妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

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Chapter6(港川編)

Chapter6-④【虹の彼方へ】前編

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廊下にまで轟音が聞こえてきた。
チカラは微笑みを浮かべ、鍵を差す。
シャワーを浴び、ベッドに入ると、雨粒が窓ガラスを伝っていた。
振り出した雨は勢いを増し、窓を叩く音が大きくなる。
「最終日の日焼けは無理だな…。」
ナツキの鼾も気にならず、深い眠りに落ちていった。
 
「おい、起きろ!
焼きに行くぞ。」
頬を張られて眠い目を擦る。
「今日は雨だ。
もう少し寝かせてくれ。」
「何寝ぼけてんだ。
外は晴れてるぞ。」
チカラは目を瞬かせて、窓に視線を向ける。
雲の切れ間から何条もの光線が降り注いでいた。
「虹だぜ。
何か、良い事がありそうだ。」
ナツキは窓際に立ち、慣れた手付きで頭に剃刀を当てていた。
その器用さに感心する。
鏡を見ながら、恐る恐る剃っている自分とは大違いだ。
レイト・チェックアウトに変更したが、無意味に終わりそうだった。
荷物を車に詰め込み、運転席に座る。
アナルの痛みがセイルを思い出させた。
「ふわぁー、何処へ行く?
そんな遠くは行けないぞ。」
欠伸ばかり出る。
「ならゲイビーチにするか。」
その言葉にチカラは顔を顰めた。
だが他に行く所もない。
「そうするか。」
チカラは気の進まないままウインカーを出した。
 
叢に三台の車が駐車してあった。
その内、レンタカーは一台だが、三浦の乗っていた車種ではない。
安堵し、車から降りる。
日光が直射後頭部を照り付けた。
剃り上げた頭皮がジリジリ焦げていく。
見下ろすと、満潮の為、奥の砂浜は水没していた。
風が強く、波が岩に打ち付けている。
「今日はこの辺りで焼くか。
流石に奥まで行くのはしんどそうだ。」
「確かにな。
あいつらも躊躇っているぜ。」
ナツキが水没を免れた小さな浜に視線を向けていた。
先に来た数人が荒海に躊躇しているのが見える。
 
「なら、ここで焼くか。
何か、着る物寄越せ。」
ナツキがスパッツを脱ぎ捨てた。
ゴム製のリングで塞き止められたペニスが上を向いている。
バッグの中からラバー製のTバックを出す。
真っ黒に焼けたナツキが穿けば全裸に見えるだろう。
チカラは満面の笑みを浮かべ、それを放り投げた。
「なら、ちょっくら泳いでくるわ。」
ナツキは浜へ続く階段を下りていく。
ブラックラバーと日焼けした筋肉が同化していた。
海を眺めていた男達がナツキに視線を向ける。
一様にフリーズする姿が面白い。
 
『今、ゲイビーチに来てるんだ。
三時迄いるから来ないか?』
セイルにメールを出す。
だが直ぐに返事は来ない。
流石に寝ているだろうと思い、携帯を仕舞う。
一人の男が階段を上がってきた。
サングラスを掛け、口髭を生やしている。
チカラの存在を知って、驚いた様子だ。
レッスンに出た事があるのかもしれない。
不安が過る。
頭を振って、それを追い出す。
こそこそ生きるのは止めた筈だ。
競パンを穿いた男は辺りを見回して、叢の中へ入っていく。
ゲイビーチに来て迄、競パンを穿く奴の気持ちが理解出来ない。
それなら利便の良い一般のビーチで充分ではないか。
自分から一番遠い存在のゲイに思えた。
 
 
(つづく)
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