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Chapter9(手駒編)
Chapter9-⑭【時給850円のサンタクロース】後編
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発信源に見当が付く。
どうやらチカラの上着からの様だ。
アウターを弄り、内ポケットから携帯電話を取り出す。
藁をも掴む気持ちで、耳に当てる。
「おいっ、今店でパーティーしてんだ。
お前の好きなラバーパーティーだぜ。
どうせ独り寂しくしてんだろ。
顔出せよ。」
心強いダミ声が内耳に響く。
「なっ、ナツキさん!
助けて下さい!」
ヒナタは涙ながらに訴えた。
「チカラの家なんて、知らねぇしな。
それにしてもお前、心底馬鹿だな。
後先考えずに、んな事するからだ。
お陰で足がパンパンだ。」
ナツキは煙をヒナタの顔に吹き掛ける。
自転車で10キロの距離を往復した。
しかも復路は二人乗りだ。
チカラが落ちない様に縄で括り付けてきた。
自分の大胸筋にもくっきりと縄の跡が浮かんでいる。
「本当にすみません。
ナツキさんに少しでも近付きたくて…。
でももう二度と無茶しません。」
ヒナタが神妙に頭を下げた。
「まあ俺に憧れる気持ちは分からんでもないが、まだ100年早いな。」
顎の髭を撫でて、若気る。
「仕方ねぇ、ヒカルに引き取りに来てもらうか。」
ナツキはアドレス帳からヒカルの名前を探した。
「迎えに来るとよ。」
「あっ、ありがとうございます!」
ヒナタがへなへなとその場に座り込む。
「まあ、俺には到底及ばんだろうが、縛りのいろはを手解きしてやろう。
そこに転がってる奴を縛ってみろ。」
その言葉にヒナタは初めてワタルの存在を知る。
サンタの帽子を被った男の脇で、スイッチが入ったままの電動マッサージ機が床を
這っていた。
透ける生地のマスクを見て、下半身が熱くなる。
エアコンの利いた部屋で、やっと安堵する事が出来た。
「おうっ、中々筋がいいな。
だがな、まだまだ素人の域だ。
強弱がなっちゃねぇ。」
ヒナタが縛り終わると、チェックし始めた。
「強弱って、どういう意味っすか?」
褒められると思っていたヒナタは不満気に聞く。
「縄りってのは単にキツくすれば良いってモンじゃねぇんだ。
キツく縛る所は目一杯、だが要所要所弛みも必要だ。
それが後々物をいうんだ。
お前の縛りじゃ、どんな屈強な奴でも一時間持たん。
下手すりゃ病院行きだ。
今日の間違いを決して、忘れるな。
何時も俺が駆け付けると思っていると、マジ痛い目にあうぞ。」
ナツキの説明にヒナタの顔は青褪めた。
「大きな筋肉は横にキツく、縦に繋ぐのは弛ますんだ。
そうすりゃ、外に連れて行って、ヘロヘロ顔のMを楽しめるってモンだ。」
「うっす!ご指導ありがとうございます!」
言われた事を頭に叩き込んだ。
「さあ、一息吐いた所でパーティーを再開しましょう。
グラスを持って下さい。」
中嶋がグラスを翳す。
「メリークリスマス!」
皆がグラスを重ねた。
只一人チカラだけはその声を夢の中で聞く。
高熱に浮かされながらも、多幸感に包まれていた。
『仲間っていいもんだな。』
声が遠退いていく。
次第に深い深い眠りに落ちていった。
(完)
どうやらチカラの上着からの様だ。
アウターを弄り、内ポケットから携帯電話を取り出す。
藁をも掴む気持ちで、耳に当てる。
「おいっ、今店でパーティーしてんだ。
お前の好きなラバーパーティーだぜ。
どうせ独り寂しくしてんだろ。
顔出せよ。」
心強いダミ声が内耳に響く。
「なっ、ナツキさん!
助けて下さい!」
ヒナタは涙ながらに訴えた。
「チカラの家なんて、知らねぇしな。
それにしてもお前、心底馬鹿だな。
後先考えずに、んな事するからだ。
お陰で足がパンパンだ。」
ナツキは煙をヒナタの顔に吹き掛ける。
自転車で10キロの距離を往復した。
しかも復路は二人乗りだ。
チカラが落ちない様に縄で括り付けてきた。
自分の大胸筋にもくっきりと縄の跡が浮かんでいる。
「本当にすみません。
ナツキさんに少しでも近付きたくて…。
でももう二度と無茶しません。」
ヒナタが神妙に頭を下げた。
「まあ俺に憧れる気持ちは分からんでもないが、まだ100年早いな。」
顎の髭を撫でて、若気る。
「仕方ねぇ、ヒカルに引き取りに来てもらうか。」
ナツキはアドレス帳からヒカルの名前を探した。
「迎えに来るとよ。」
「あっ、ありがとうございます!」
ヒナタがへなへなとその場に座り込む。
「まあ、俺には到底及ばんだろうが、縛りのいろはを手解きしてやろう。
そこに転がってる奴を縛ってみろ。」
その言葉にヒナタは初めてワタルの存在を知る。
サンタの帽子を被った男の脇で、スイッチが入ったままの電動マッサージ機が床を
這っていた。
透ける生地のマスクを見て、下半身が熱くなる。
エアコンの利いた部屋で、やっと安堵する事が出来た。
「おうっ、中々筋がいいな。
だがな、まだまだ素人の域だ。
強弱がなっちゃねぇ。」
ヒナタが縛り終わると、チェックし始めた。
「強弱って、どういう意味っすか?」
褒められると思っていたヒナタは不満気に聞く。
「縄りってのは単にキツくすれば良いってモンじゃねぇんだ。
キツく縛る所は目一杯、だが要所要所弛みも必要だ。
それが後々物をいうんだ。
お前の縛りじゃ、どんな屈強な奴でも一時間持たん。
下手すりゃ病院行きだ。
今日の間違いを決して、忘れるな。
何時も俺が駆け付けると思っていると、マジ痛い目にあうぞ。」
ナツキの説明にヒナタの顔は青褪めた。
「大きな筋肉は横にキツく、縦に繋ぐのは弛ますんだ。
そうすりゃ、外に連れて行って、ヘロヘロ顔のMを楽しめるってモンだ。」
「うっす!ご指導ありがとうございます!」
言われた事を頭に叩き込んだ。
「さあ、一息吐いた所でパーティーを再開しましょう。
グラスを持って下さい。」
中嶋がグラスを翳す。
「メリークリスマス!」
皆がグラスを重ねた。
只一人チカラだけはその声を夢の中で聞く。
高熱に浮かされながらも、多幸感に包まれていた。
『仲間っていいもんだな。』
声が遠退いていく。
次第に深い深い眠りに落ちていった。
(完)
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