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Chapter10(倒影編)
Chapter10-①【WANDERERS】前編
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「俺さ、ゴーゴー辞めようと思ってんだ。」
年明けのイベントの帰り道、ワタルは隣を歩く男に話し掛ける。
それは相談ではない。
かと言って、報告でもない。
たまたま口を開いたら、それが出てきた。
サクと呼ばれる男の本名は知らない。
同じイベントで良く顔を合わせていたので、自然と話す様になった。
「そっか、ワタルはいいよな。
実家が金持ちだから、辞めても食うに困る事もないし。
俺なんてバイト三つ掛け持ちだぜ。
一つでも辞めたら、即ライフライン停止だ。」
自嘲気味に笑うと、額に深い皺が現れた。
サクはビデオモデルもやっている。
猿顔のマッチョはメインモデルにはなれず、いつも汚れ役をやっていた。
「なあ、ビデオに出てみないか?
お前なら、即メイン昇格だぜ。」
以前、サクに誘われた事を思い出す。
「俺には無理だよ。
人前で勃起なんてしないし。」
その時は即座に断った。
「そうか?お前は見られ好きだから、イケると思うがな。」
「俺はお前とは違うよ。」
怪訝な顔をしながらも、サクはそれ以上の勧誘はしてこなかった。
サクはきっとワタルの本質を見抜いていたのだ。
不思議な男だ。
他のゴーゴーとつるむ事なく、単独を好んでいた。
休憩所でも馬鹿騒ぎには加わらず、隅で目を閉じている。
しかし煽り台に立つと豹変した。
狂乱的な煽りで、客を熱狂させる。
省エネ型のワタルには到底真似出来ない。
そして気が付くと、サクを目で追っていたいたのだ。
タイプには程遠いが、何故か気になる存在だった。
独りで帰る姿を見ては、小走りに後を追う。
話し掛ければ、会話は成立する。
それ程、変わった男ではない。
淡々とした話し方に嫌悪感は覚えない。
何故、浮いた存在なのか、不思議に思う。
「何でサクは何時も独りなのかな?」
ゴーゴー仲間に聞いた事がある。
「あいつ売りもやってるから、誰も関わりたくないのさ。
その内、しょぴかれるぜ。
巻き込まれたくなかったら、お前も距離を置いた方がいいぜ。」
ワタルはその答に違和感を覚えた。
「なら暫く会う事はないな。
たまには連絡してくれよ。」
伏目がちのサクは手を挙げると、地下鉄の改札に入って行く。
形のいい尻を見ながら、アナルが疼いた。
一度だけベッドを共にした事がある。
酔った勢いとイベント後の高揚感がワタルを発情させた。
ベッドの上でサクが股を開く。
慌てて視線を逸らした事を思い出す。
見てはいけない物を見てしまったからだ。
アナルが抉り返り、肉襞が蠢いていた。
サクを手で射精させると、電気を点けたまま目を瞑る。
照明を消すと、暗闇に蠢く赤い襞に飲み込まれそうだった。
今にして思うと、サクは自分と同類だ。
まだ当時は己の変態さに目を背けていた。
グロテスクな物を必要以上に嫌悪する事で、自分は正常だと思い込んでいたのだ。
だがもう後には戻れない。
あの素晴らしい快楽を知ってしまったから。
(つづく)
年明けのイベントの帰り道、ワタルは隣を歩く男に話し掛ける。
それは相談ではない。
かと言って、報告でもない。
たまたま口を開いたら、それが出てきた。
サクと呼ばれる男の本名は知らない。
同じイベントで良く顔を合わせていたので、自然と話す様になった。
「そっか、ワタルはいいよな。
実家が金持ちだから、辞めても食うに困る事もないし。
俺なんてバイト三つ掛け持ちだぜ。
一つでも辞めたら、即ライフライン停止だ。」
自嘲気味に笑うと、額に深い皺が現れた。
サクはビデオモデルもやっている。
猿顔のマッチョはメインモデルにはなれず、いつも汚れ役をやっていた。
「なあ、ビデオに出てみないか?
お前なら、即メイン昇格だぜ。」
以前、サクに誘われた事を思い出す。
「俺には無理だよ。
人前で勃起なんてしないし。」
その時は即座に断った。
「そうか?お前は見られ好きだから、イケると思うがな。」
「俺はお前とは違うよ。」
怪訝な顔をしながらも、サクはそれ以上の勧誘はしてこなかった。
サクはきっとワタルの本質を見抜いていたのだ。
不思議な男だ。
他のゴーゴーとつるむ事なく、単独を好んでいた。
休憩所でも馬鹿騒ぎには加わらず、隅で目を閉じている。
しかし煽り台に立つと豹変した。
狂乱的な煽りで、客を熱狂させる。
省エネ型のワタルには到底真似出来ない。
そして気が付くと、サクを目で追っていたいたのだ。
タイプには程遠いが、何故か気になる存在だった。
独りで帰る姿を見ては、小走りに後を追う。
話し掛ければ、会話は成立する。
それ程、変わった男ではない。
淡々とした話し方に嫌悪感は覚えない。
何故、浮いた存在なのか、不思議に思う。
「何でサクは何時も独りなのかな?」
ゴーゴー仲間に聞いた事がある。
「あいつ売りもやってるから、誰も関わりたくないのさ。
その内、しょぴかれるぜ。
巻き込まれたくなかったら、お前も距離を置いた方がいいぜ。」
ワタルはその答に違和感を覚えた。
「なら暫く会う事はないな。
たまには連絡してくれよ。」
伏目がちのサクは手を挙げると、地下鉄の改札に入って行く。
形のいい尻を見ながら、アナルが疼いた。
一度だけベッドを共にした事がある。
酔った勢いとイベント後の高揚感がワタルを発情させた。
ベッドの上でサクが股を開く。
慌てて視線を逸らした事を思い出す。
見てはいけない物を見てしまったからだ。
アナルが抉り返り、肉襞が蠢いていた。
サクを手で射精させると、電気を点けたまま目を瞑る。
照明を消すと、暗闇に蠢く赤い襞に飲み込まれそうだった。
今にして思うと、サクは自分と同類だ。
まだ当時は己の変態さに目を背けていた。
グロテスクな物を必要以上に嫌悪する事で、自分は正常だと思い込んでいたのだ。
だがもう後には戻れない。
あの素晴らしい快楽を知ってしまったから。
(つづく)
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