妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

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Chapter9(手駒編)

Chapter9-①【新しい世界】前編

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「よっ、新しいオーナーのお出ましだぜ。」
店内は赤い照明が妖しい雰囲気を醸し出していた。
「あっ、ナツキさん、待ってました。」
中嶋がレジの中から笑顔を向ける。
店内に客の姿はない。
「ちっ、流行らねぇ店を貰っちまったな。
よっしゃ、大改装して、テコ入れするか。」
ナツキは店内を歩き回る。
「これ神志那さんから預かってます。」
後ろから中嶋が声を掛けてきた。
手に通帳と印鑑を持っている。
「当面の資金にしろと、仰ってました。」
ナツキは受け取ると、残高の頁を開く。
「一、十、百、千、万、十万、百万…、ごひゃくまん!」
声がひっくり返った。
 
「お前、馬鹿か?
これ持って逃げちまえばいいのに。
死人に口なしだぞ。」
中嶋をまじまじと見る。
「確かにそういう考えも、一瞬過りました。
でもナツキさんと一緒にいた方が楽しそうに思えたので。
お金では味わえない体験をさせてもらえそうなんでね。
丸でRPGに入り込んだ感覚なんです。」
中嶋が小さく笑う。
『この男は信頼出来る。』
ナツキはそう直感した。
だから神志那も、これを中嶋に預けたのだろう。
「それに万が一バレたら、地の果てまで追って来るでしょ?
そんなリスクを犯すより、新社長の下で一緒にハラハラドキドキしたいです。
改めて宜しくお願いします。」
「ああ、勿論だ。
貸した金なら、五万円でも地獄まで追っかけるぜ。
これから宜しくな。」
手を伸ばすと、華奢な指が握り返してきた。
心許ない握力だが、酷く力強く感じた。
 
「先日、神志那さんの指示でラバーウェアを大量に入荷しました。
でもどう対処していいのか分からず、そのままなんです。」
中嶋が店の隅に積んである段ボール箱を指差す。
「社長から販売計画の説明はなかったのか?」
「いらっしゃる予定はあったのですが。」
「それにしても凄い量だな。」
ナツキは手前の箱を開封する。
全頭マスクが詰め込んであった。
デザイン、カラー違いで50枚ある。
「こんなに捌けますかね?」
「普通に考えたら無理だな。
それにラバーは劣化するから、時間の制約もある。」
次の箱を開けると、トップスとパンツが各々20枚出てきた。
最後の箱にはラバースーツが20着入っている。
「幾ら何でも、イニシャルにしては多過ぎます。
どうしましょうか?」
「原価は幾らだ?」
「60万弱ですが…。
既に入金済みです。」
「てっ事は三倍で売れば120万の儲けか。
何か手を打たねぇと、水の泡だ。
よし、資金を620万にするぞ!」
ナツキはスーツを一着広げてみた。
吊るすだけではインパクトに欠ける。
人が着るのも大層な代物だ。
マネキンに着せる事は出来ない。
あれだけのイベントを打ったのだから、神志那は相当の勝算があったのだろう。
ハコが小さいとはいえ、人もかなり集まった。
即売会も盛況だった。
需要があるのは確かだ。
「まずは隠れマニアを掘り起こす必要があるな。」
ナツキは携帯を手に取ると、アドレスをスクロールする。
 
 
(つづく)
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