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Chapter4(利達編)
Chapter4-⑥【ひとりよがり】後編
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「まあ、俺が来たんだ。
安心しろ。」
ナツキが胸を叩くと、中嶋はぎこちなく笑う。
「どんな奴だ?」
「年配の方で、真っ黒に焼けています。」
「オネエか?」
「話し口調はそうです。」
その答えからある顔が浮かぶ。
色黒の年配者で、しつこいオネエ…兒玉だ。
ナツキは面倒な奴だと、顔を顰める。
「そろそろ来ると思います。」
落ち着きのない中嶋の視線が入口へ向く。
「朝、何かが置いてあると、昼頃に現れるのです。」
傾向を補足した。
「今日は何が届いてたんだ?」
「これです。」
中嶋が裏返しの写真を差し出す。
ひっくり返したナツキも流石に気分が悪くなる。
干からびた猫の死骸だった。
今にも異臭が漂ってきそうだ。
今日は顔を合わせない方が得策に思えた。
ナツキを見たら、余計に激昂させそうだ。
「俺ば奥にいる。
兎に角、明日責任者が来ると言え。
それ以外、絶対に言うな。」
ナツキはそう言うと、扉に目を向ける。
チャイムが鳴り、来客を知らせた。
「ちょっと、お金は用意出来たの?」
怒声が奥まではっきりと聞こえてくる。
「あっ、明日、責任者が参りますので…。」
中嶋の声は聞き取れない。
「責任者が来れば払うのね?
ここまで来る足代も足して貰うわよ!
何回来たと思ってるの!」
「はっ、はい…。
明日、責任者が…。」
「ちょっとレジの中にお金入っているんでしょ!
今直ぐ払いなさいよ!
明日は用事があって来れないの!
とっとと寄越しなさい!」
一旦引き下がりそうななった児玉が再び捲し立てる。
責任者より、弱腰な中嶋で片を付けるつもりらしい。
「ですから、明日…。」
「だったらその責任者を今、呼びなさい!」
これ以上、中嶋には無理だ。
ナツキは重い腰を上げる。
「責任者が…。」
カウンターに散った唾を見ながら、力なく繰り返す。
傘があれば、さしたいと思う。
『どうして俺がこんな目にあうんだ…。』
毎夜、夢に現れる。
寝るのが怖くなった。
そして実物はもっと怖い。
「ねえ、あんた壊れたレコード?
責任者、責任者って、他のこと言えないの?」
詰め寄られ、視線を上げる。
テカテカに光った赤黒い顔は正に鬼だ。
「おい、ババア、うるせぇぞ!
レコードっていつの時代の話してんだ。」
籠った声に児玉の目線が動く。
DVDラックの奥に覆面を被った男が立っていた。
「あっ、あんた…、誰?」
児玉の言葉が続かない。
「えっ、白昼堂々、恐喝してんのか?」
覆面男が児玉に歩み寄る。
「あんたがここの責任者なの?
非常識な店には非常識な男がいるもんね!
関係ないなら引っ込んでなさい!」
深く息を吸った児玉が一気に捲し立てた。
「そして非常識なババアもな。
俺は単なる通行人だ。
余りのキテレツ振りに、思わず声を掛けちまった訳だ。」
覆面男が睨みを効かした。
「通行人は道を歩くもんよ。
こんな所にはいないわ。」
一歩も退かない児玉が言い返す。
「所が試着してたんだな。」
白いTバックを穿いた覆面男が通路から姿を現した。
(つづく)
安心しろ。」
ナツキが胸を叩くと、中嶋はぎこちなく笑う。
「どんな奴だ?」
「年配の方で、真っ黒に焼けています。」
「オネエか?」
「話し口調はそうです。」
その答えからある顔が浮かぶ。
色黒の年配者で、しつこいオネエ…兒玉だ。
ナツキは面倒な奴だと、顔を顰める。
「そろそろ来ると思います。」
落ち着きのない中嶋の視線が入口へ向く。
「朝、何かが置いてあると、昼頃に現れるのです。」
傾向を補足した。
「今日は何が届いてたんだ?」
「これです。」
中嶋が裏返しの写真を差し出す。
ひっくり返したナツキも流石に気分が悪くなる。
干からびた猫の死骸だった。
今にも異臭が漂ってきそうだ。
今日は顔を合わせない方が得策に思えた。
ナツキを見たら、余計に激昂させそうだ。
「俺ば奥にいる。
兎に角、明日責任者が来ると言え。
それ以外、絶対に言うな。」
ナツキはそう言うと、扉に目を向ける。
チャイムが鳴り、来客を知らせた。
「ちょっと、お金は用意出来たの?」
怒声が奥まではっきりと聞こえてくる。
「あっ、明日、責任者が参りますので…。」
中嶋の声は聞き取れない。
「責任者が来れば払うのね?
ここまで来る足代も足して貰うわよ!
何回来たと思ってるの!」
「はっ、はい…。
明日、責任者が…。」
「ちょっとレジの中にお金入っているんでしょ!
今直ぐ払いなさいよ!
明日は用事があって来れないの!
とっとと寄越しなさい!」
一旦引き下がりそうななった児玉が再び捲し立てる。
責任者より、弱腰な中嶋で片を付けるつもりらしい。
「ですから、明日…。」
「だったらその責任者を今、呼びなさい!」
これ以上、中嶋には無理だ。
ナツキは重い腰を上げる。
「責任者が…。」
カウンターに散った唾を見ながら、力なく繰り返す。
傘があれば、さしたいと思う。
『どうして俺がこんな目にあうんだ…。』
毎夜、夢に現れる。
寝るのが怖くなった。
そして実物はもっと怖い。
「ねえ、あんた壊れたレコード?
責任者、責任者って、他のこと言えないの?」
詰め寄られ、視線を上げる。
テカテカに光った赤黒い顔は正に鬼だ。
「おい、ババア、うるせぇぞ!
レコードっていつの時代の話してんだ。」
籠った声に児玉の目線が動く。
DVDラックの奥に覆面を被った男が立っていた。
「あっ、あんた…、誰?」
児玉の言葉が続かない。
「えっ、白昼堂々、恐喝してんのか?」
覆面男が児玉に歩み寄る。
「あんたがここの責任者なの?
非常識な店には非常識な男がいるもんね!
関係ないなら引っ込んでなさい!」
深く息を吸った児玉が一気に捲し立てた。
「そして非常識なババアもな。
俺は単なる通行人だ。
余りのキテレツ振りに、思わず声を掛けちまった訳だ。」
覆面男が睨みを効かした。
「通行人は道を歩くもんよ。
こんな所にはいないわ。」
一歩も退かない児玉が言い返す。
「所が試着してたんだな。」
白いTバックを穿いた覆面男が通路から姿を現した。
(つづく)
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