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Chapter5(奸賊編)
Chapter5-⑫【月夜のロケット花火】前編
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「次ぎはお前の番だ。」
ナツキの持つバリカンが唸る。
「えっ、バリカンなんて、必要ないだろ?」
チカラは一歩後退した。
「お前、馬鹿か?
さっき、毛が邪魔だと言っただろ。
人の話を聞いてんのか。」
「いや、それと、俺がスキンにするのは別だ。
確かにマスクのジッパーを閉める時、髪の毛に絡むけど…。
閉まらない訳じゃないし…。」
チカラの抵抗がトーンダウンしていく。
「つべこべ言わずに、とっとと座れ。
スキンにしたら10倍モテた。
冴えないお前を特別にモテ仕様にしてやる。」
一度言い出したら後には退かない性格だ。
力なく座り込む。
只でさえ、集客が落ち込んでいる。
坊主になったら、それは益々加速するだろう。
だが憧れがあるのも事実だった。
自分からするには抵抗があるが、背中を押され覚悟が決まる。
ナツキの凛々しい面構えを自分に重ねた。
『モテ仕様か…。
もしかすると、ミナトのタイプに近付くかもしてない。』
ナツキが言うと、淡い期待に現実味が帯びる。
「ああ、一気にやってくれ。」
背筋を伸ばし、顔を上げた。
「これが俺か?」
全身無毛の姿を鏡に映し、無性に欲情する。
今迄、閉じ込めていた欲望が一気に解放された。
先の事等どうでも良い。
素性や性癖を隠す必要はもうないのだ。
「どうだ、丸刈りの気分は?」
ナツキが鏡の中に入ってきた。
「おっ、おい!俺の眉毛!」
鏡の中の男二人は揃って眉毛がない。
「親分の俺が眉毛ないのに、舎弟のお前があったら変だろ。」
ナツキがヘッドロックしてきた。
「止せよ。
俺はお前の舎弟になった覚えはないぜ!」
腹の底から笑う。
こんなに愉快な気分になったのは何時以来だろうか。
ホテルの敷地でロケット花火が鳴る。
連射する破裂音が祝砲に思えた。
携帯が鳴った。
「あっ、俺、セイル。」
相手が名乗る。
「おうっ、待ってたぜ。
もう用意出来てるぞ。」
軽やかな気持ちが声にも出た。
「それがさ、日にち間違っててさ、パーティーは明日なんだ。
お前ら、明日もいるだろ?」
「ああ、帰るのは明後日だ。」
「あー、良かった。
じゃあ、明日迎えに行くよ。」
「だったら知り合いを一人呼んでもいいか?」
「構わないよ。
パーティーは多い方が盛り上がるし。」
「じゃあ、明日三人で待ってるぞ。」
携帯を閉じると、じわじわと高揚感が全身に広がる。
楽しみが先延ばしになったが、明日ならミナトは空いていると言っていた。
股を開いたミナトをラバースーツ姿の俺が犯す。
世界中の幸せが自分に押し寄せてきた様だ。
「どうした?」
ナツキが鏡を覗き込み、指で眉毛の痕をなぞる。
「セイルから。
パーティーは明日だってさ。」
「何だよ!折角盛り上がってたのによ!」
「そう、カッカするな。
一日延びただけだ。
まだ明るいし、海に行こうぜ。」
ナツキを宥める。
「晩飯奢ってやるからさ。」
「ちっ、仕方ねぇな。」
奢りの一言でナツキは機嫌を直した。
鏡を見詰め、穏やかな気分に浸る。
『ミナトのタイプになるのはこんなに簡単だったのか。
親分に感謝だな。』
煙草を吹かすナツキにウインクを送った。
(つづく)
ナツキの持つバリカンが唸る。
「えっ、バリカンなんて、必要ないだろ?」
チカラは一歩後退した。
「お前、馬鹿か?
さっき、毛が邪魔だと言っただろ。
人の話を聞いてんのか。」
「いや、それと、俺がスキンにするのは別だ。
確かにマスクのジッパーを閉める時、髪の毛に絡むけど…。
閉まらない訳じゃないし…。」
チカラの抵抗がトーンダウンしていく。
「つべこべ言わずに、とっとと座れ。
スキンにしたら10倍モテた。
冴えないお前を特別にモテ仕様にしてやる。」
一度言い出したら後には退かない性格だ。
力なく座り込む。
只でさえ、集客が落ち込んでいる。
坊主になったら、それは益々加速するだろう。
だが憧れがあるのも事実だった。
自分からするには抵抗があるが、背中を押され覚悟が決まる。
ナツキの凛々しい面構えを自分に重ねた。
『モテ仕様か…。
もしかすると、ミナトのタイプに近付くかもしてない。』
ナツキが言うと、淡い期待に現実味が帯びる。
「ああ、一気にやってくれ。」
背筋を伸ばし、顔を上げた。
「これが俺か?」
全身無毛の姿を鏡に映し、無性に欲情する。
今迄、閉じ込めていた欲望が一気に解放された。
先の事等どうでも良い。
素性や性癖を隠す必要はもうないのだ。
「どうだ、丸刈りの気分は?」
ナツキが鏡の中に入ってきた。
「おっ、おい!俺の眉毛!」
鏡の中の男二人は揃って眉毛がない。
「親分の俺が眉毛ないのに、舎弟のお前があったら変だろ。」
ナツキがヘッドロックしてきた。
「止せよ。
俺はお前の舎弟になった覚えはないぜ!」
腹の底から笑う。
こんなに愉快な気分になったのは何時以来だろうか。
ホテルの敷地でロケット花火が鳴る。
連射する破裂音が祝砲に思えた。
携帯が鳴った。
「あっ、俺、セイル。」
相手が名乗る。
「おうっ、待ってたぜ。
もう用意出来てるぞ。」
軽やかな気持ちが声にも出た。
「それがさ、日にち間違っててさ、パーティーは明日なんだ。
お前ら、明日もいるだろ?」
「ああ、帰るのは明後日だ。」
「あー、良かった。
じゃあ、明日迎えに行くよ。」
「だったら知り合いを一人呼んでもいいか?」
「構わないよ。
パーティーは多い方が盛り上がるし。」
「じゃあ、明日三人で待ってるぞ。」
携帯を閉じると、じわじわと高揚感が全身に広がる。
楽しみが先延ばしになったが、明日ならミナトは空いていると言っていた。
股を開いたミナトをラバースーツ姿の俺が犯す。
世界中の幸せが自分に押し寄せてきた様だ。
「どうした?」
ナツキが鏡を覗き込み、指で眉毛の痕をなぞる。
「セイルから。
パーティーは明日だってさ。」
「何だよ!折角盛り上がってたのによ!」
「そう、カッカするな。
一日延びただけだ。
まだ明るいし、海に行こうぜ。」
ナツキを宥める。
「晩飯奢ってやるからさ。」
「ちっ、仕方ねぇな。」
奢りの一言でナツキは機嫌を直した。
鏡を見詰め、穏やかな気分に浸る。
『ミナトのタイプになるのはこんなに簡単だったのか。
親分に感謝だな。』
煙草を吹かすナツキにウインクを送った。
(つづく)
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