217 / 236
Chapter11(物怪編)
Chapter11-③【浅い眠り】前編
しおりを挟む
空港の自動ドアが開くと、熱気が押し入ってきた。
「ナツキさん、こっちです!」
日に焼けた男が車から顔を出す。
「おう、随分暑いな。
流石、沖縄だ。」
助手席に座るナツキの額に汗が光る。
「この暑さは異常だよ。
この時期は20度前後が普通なんで。
ホテルに直行しますか?」
ミナトはウインカーを出すと、強引にタクシーの前に入り込む。
クラクションが後ろから追ってきた。
遮光ガラスでも照り付ける陽射しは防ぎ切れない。
「折角来たんだ、海に寄ってみるか。」
「了解!そう言うと思って、用意してきたんだ。」
ミナトが白い歯を溢した。
「で、ビデオの件だが。
顔出しで構わないんだな?」
中嶋に言われた通り念を押す。
「全然、平気。
沖縄の辺鄙なリゾート勤務だ。
見た奴に会う可能性なんてないだろうし。
逆に見た奴がモーション掛けてきたらラッキーな位さ。」
ミナトはアクセルを踏み込むと、車線を越えてトラクターを追い越した。
「こんな時期でも物好きはいるもんだ。」
見覚えのある叢に並ぶ車列を見てナツキは笑う。
「ああ、オカマにオフシーズンはないからな。
なあ、ここで一発どうだ?」
車の陰でミナトが卑猥な笑みを浮かべた。
「この車の数だけオカマがいるんだ。
大勢の前で犯してやるぜ。
それとも犯したいか?
まあ、どっちでもいい。
さあ、行くぞ。」
春先とは思えない陽射しにナツキは顔を顰めた。
ナツキの来沖の目的はミナトの性癖を探る為だ。
「ビデオを見て、一番ガッカリするのは完全に勃起してないペニスを見た時です。
だからSがフルに勃起するシナリオを書きたいのです。
その為にミナトさんがより興奮するプレイを見極めてきて下さい。
ナツキさんから動いたら駄目です。
相手のしたい事は絶対に断らない事を守って下さい。
旅費は私が持ちますから、動画を撮ってきて下さい。
カメラテストを兼ねて室内、室外でお願いします。
それから…。」
中嶋の指示を思い出そうとするが、余りに長く後半は記憶にない。
『兎に角、こいつを好きにさせて、動画を撮ればいい訳だ。』
中嶋は頭が切れるが、説明が多い。
前後に形容詞が多く、回りくどい。
「前戯の長いオカマは嫌われるぞ。」
説明を聞いた後のナツキの発言だ。
ポカンとした表情を思い出し、笑い出す。
「機嫌良さそうだな。
今日の陽射しなら、かなり焼けそうだ。」
ナツキは額の汗を拭うと、青空を見上げた。
「やはり観光客ばかりだ。」
「分かるのか?」
「レンタカーばかりだったし。
それにこっちの奴はこんな時期に海なんか来ないさ。」
ミナトは辺りを見回し、優良物件を探す。
「あの独りでいるマッチョが今日一かな。」
視線が向いてる方向を見る。
競パンを穿いた男が体育座りで沖を眺めていた。
ナツキ達の存在に気付いた男と視線が合う。
ニヤリと笑うと男は立ち上がり、海へ入っていく。
岩場に囲まれた狭い砂浜に二人分のスペースはない。
ミナトは半分に折ったシートを敷くと、大きな荷物を置いた。
(つづく)
「ナツキさん、こっちです!」
日に焼けた男が車から顔を出す。
「おう、随分暑いな。
流石、沖縄だ。」
助手席に座るナツキの額に汗が光る。
「この暑さは異常だよ。
この時期は20度前後が普通なんで。
ホテルに直行しますか?」
ミナトはウインカーを出すと、強引にタクシーの前に入り込む。
クラクションが後ろから追ってきた。
遮光ガラスでも照り付ける陽射しは防ぎ切れない。
「折角来たんだ、海に寄ってみるか。」
「了解!そう言うと思って、用意してきたんだ。」
ミナトが白い歯を溢した。
「で、ビデオの件だが。
顔出しで構わないんだな?」
中嶋に言われた通り念を押す。
「全然、平気。
沖縄の辺鄙なリゾート勤務だ。
見た奴に会う可能性なんてないだろうし。
逆に見た奴がモーション掛けてきたらラッキーな位さ。」
ミナトはアクセルを踏み込むと、車線を越えてトラクターを追い越した。
「こんな時期でも物好きはいるもんだ。」
見覚えのある叢に並ぶ車列を見てナツキは笑う。
「ああ、オカマにオフシーズンはないからな。
なあ、ここで一発どうだ?」
車の陰でミナトが卑猥な笑みを浮かべた。
「この車の数だけオカマがいるんだ。
大勢の前で犯してやるぜ。
それとも犯したいか?
まあ、どっちでもいい。
さあ、行くぞ。」
春先とは思えない陽射しにナツキは顔を顰めた。
ナツキの来沖の目的はミナトの性癖を探る為だ。
「ビデオを見て、一番ガッカリするのは完全に勃起してないペニスを見た時です。
だからSがフルに勃起するシナリオを書きたいのです。
その為にミナトさんがより興奮するプレイを見極めてきて下さい。
ナツキさんから動いたら駄目です。
相手のしたい事は絶対に断らない事を守って下さい。
旅費は私が持ちますから、動画を撮ってきて下さい。
カメラテストを兼ねて室内、室外でお願いします。
それから…。」
中嶋の指示を思い出そうとするが、余りに長く後半は記憶にない。
『兎に角、こいつを好きにさせて、動画を撮ればいい訳だ。』
中嶋は頭が切れるが、説明が多い。
前後に形容詞が多く、回りくどい。
「前戯の長いオカマは嫌われるぞ。」
説明を聞いた後のナツキの発言だ。
ポカンとした表情を思い出し、笑い出す。
「機嫌良さそうだな。
今日の陽射しなら、かなり焼けそうだ。」
ナツキは額の汗を拭うと、青空を見上げた。
「やはり観光客ばかりだ。」
「分かるのか?」
「レンタカーばかりだったし。
それにこっちの奴はこんな時期に海なんか来ないさ。」
ミナトは辺りを見回し、優良物件を探す。
「あの独りでいるマッチョが今日一かな。」
視線が向いてる方向を見る。
競パンを穿いた男が体育座りで沖を眺めていた。
ナツキ達の存在に気付いた男と視線が合う。
ニヤリと笑うと男は立ち上がり、海へ入っていく。
岩場に囲まれた狭い砂浜に二人分のスペースはない。
ミナトは半分に折ったシートを敷くと、大きな荷物を置いた。
(つづく)
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説




体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる