妄想日記5<<DISPARITY>>

Chapter6(港川編)

Chapter6-⑨【眼鏡越しの空】前編

「すいません。
トイレが余りに汚いんで、掃除して貰えないっすか。」
ヒナタはトイレ近くにいた監視員に声を掛ける。
「何処ですか？」
「奥から二番目の個室っす。」
「ご迷惑をお掛けしてすみません。
至急、係の者を向かわせます。」
監視員が詰所へ向かう。
それを見届けると、トイレに戻る。
「掃除を始めます。」
中に向かって声を張った。
離れた所からトイレを監視する。
ヒナタが出てくるのと同時に、清掃道具を持ったバイトが入っていく。
少し遅れて、男を出てきた。
「えっ！」
出てきたのは先程ナツキに欲情していた腹の出た男だ。
 
「すみません。」
突然、背後から声を掛けら掛けられた。
「見付かって良かった。
随分探しました。」
既に着替え終わったタカユキが微笑む。
膨らんだ大胸筋が汗で濡れている。
連動する様にヒナタの股間も膨らんだ。
「あっ…、かっ、帰るんすか？」
やっとの事で言葉を絞り出す。
「ちょっと急用を思い出して。
借りた競パンをそのまま返す訳にはいかないので、洗ってから返します。
差し障りなければ、連絡先を教えて貰えますか？」
タカユキが携帯電話を出す。
「別に洗わなくても…。」
言い掛けて、言葉を飲み込む。
という事はまた会えるのだ。
「ならここに電話して。」
ヒナタは電話番号を口にする。
「本当に助かりました。
ありがとうございました。」
年下の男に頭を下げた。
律儀な男が酷く眩しい。
去っていく後ろ姿をいつ迄も見送った。
 
元いた場所に戻ると、ナツキは鼾を掻いて寝ていた。
勃起したペニスが呼吸と共に上下動している。
その隣でコウキが顔を顰めていた。
「どうしたんだ？
人相悪いぞ。」
コウキの脇に腰掛ける。
「そこのオカマがガン見すんだ。
気持ち悪くてよ。」
先程、トイレでコウキの後から出てきた男だ。
股を開いてストレッチしている。
「だったらナツキさん起こして、場所変えるか？」
「無理だ。
泳ぎに行っても、付いて来たしな。」
コウキが舌打ちするが、男の耳には届かない。
いや、逆にジロジロ見るコウキが自分を意識していると思っている様子だ。
隆起した股間は不発だった事を物語っていた。
ねっとりした上目遣い視線がコウキをロックオンしている。
放出する迄は諦める気配はなさそうだ。
 
『お前がちょっかいを出すからだろ。』
その言葉を飲み込む。
コウキは乱視が酷い為、コンタクトでは視力が出ない。
きっと遠目にはイケてるマッチョに見えたのだろう。
「モテる男はつらいな。」
ヒナタは愉快な気分で言い放つ。
「ちょっと便所に付き合ってくれよ。」
コウキが立ち上がった。
「面倒臭ぇよ。
一人で行けよ。」
ヒナタはナツキのスキンヘッドに羨望の眼差しを向ける。
「きっと、あのオカマが付いて来る。
頼むよ。」
「ったく、面倒だな。」
仕方なくヒナタも腰を上げる。
好色な視線が追ってきた。
照射はまだまだ続きそうだ。
 
 
(つづく)