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Chapter8(男童編)
Chapter8-⑦【残火】前編
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「あっ、ナツキさん!
何処へ行ってたのですか!
何回も電話したのに。
至急、病院へ向かいます。」
支配人室に入ると、鞄を持った塚田が大声で咎めた。。
「何処だっていいだろ。
視察だよ、し・さ・つ。」
神志那は夕方から市議会議員と会食があると言って、市役所で別れていた。
時間が空いたので、発展場で抜いてきたのだ。
最近、仕事に対する情熱が失せていた。
この職場では生きているという実感が得られない。
カズユキの分まで生きると約束したのに。
ここでは仕事を失敗しても、死ぬ事はない。
最初は刺激的だった仕事も慣れてくると、面白みはない。
毎日、同じルーティンを繰り返すだけだ。
人に言い付けるだけで、自分で動く事はない。
他人に出来ない、自分にしか出来ない事をしたい。
そこに死が伴っても。
「健康診断なら必要ないぞ。
それより次の幹部会のスケジュールを見せろ。」
今はシンゴに再会する事が些細なモチベーションだ。
「違います。
社長が倒れたのです。
急いで病院へ!」
「へっ?」
緊迫した塚田の声が現実とは思えなかった。
「忙しい時にすまんな。
帰る支度をしてくれ。」
ベッドの中の神志那は酷く更けて見えた。
「いえ、私は構いません。
今夜の会食はお断りの連絡を入れておきました。
それより顔色が優れません。
夏場の過労が一気に来たのでは?
海外出張に、合併の懸案と続きましたから。
少し休まれてはどうですか?」
直立不動の塚田の表情は険しい。
素人目にも過労でない事は分かる。
「休みは先月取った。」
「休暇といっても3日間ではないですか。
もう少しゆっくり休まれた方が…。」
「俺には時間がないんだ。
早く帰る支度をしろ。」
神志那が荒げた声を発した。
「畏まりました。
至急、精算してまいります。」
塚田が部屋から出ていく。
「ミサキ、私の婚外子だ。
最近、学校に行きだしたと、連絡があってな。
色々奔走してくるた様だな。
助かった。」
神志那の声に張りはない。
「俺は別に。」
「心労が片付いて、気合いが失せた様だ。
一気にガタがきた。」
神志那は深く深呼吸すると瞳を閉じた。
眠ったのかと思った。
深い皺は老いの所為ではない筈だ。
「来月の株主総会でお前を社長に据え、俺は会長職に退く。
これからお前を徹底的に扱くぞ。」
突然、真っ赤な眼差しがナツキを捉えた。
「俺はいいっすよ。」
「いいって、どういう意味だ?」
「だから俺は社長なんかにならないって事っす。」
ナツキは物分かりの悪い男に苛立ちを覚える。
「お前、分かっているのか?
今年中に10店舗を越えるジムの社長だぞ。
天下を取れるんだ!」
「別に興味ないし。
それに面倒じゃないっすか。」
「お前は社長として、意思決定をするだけだ。
面倒な雑務は副社長の山下君がやってくれる。」
山下は合併される側の社長の名前だ。
シンゴから見たら雲の上の人が俺の部下か。
だがナツキは社長の座を笑い飛ばす。
(つづく)
何処へ行ってたのですか!
何回も電話したのに。
至急、病院へ向かいます。」
支配人室に入ると、鞄を持った塚田が大声で咎めた。。
「何処だっていいだろ。
視察だよ、し・さ・つ。」
神志那は夕方から市議会議員と会食があると言って、市役所で別れていた。
時間が空いたので、発展場で抜いてきたのだ。
最近、仕事に対する情熱が失せていた。
この職場では生きているという実感が得られない。
カズユキの分まで生きると約束したのに。
ここでは仕事を失敗しても、死ぬ事はない。
最初は刺激的だった仕事も慣れてくると、面白みはない。
毎日、同じルーティンを繰り返すだけだ。
人に言い付けるだけで、自分で動く事はない。
他人に出来ない、自分にしか出来ない事をしたい。
そこに死が伴っても。
「健康診断なら必要ないぞ。
それより次の幹部会のスケジュールを見せろ。」
今はシンゴに再会する事が些細なモチベーションだ。
「違います。
社長が倒れたのです。
急いで病院へ!」
「へっ?」
緊迫した塚田の声が現実とは思えなかった。
「忙しい時にすまんな。
帰る支度をしてくれ。」
ベッドの中の神志那は酷く更けて見えた。
「いえ、私は構いません。
今夜の会食はお断りの連絡を入れておきました。
それより顔色が優れません。
夏場の過労が一気に来たのでは?
海外出張に、合併の懸案と続きましたから。
少し休まれてはどうですか?」
直立不動の塚田の表情は険しい。
素人目にも過労でない事は分かる。
「休みは先月取った。」
「休暇といっても3日間ではないですか。
もう少しゆっくり休まれた方が…。」
「俺には時間がないんだ。
早く帰る支度をしろ。」
神志那が荒げた声を発した。
「畏まりました。
至急、精算してまいります。」
塚田が部屋から出ていく。
「ミサキ、私の婚外子だ。
最近、学校に行きだしたと、連絡があってな。
色々奔走してくるた様だな。
助かった。」
神志那の声に張りはない。
「俺は別に。」
「心労が片付いて、気合いが失せた様だ。
一気にガタがきた。」
神志那は深く深呼吸すると瞳を閉じた。
眠ったのかと思った。
深い皺は老いの所為ではない筈だ。
「来月の株主総会でお前を社長に据え、俺は会長職に退く。
これからお前を徹底的に扱くぞ。」
突然、真っ赤な眼差しがナツキを捉えた。
「俺はいいっすよ。」
「いいって、どういう意味だ?」
「だから俺は社長なんかにならないって事っす。」
ナツキは物分かりの悪い男に苛立ちを覚える。
「お前、分かっているのか?
今年中に10店舗を越えるジムの社長だぞ。
天下を取れるんだ!」
「別に興味ないし。
それに面倒じゃないっすか。」
「お前は社長として、意思決定をするだけだ。
面倒な雑務は副社長の山下君がやってくれる。」
山下は合併される側の社長の名前だ。
シンゴから見たら雲の上の人が俺の部下か。
だがナツキは社長の座を笑い飛ばす。
(つづく)
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