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Chapter4(利達編)
Chapter4-⑥【ひとりよがり】前編
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股間を突き出した矢吹がバーを上げる。
歪に盛り上がった股間が一層膨らむ。
ケージを物ともしない興奮が矢吹にパワーを吹き込んでいた。
赤く染まった頬から汗が零れる。
それは自分の推論を証明していた。
この男は頬を張れば張る程、力を出す筈だ。
持ち上がった股間を見て、怒りが収まりつつある。
一層強い欲望が怒りに勝った。
フロントの明かりが点いた。
「早番が出勤したみたいです。
これを外して下さい。」
矢吹が股間を指す。
「それはそのままだ。
俺はこれから10日間東京出張だ。
それを付けたまま気合い入れてトレーニングしておけ。
日増しに雄臭が増していくぞ。」
ナツキはバッグを持つと、シャワー室へ向かう。
「そうだ。
小便はコツを覚えれば、隙間から出来る様になるから安心しろ。」
自分の親切心に感心した。
ナツキはターミナル駅で降りると、指定の改札口へ向かう。
久し振りの東京だ。
明日はタクヤとコウスケと飲む約束をしていた。
とっとと用事を済ませて、残りは休みにするつもりだ。
クレーマー退治など、半日あれば充分だと高を括っていた。
「領収書、領収書、忘れずに。」
呪文の様に繰り返す。
「ナツキさんですか?」
パーカーを目深に被った男が声を掛けてきた。
「お前は?」
訝しげな視線を送る。
「私は店長の中嶋です。
店は歩いて10分程度です。
さあ、こちらへどうぞ。」
中嶋がナツキの鞄を持つ。
店長と言うから、かなり年上を想像していた。
だが目の前を猫背で歩く男はナツキと大差なさそうだ。
店に着いた中嶋がパーカーを取った。
「お前、こんな暑いのに、そんなの被って良く平気だな。」
今日は既に初夏の陽気だ。
「最近、特に嫌がらせが酷くて、いつも見られている気がするんです。」
「嫌がらせって、クレーマーのか?」
「はい…。
次第にエスカレートしてきて、もう気が狂いそうです。」
中嶋の表情から、それが大袈裟な言い回しでない事を知る。
「全身タイツを買われたお客様でした。
翌日、凄い剣幕で来店されました。」
「何が悪かったんだ?」
「指が四本にしか分かれてないと。」
「だったら交換するなり、返金すればいいだろ。」
ナツキは当たり前の対処法を口にする。
「はい、私もそう申したのですが…。」
クレーマーはその全身タイツを着て、イベントに参加したらしい。
そして多くの人の前で、恥を掻いた精神的苦痛を保証しろというのがクレーム内容
だった。
「で、幾ら欲しいと言ってんだ?」
「20万…。」
「2、20万円!
全タイは幾らなんだ?」
声が裏返る。
「5800円です。」
中嶋が申し訳なさそうに言った。
『警察には届けるな。』が神志那の至上命令だった。
世間には知られたくない物も売っている様だ。
「最初はネットへの書き込みがあり、店先に汚物が置いてありました。
次はマネキンの首、そしてネズミの死骸…。
もう私は怖くて、辞めたいと社長には言ったのですが…。」
ナツキはこの仕事が半日で済まない事を察した。
(つづく)
歪に盛り上がった股間が一層膨らむ。
ケージを物ともしない興奮が矢吹にパワーを吹き込んでいた。
赤く染まった頬から汗が零れる。
それは自分の推論を証明していた。
この男は頬を張れば張る程、力を出す筈だ。
持ち上がった股間を見て、怒りが収まりつつある。
一層強い欲望が怒りに勝った。
フロントの明かりが点いた。
「早番が出勤したみたいです。
これを外して下さい。」
矢吹が股間を指す。
「それはそのままだ。
俺はこれから10日間東京出張だ。
それを付けたまま気合い入れてトレーニングしておけ。
日増しに雄臭が増していくぞ。」
ナツキはバッグを持つと、シャワー室へ向かう。
「そうだ。
小便はコツを覚えれば、隙間から出来る様になるから安心しろ。」
自分の親切心に感心した。
ナツキはターミナル駅で降りると、指定の改札口へ向かう。
久し振りの東京だ。
明日はタクヤとコウスケと飲む約束をしていた。
とっとと用事を済ませて、残りは休みにするつもりだ。
クレーマー退治など、半日あれば充分だと高を括っていた。
「領収書、領収書、忘れずに。」
呪文の様に繰り返す。
「ナツキさんですか?」
パーカーを目深に被った男が声を掛けてきた。
「お前は?」
訝しげな視線を送る。
「私は店長の中嶋です。
店は歩いて10分程度です。
さあ、こちらへどうぞ。」
中嶋がナツキの鞄を持つ。
店長と言うから、かなり年上を想像していた。
だが目の前を猫背で歩く男はナツキと大差なさそうだ。
店に着いた中嶋がパーカーを取った。
「お前、こんな暑いのに、そんなの被って良く平気だな。」
今日は既に初夏の陽気だ。
「最近、特に嫌がらせが酷くて、いつも見られている気がするんです。」
「嫌がらせって、クレーマーのか?」
「はい…。
次第にエスカレートしてきて、もう気が狂いそうです。」
中嶋の表情から、それが大袈裟な言い回しでない事を知る。
「全身タイツを買われたお客様でした。
翌日、凄い剣幕で来店されました。」
「何が悪かったんだ?」
「指が四本にしか分かれてないと。」
「だったら交換するなり、返金すればいいだろ。」
ナツキは当たり前の対処法を口にする。
「はい、私もそう申したのですが…。」
クレーマーはその全身タイツを着て、イベントに参加したらしい。
そして多くの人の前で、恥を掻いた精神的苦痛を保証しろというのがクレーム内容
だった。
「で、幾ら欲しいと言ってんだ?」
「20万…。」
「2、20万円!
全タイは幾らなんだ?」
声が裏返る。
「5800円です。」
中嶋が申し訳なさそうに言った。
『警察には届けるな。』が神志那の至上命令だった。
世間には知られたくない物も売っている様だ。
「最初はネットへの書き込みがあり、店先に汚物が置いてありました。
次はマネキンの首、そしてネズミの死骸…。
もう私は怖くて、辞めたいと社長には言ったのですが…。」
ナツキはこの仕事が半日で済まない事を察した。
(つづく)
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