妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

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Chapter10(倒影編)

Chapter10-⑦【誘惑光線・クラッ!】前編

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「お前との撮影会が好評なんで、ビデオ撮る事にした。
来月の定休日を空けとけ。」
ナツキは一方的に言う。
「えっ、びっ、ビデオですか?」
ワタルの狼狽振りが笑える。
「何か問題でもあんのか?
まさか、他のビデオで出るとか?」
ドスを利かせ、聞き返す。
「あっ、いやっ、そんな…、滅相もない。
ただ…、その…、あります。」
消え入りそうな声を絞り出した。
「何だ、言ってみろ。」
「さっ、流石に…、顔出しは…、問題が…。」
「安心しろ。
お前の好物のラバーマスクを用意してやる。
それで解決だ。
ヨロシクな。」
ナツキはとっとと店を出ていく。
『素っ気なく伝えて下さい。
冷たければ、冷たい程いいです。』
中嶋の指示を地で熟した。
 
顔面蒼白のワタルはシナリオ以上に困惑していた。
「他にも問題がありますか?
相談に乗りますよ。」
想定通りに、中嶋は声を掛ける。
鞭の後の飴は効果覿面だ。
「…。なっ、ナツキさんには黙っててくれますか?」
縋る視線が食らい付いた。
「やはりあるのですね。
勿論、黙っておきます。
話がややこしくなるのは目に見えてますから。
ご安心を。」
中嶋は小さく笑うと、大きく頷く。
「じ、実は…。」
ワタルが震える声で話し出した。
 
「そうですか。
その二本目の出演に関して、正式に契約したのですか?
例えばサインをしたとか?」
聞き終わると、中嶋は缶コーヒーをカウンターに置く。
ワタルは少し赤みが戻った顔を振った。
「いや、三浦さんとは、あっこれは監督の名前なんですが、口約束だけです。」
「だったら話は簡単です。
他に出演依頼を受けたと言えば良いのです。
契約もせずに、話を進めた向こうの手落ちです。」
中嶋は想定内の発言をする。
「でも断れば、三浦さんはカンカンに怒りますよ…。」
争いを好まないワタルの言いそうな事だと、中嶋は笑みを浮かべた。
「ミナトさんがどうしても相手はワタルさんでないと駄目だと言っているのです。」
切り札を出す。
どうしてもを強調して、顔色を伺う。
「えっ、ミナトさんって、沖縄の?」
赤みが一気に増した。
「そうです。
面倒な調整は全て私が行います。
必要であれば、私からその監督、三浦さんに連絡しましょうか?
ナツキさんには内緒で。」
中嶋は小声で言うと、ウインクしする。
 
「もしもし、私はサマープロダクションの中嶋と申します。
三浦様の携帯でございますか?」
ワタルは電話をする中嶋を緊張の面持ちで見詰める。
「実はそちらのビデオでお世話になったワタル君の件です。
私共のプロダクションに入りましたので、ご連絡をと思いまして。」
滑らかに用件を伝えた。
「そうは仰られても、契約書も交わしてないのでは、お話になりません。
ワタル君は別の依頼がありまして、そちらと交渉中ですのであしからず。
では失礼します。」
中嶋は耳から携帯を離すと、通話を切る。
「暫く携帯は切っておいた方が良さそうですね。
かなりの剣幕でした。」
その言葉にワタルは慌てて携帯の電源ボタンを押した。
 
 
(つづく)
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