もあるので、出歩く事が少なくなります。
一人でいるより、リスクは回避される筈です。」
思い切って提案してみる。
「だな。そうしろ。
俺が狙うなら、絶対お前だ。」
ナツキの言葉で青ざめた顔が頷く。
「よっし、決まりだ。
しっかりボディーガードしろよ。
手負いの奴は無茶するからな。」
その言葉でナツキを見る。
邪な思いが見透かさせた様でドキッとした。
(つづく)
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