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Chapter8(男童編)
Chapter8-④【立ちっぱなしのBad Boy】前編
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「てっ、てめぇ!」
ミサキはもう一人の男を無視して、リーダー格の男を見詰める。
薄ら笑いは既に消えていた。
「難癖付ける相手を間違ったな。」
ミサキはリーダー格との間合いを詰める。
「ふざけやがって!」
背後の男が羽交い締めした。
小柄な相手を押さえる為に顔が下を向く。
ミサキは大きく頭を前に引くと、反動を使って後ろに戻す。
顎に命中した男はへなへなと座り込んだ。
「雑魚じゃあ、相手にならないよ。
さあ、どうする?」
ミサキが逆に笑顔を向ける。
だがその目は狂気を伴っていた。
「おい、少しは楽しみを取っておけよ。」
野次馬の中からハーフが声を掛けてきた。
全身ブラックレザーを着込んでいるが、幼い顔にはアンバランスだ。
「あっ、タケル!ごめんな。
もう出番はないよ。」
視線を逸らした隙に、リーダー格のパンチが伸びた。
ミサキの蹴りが拳を狙い打つ。
『ゴキッ!』
鈍い音と共に、手首が明後日の方向へ向く。
「うわぁぁぁ!」
叫び声を残して、走り出した後ろ姿を見送る。
「派手にやりやがって。
今日は退散するか?
折角、めかし込んできたのに。」
タケルは足で倒れている男を小突く。
立ち上がった男は辺りを見回し、リーダー格がいない事を知る。
倒れている男を背負うと、その場から逃げ出した。
「関係ないさ。
さあ、派手に踊ろうぜ。」
ミサキは屈託なく笑う。
「だな。」
タケルは同意すると、落ちているスケボーに乗り、入り口を目指す。
「あっ、ずりぃ!
それ俺のモンだぜ。」
ミサキは慌てて後を追う。
その姿は無邪気な子供と変わらなかった。
「得意技は蹴りか。」
ナツキは呟く。
非力な腕力を補うにはいい選択だ。
あれだけ撓れば、破壊力は何倍にも増すだろう。
仕留めたのも顎、脛椎、手首と鍛えられない部位ばかりだ。
神志那の教えと一致している。
「こりゃ楽しくなりそうだ。」
込み上げてくる笑いを噛み殺した。
「ナツキさん、何ニヤニヤしてるんですか?
マスク被ってるから、余計に不気味ですよ。」
開始前にワタルが煽り台から下りてきた。
「愉快過ぎて、笑いが止まらん。
何だお前、露出狂の煽り役がそんな地味な格好なのか?」
ナツキは薄手のショートパンツを見咎める。
「狂は付かないですよ。
露出ナイトです。」
生真面目なワタルが訂正した。
「どっちも同じだろ。
それじゃ客は盛り上がらんぞ。」
「普通のゲイはこれ位がアガルんですよ。
この間のラバーなんて着てたら、殆どがドン引きです。
今日はマニアより、ノーマルゲイ向けですから。
俺にはちょっと物足りないけど。」
ワタルが小さく笑う。
『だが奴は違う。』
ナツキは煽り台の下で踊るミサキに視線を向ける。
振り乱した髪から汗が飛び散っていた。
あれ位の乱闘では体力は消耗しないらしい。
まだ負け知らずで、無鉄砲に突き進む。
いつの日か、無残に惨敗する日が来る迄は。
良く言えば天真爛漫だが、傍若無人の方が正しいだろう。
神志那が手を焼くのも頷ける。
(つづく)
ミサキはもう一人の男を無視して、リーダー格の男を見詰める。
薄ら笑いは既に消えていた。
「難癖付ける相手を間違ったな。」
ミサキはリーダー格との間合いを詰める。
「ふざけやがって!」
背後の男が羽交い締めした。
小柄な相手を押さえる為に顔が下を向く。
ミサキは大きく頭を前に引くと、反動を使って後ろに戻す。
顎に命中した男はへなへなと座り込んだ。
「雑魚じゃあ、相手にならないよ。
さあ、どうする?」
ミサキが逆に笑顔を向ける。
だがその目は狂気を伴っていた。
「おい、少しは楽しみを取っておけよ。」
野次馬の中からハーフが声を掛けてきた。
全身ブラックレザーを着込んでいるが、幼い顔にはアンバランスだ。
「あっ、タケル!ごめんな。
もう出番はないよ。」
視線を逸らした隙に、リーダー格のパンチが伸びた。
ミサキの蹴りが拳を狙い打つ。
『ゴキッ!』
鈍い音と共に、手首が明後日の方向へ向く。
「うわぁぁぁ!」
叫び声を残して、走り出した後ろ姿を見送る。
「派手にやりやがって。
今日は退散するか?
折角、めかし込んできたのに。」
タケルは足で倒れている男を小突く。
立ち上がった男は辺りを見回し、リーダー格がいない事を知る。
倒れている男を背負うと、その場から逃げ出した。
「関係ないさ。
さあ、派手に踊ろうぜ。」
ミサキは屈託なく笑う。
「だな。」
タケルは同意すると、落ちているスケボーに乗り、入り口を目指す。
「あっ、ずりぃ!
それ俺のモンだぜ。」
ミサキは慌てて後を追う。
その姿は無邪気な子供と変わらなかった。
「得意技は蹴りか。」
ナツキは呟く。
非力な腕力を補うにはいい選択だ。
あれだけ撓れば、破壊力は何倍にも増すだろう。
仕留めたのも顎、脛椎、手首と鍛えられない部位ばかりだ。
神志那の教えと一致している。
「こりゃ楽しくなりそうだ。」
込み上げてくる笑いを噛み殺した。
「ナツキさん、何ニヤニヤしてるんですか?
マスク被ってるから、余計に不気味ですよ。」
開始前にワタルが煽り台から下りてきた。
「愉快過ぎて、笑いが止まらん。
何だお前、露出狂の煽り役がそんな地味な格好なのか?」
ナツキは薄手のショートパンツを見咎める。
「狂は付かないですよ。
露出ナイトです。」
生真面目なワタルが訂正した。
「どっちも同じだろ。
それじゃ客は盛り上がらんぞ。」
「普通のゲイはこれ位がアガルんですよ。
この間のラバーなんて着てたら、殆どがドン引きです。
今日はマニアより、ノーマルゲイ向けですから。
俺にはちょっと物足りないけど。」
ワタルが小さく笑う。
『だが奴は違う。』
ナツキは煽り台の下で踊るミサキに視線を向ける。
振り乱した髪から汗が飛び散っていた。
あれ位の乱闘では体力は消耗しないらしい。
まだ負け知らずで、無鉄砲に突き進む。
いつの日か、無残に惨敗する日が来る迄は。
良く言えば天真爛漫だが、傍若無人の方が正しいだろう。
神志那が手を焼くのも頷ける。
(つづく)
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