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Chapter10(倒影編)
Chapter10-⑥【ロンリー・チャップリン】前編
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「このままではワタルを引き抜かれます。
何とかしないと。」
中嶋がパソコンの画像を引き伸ばす。
サングラスを掛け、座っている男に覚えがある。
沖縄にいたカメラマンだ。
確か三浦と名乗った。
「そうは言ってもな。」
ナツキにしては歯切れが悪い。
あの手の男は苦手だった。
正面から腕力で来ない。
姑息な手段で外堀を埋めてくる。
卑怯な野郎と関わると、碌なことがない。
無視するのが一番だ。
「何、呑気な事を言ってるんですか!
ワタル目当てで、来客が増えています。
もし撮影会がなくなったら、一気に売上が落ちますよ!」
中嶋が珍しく語気を荒げた。
ワタルの様子を不審に思った中嶋が尾行したのだ。
そこで撮った車内の画像をパソコンで見ていた。
「それにしても奴がこのモデルだとはな。
根性なしだと思ってたが、少し見直したぜ。
とりあえず様子見ないか?」
ナツキは煙を燻らせる。
「馬鹿言わないで下さい!
次作を撮られてからじゃ、手遅れです。
一作目がヒットした以上、次は正式な契約が交わされる筈です。
向こうも引き抜きされたくない訳ですから。」
「先に引き抜いた癖にな。
まあ、そうなったら、それまでだ。
諦めようぜ。」
「諦めるって、簡単に言わないで下さい!
以前は赤字になっても、神志那さんの後ろ楯があったから痛くも痒くもありませんで
した。
しかし今は違います。
赤字出したら、我々の給料は出ませんよ!」
真っ赤な顔から湯気が出ている様だ。
「あー、分かった、分かった。
何とかしようぜ。」
灰皿に煙草を押し付ける。
どうらや無視する事は出来そうもない。
『何、こいつ熱くなってんだ?
もしかしてワタルの事が?』
煙越しに中嶋の顔を見た。
いつも冷静な男が落ち着きなく歩き回る。
「くそっ!こんなビデオに出やがって!」
中嶋が珍しく悪態を吐いた。
「だったら俺らも、ビデオ撮るか。
これ以上のビデオをさ。」
思い付きを口にする。
「俺らって、ナツキさんと私とですか?
これ以上の?」
「他にいるか?」
ナツキはまた煙草に火を点けた。
「では我々で撮る前提で話しましょう。
ワタルがメインモデルとして、責め役はどうしますか?」
「勿論、お前だ。
お前のえげつない責めでワタルを虜にしろ。
そうすればこれ以上になるだろ?
社長命令だ。」
ふんぞり返って煙を天井に向かって吐き出す。
単なる思い付きだが、意外と行ける気がしてきた。
『こいつの責めは下品極まりないからな。』
先日、中嶋に見せられた責め画像が勝算を呼んだ。
「えげつなさは自信があります。
ではカメラマンはどうしますか?」
ナツキは天井を這う煙を目で追う。
「ここはケチっても仕方ねぇ。
プロを雇うか。」
煙が掻き消えたのを見届けると口を開いた。
「プロって、そんな資金はないです。」
「社長の遺産があんだろ。」
「それはもしもの為に…。」
「そのもしもが今なんだよ。」
中嶋の言葉に被せて言い切る。
(つづく)
何とかしないと。」
中嶋がパソコンの画像を引き伸ばす。
サングラスを掛け、座っている男に覚えがある。
沖縄にいたカメラマンだ。
確か三浦と名乗った。
「そうは言ってもな。」
ナツキにしては歯切れが悪い。
あの手の男は苦手だった。
正面から腕力で来ない。
姑息な手段で外堀を埋めてくる。
卑怯な野郎と関わると、碌なことがない。
無視するのが一番だ。
「何、呑気な事を言ってるんですか!
ワタル目当てで、来客が増えています。
もし撮影会がなくなったら、一気に売上が落ちますよ!」
中嶋が珍しく語気を荒げた。
ワタルの様子を不審に思った中嶋が尾行したのだ。
そこで撮った車内の画像をパソコンで見ていた。
「それにしても奴がこのモデルだとはな。
根性なしだと思ってたが、少し見直したぜ。
とりあえず様子見ないか?」
ナツキは煙を燻らせる。
「馬鹿言わないで下さい!
次作を撮られてからじゃ、手遅れです。
一作目がヒットした以上、次は正式な契約が交わされる筈です。
向こうも引き抜きされたくない訳ですから。」
「先に引き抜いた癖にな。
まあ、そうなったら、それまでだ。
諦めようぜ。」
「諦めるって、簡単に言わないで下さい!
以前は赤字になっても、神志那さんの後ろ楯があったから痛くも痒くもありませんで
した。
しかし今は違います。
赤字出したら、我々の給料は出ませんよ!」
真っ赤な顔から湯気が出ている様だ。
「あー、分かった、分かった。
何とかしようぜ。」
灰皿に煙草を押し付ける。
どうらや無視する事は出来そうもない。
『何、こいつ熱くなってんだ?
もしかしてワタルの事が?』
煙越しに中嶋の顔を見た。
いつも冷静な男が落ち着きなく歩き回る。
「くそっ!こんなビデオに出やがって!」
中嶋が珍しく悪態を吐いた。
「だったら俺らも、ビデオ撮るか。
これ以上のビデオをさ。」
思い付きを口にする。
「俺らって、ナツキさんと私とですか?
これ以上の?」
「他にいるか?」
ナツキはまた煙草に火を点けた。
「では我々で撮る前提で話しましょう。
ワタルがメインモデルとして、責め役はどうしますか?」
「勿論、お前だ。
お前のえげつない責めでワタルを虜にしろ。
そうすればこれ以上になるだろ?
社長命令だ。」
ふんぞり返って煙を天井に向かって吐き出す。
単なる思い付きだが、意外と行ける気がしてきた。
『こいつの責めは下品極まりないからな。』
先日、中嶋に見せられた責め画像が勝算を呼んだ。
「えげつなさは自信があります。
ではカメラマンはどうしますか?」
ナツキは天井を這う煙を目で追う。
「ここはケチっても仕方ねぇ。
プロを雇うか。」
煙が掻き消えたのを見届けると口を開いた。
「プロって、そんな資金はないです。」
「社長の遺産があんだろ。」
「それはもしもの為に…。」
「そのもしもが今なんだよ。」
中嶋の言葉に被せて言い切る。
(つづく)
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