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Chapter4(利達編)
Chapter4-⑪【左胸の勇気】後編
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「折角、東京に来たんだ。
どっか連れて行けよ。」
血行が良くなった所為が、絆創膏が真っ赤に染まる。
「お前さ、鏡見てみろよ。」
うんざりしたタクヤがコウスケを見た。
「クラブは入店チェックがあるから無理だ。
飲み屋は他の客が引くから、入れてくれないだろう。」
コウスケはナツキを見る。
『だったら今日は諦めるか。』
その発言を待つ。
「おい、腹減った。
腹持ちのいいもん頼んでくれ。
それとジョッキ追加だ。」
期待はビールの泡と共に弾けた。
「この顔じゃあ、遠出は無理だな。
道を歩けば、即職質だ。」
タクヤは無理な条件を上積みする。
『やっぱ今日は無理だな。』
その一言はコウスケに言わせたい。
「だったら覆面の発展場にするか。
それだったら何とかなりそうだし。
近所にあったろ?」
コウスケの思いがけない提案にタクヤは膨れっ面をする。
「おっ、それはいい考えだ。
よっしゃ、行くぞ!」
ナツキは届いたばかりの炒飯を勢い良く掻き込んだ。
コウスケに借りた帽子を被って、受付を済ます。
「折角、ハーネス付けてきたんだ。
気合い入るぜ。」
ロッカーでナツキが服を脱ぐ。
「お前、その胸…。」
タクヤはその後に続く言葉が見付からない。
ハーネス姿のナツキは暗い廊下で煙草を吸う。
マスクの中に汗が溜まり、傷口を刺激する。
ズキズキする痛みが生きている事を実感させた。
「お前はもう痛くないんだろ?」
暗闇に問い掛ける。
だが返事はない。
「都合の悪い時は答えないんだな。
折角東京来たんだ。
暫く痛みを止めてくれないか?」
煙草を揉み消すと、カーテンの掛かった部屋に入る。
巨漢が小柄な男に掘られていた。
閉ざされた空間は饐えた臭いで満ちている。
それの発生源はタクヤだと、直ぐに分かった。
居酒屋でもタクヤは雄臭を辺りに漂わせていたからだ。
「おおっ、堪らんぜ。
もっと臭くなれっ!
もっと、もっと雄臭を放て!」
興奮したコウスケの声が部屋に響く。
後を追う様に頬を打つ音が往復する。
貞操具に覆われたペニスが放つ異臭にナツキも欲情した。
ナツキは悶々とした気持ちで部屋を出る。
廊下でまた一本煙草に火を点けた。
吐き出した煙が天井で行き場をなくす。
こんな事ならヒナタを呼び出せば良かったと後悔する。
「うっごぉごぉう。」
タクヤの雄叫びがカーテン越しに聞こえてきた。
「凄い声だな。」
その声に振り返る。
暗闇の中に大きな瞳が浮かんだいた。
「チカラ…。」
見覚えのある瞳に言葉を漏らす。
「久し振りだな。
東京に戻ってきたのか。」
チカラは額に掛けていたゴーグルを下げる。
戦闘開始を合図らしい。
「いや、出張だ。」
「ハーネスした出張なんて、聞いたことないがな。」
チカラは雄叫びの続く部屋へ入っていく。
「お前のゴーグルと同じだ。
これが俺の戦闘態勢だ。」
ナツキも後に続いた。
チカラは喘ぎ狂うタクヤの前に立つ。
丁度タクヤの目の前にコンドームを装着したペニスが聳え立つ格好だ。
タクヤは開き掛けた口を閉じる。
流石にゴムを咥える事に躊躇していた。
(つづく)
どっか連れて行けよ。」
血行が良くなった所為が、絆創膏が真っ赤に染まる。
「お前さ、鏡見てみろよ。」
うんざりしたタクヤがコウスケを見た。
「クラブは入店チェックがあるから無理だ。
飲み屋は他の客が引くから、入れてくれないだろう。」
コウスケはナツキを見る。
『だったら今日は諦めるか。』
その発言を待つ。
「おい、腹減った。
腹持ちのいいもん頼んでくれ。
それとジョッキ追加だ。」
期待はビールの泡と共に弾けた。
「この顔じゃあ、遠出は無理だな。
道を歩けば、即職質だ。」
タクヤは無理な条件を上積みする。
『やっぱ今日は無理だな。』
その一言はコウスケに言わせたい。
「だったら覆面の発展場にするか。
それだったら何とかなりそうだし。
近所にあったろ?」
コウスケの思いがけない提案にタクヤは膨れっ面をする。
「おっ、それはいい考えだ。
よっしゃ、行くぞ!」
ナツキは届いたばかりの炒飯を勢い良く掻き込んだ。
コウスケに借りた帽子を被って、受付を済ます。
「折角、ハーネス付けてきたんだ。
気合い入るぜ。」
ロッカーでナツキが服を脱ぐ。
「お前、その胸…。」
タクヤはその後に続く言葉が見付からない。
ハーネス姿のナツキは暗い廊下で煙草を吸う。
マスクの中に汗が溜まり、傷口を刺激する。
ズキズキする痛みが生きている事を実感させた。
「お前はもう痛くないんだろ?」
暗闇に問い掛ける。
だが返事はない。
「都合の悪い時は答えないんだな。
折角東京来たんだ。
暫く痛みを止めてくれないか?」
煙草を揉み消すと、カーテンの掛かった部屋に入る。
巨漢が小柄な男に掘られていた。
閉ざされた空間は饐えた臭いで満ちている。
それの発生源はタクヤだと、直ぐに分かった。
居酒屋でもタクヤは雄臭を辺りに漂わせていたからだ。
「おおっ、堪らんぜ。
もっと臭くなれっ!
もっと、もっと雄臭を放て!」
興奮したコウスケの声が部屋に響く。
後を追う様に頬を打つ音が往復する。
貞操具に覆われたペニスが放つ異臭にナツキも欲情した。
ナツキは悶々とした気持ちで部屋を出る。
廊下でまた一本煙草に火を点けた。
吐き出した煙が天井で行き場をなくす。
こんな事ならヒナタを呼び出せば良かったと後悔する。
「うっごぉごぉう。」
タクヤの雄叫びがカーテン越しに聞こえてきた。
「凄い声だな。」
その声に振り返る。
暗闇の中に大きな瞳が浮かんだいた。
「チカラ…。」
見覚えのある瞳に言葉を漏らす。
「久し振りだな。
東京に戻ってきたのか。」
チカラは額に掛けていたゴーグルを下げる。
戦闘開始を合図らしい。
「いや、出張だ。」
「ハーネスした出張なんて、聞いたことないがな。」
チカラは雄叫びの続く部屋へ入っていく。
「お前のゴーグルと同じだ。
これが俺の戦闘態勢だ。」
ナツキも後に続いた。
チカラは喘ぎ狂うタクヤの前に立つ。
丁度タクヤの目の前にコンドームを装着したペニスが聳え立つ格好だ。
タクヤは開き掛けた口を閉じる。
流石にゴムを咥える事に躊躇していた。
(つづく)
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