115 / 236
Chapter6(港川編)
Chapter6-④【虹の彼方へ】前編
しおりを挟む
廊下にまで轟音が聞こえてきた。
チカラは微笑みを浮かべ、鍵を差す。
シャワーを浴び、ベッドに入ると、雨粒が窓ガラスを伝っていた。
振り出した雨は勢いを増し、窓を叩く音が大きくなる。
「最終日の日焼けは無理だな…。」
ナツキの鼾も気にならず、深い眠りに落ちていった。
「おい、起きろ!
焼きに行くぞ。」
頬を張られて眠い目を擦る。
「今日は雨だ。
もう少し寝かせてくれ。」
「何寝ぼけてんだ。
外は晴れてるぞ。」
チカラは目を瞬かせて、窓に視線を向ける。
雲の切れ間から何条もの光線が降り注いでいた。
「虹だぜ。
何か、良い事がありそうだ。」
ナツキは窓際に立ち、慣れた手付きで頭に剃刀を当てていた。
その器用さに感心する。
鏡を見ながら、恐る恐る剃っている自分とは大違いだ。
レイト・チェックアウトに変更したが、無意味に終わりそうだった。
荷物を車に詰め込み、運転席に座る。
アナルの痛みがセイルを思い出させた。
「ふわぁー、何処へ行く?
そんな遠くは行けないぞ。」
欠伸ばかり出る。
「ならゲイビーチにするか。」
その言葉にチカラは顔を顰めた。
だが他に行く所もない。
「そうするか。」
チカラは気の進まないままウインカーを出した。
叢に三台の車が駐車してあった。
その内、レンタカーは一台だが、三浦の乗っていた車種ではない。
安堵し、車から降りる。
日光が直射後頭部を照り付けた。
剃り上げた頭皮がジリジリ焦げていく。
見下ろすと、満潮の為、奥の砂浜は水没していた。
風が強く、波が岩に打ち付けている。
「今日はこの辺りで焼くか。
流石に奥まで行くのはしんどそうだ。」
「確かにな。
あいつらも躊躇っているぜ。」
ナツキが水没を免れた小さな浜に視線を向けていた。
先に来た数人が荒海に躊躇しているのが見える。
「なら、ここで焼くか。
何か、着る物寄越せ。」
ナツキがスパッツを脱ぎ捨てた。
ゴム製のリングで塞き止められたペニスが上を向いている。
バッグの中からラバー製のTバックを出す。
真っ黒に焼けたナツキが穿けば全裸に見えるだろう。
チカラは満面の笑みを浮かべ、それを放り投げた。
「なら、ちょっくら泳いでくるわ。」
ナツキは浜へ続く階段を下りていく。
ブラックラバーと日焼けした筋肉が同化していた。
海を眺めていた男達がナツキに視線を向ける。
一様にフリーズする姿が面白い。
『今、ゲイビーチに来てるんだ。
三時迄いるから来ないか?』
セイルにメールを出す。
だが直ぐに返事は来ない。
流石に寝ているだろうと思い、携帯を仕舞う。
一人の男が階段を上がってきた。
サングラスを掛け、口髭を生やしている。
チカラの存在を知って、驚いた様子だ。
レッスンに出た事があるのかもしれない。
不安が過る。
頭を振って、それを追い出す。
こそこそ生きるのは止めた筈だ。
競パンを穿いた男は辺りを見回して、叢の中へ入っていく。
ゲイビーチに来て迄、競パンを穿く奴の気持ちが理解出来ない。
それなら利便の良い一般のビーチで充分ではないか。
自分から一番遠い存在のゲイに思えた。
(つづく)
チカラは微笑みを浮かべ、鍵を差す。
シャワーを浴び、ベッドに入ると、雨粒が窓ガラスを伝っていた。
振り出した雨は勢いを増し、窓を叩く音が大きくなる。
「最終日の日焼けは無理だな…。」
ナツキの鼾も気にならず、深い眠りに落ちていった。
「おい、起きろ!
焼きに行くぞ。」
頬を張られて眠い目を擦る。
「今日は雨だ。
もう少し寝かせてくれ。」
「何寝ぼけてんだ。
外は晴れてるぞ。」
チカラは目を瞬かせて、窓に視線を向ける。
雲の切れ間から何条もの光線が降り注いでいた。
「虹だぜ。
何か、良い事がありそうだ。」
ナツキは窓際に立ち、慣れた手付きで頭に剃刀を当てていた。
その器用さに感心する。
鏡を見ながら、恐る恐る剃っている自分とは大違いだ。
レイト・チェックアウトに変更したが、無意味に終わりそうだった。
荷物を車に詰め込み、運転席に座る。
アナルの痛みがセイルを思い出させた。
「ふわぁー、何処へ行く?
そんな遠くは行けないぞ。」
欠伸ばかり出る。
「ならゲイビーチにするか。」
その言葉にチカラは顔を顰めた。
だが他に行く所もない。
「そうするか。」
チカラは気の進まないままウインカーを出した。
叢に三台の車が駐車してあった。
その内、レンタカーは一台だが、三浦の乗っていた車種ではない。
安堵し、車から降りる。
日光が直射後頭部を照り付けた。
剃り上げた頭皮がジリジリ焦げていく。
見下ろすと、満潮の為、奥の砂浜は水没していた。
風が強く、波が岩に打ち付けている。
「今日はこの辺りで焼くか。
流石に奥まで行くのはしんどそうだ。」
「確かにな。
あいつらも躊躇っているぜ。」
ナツキが水没を免れた小さな浜に視線を向けていた。
先に来た数人が荒海に躊躇しているのが見える。
「なら、ここで焼くか。
何か、着る物寄越せ。」
ナツキがスパッツを脱ぎ捨てた。
ゴム製のリングで塞き止められたペニスが上を向いている。
バッグの中からラバー製のTバックを出す。
真っ黒に焼けたナツキが穿けば全裸に見えるだろう。
チカラは満面の笑みを浮かべ、それを放り投げた。
「なら、ちょっくら泳いでくるわ。」
ナツキは浜へ続く階段を下りていく。
ブラックラバーと日焼けした筋肉が同化していた。
海を眺めていた男達がナツキに視線を向ける。
一様にフリーズする姿が面白い。
『今、ゲイビーチに来てるんだ。
三時迄いるから来ないか?』
セイルにメールを出す。
だが直ぐに返事は来ない。
流石に寝ているだろうと思い、携帯を仕舞う。
一人の男が階段を上がってきた。
サングラスを掛け、口髭を生やしている。
チカラの存在を知って、驚いた様子だ。
レッスンに出た事があるのかもしれない。
不安が過る。
頭を振って、それを追い出す。
こそこそ生きるのは止めた筈だ。
競パンを穿いた男は辺りを見回して、叢の中へ入っていく。
ゲイビーチに来て迄、競パンを穿く奴の気持ちが理解出来ない。
それなら利便の良い一般のビーチで充分ではないか。
自分から一番遠い存在のゲイに思えた。
(つづく)
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説








ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる