48 / 236
Chapter3(立身編)
Chapter3-④【サヨナラの意味】後編
しおりを挟む
「お前、これで出国出来るのか?」
ナツキの出来上がったばかりのパスポートの写真を見て、タクヤが感想を口にした。
自分で見てもスキンヘッドにラウンド髭の男は人相が悪過ぎる。
「多分だが、平気だろう。」
ナツキも自信がなくなってきた。
「それよりカズユキは本当に旅行行かないのか?
今更、宿どうするんだよ。
おりゃ!」
ブリッジしたタクヤの股間に歪な陰影が浮かぶ。
貞操管理されてるペニスから饐えた臭いが漂った。
「お前こそ、その臭いで、飛行機乗れないじゃねぇか。」
ナツキは自分の鼻を摘まみ、手で扇ぐ真似をする。
「仕方ねぇだろ。
この臭いがコウスケの好物なんだからよぉ!」
潰れかけたタクヤが、気合いでバーを戻した。
「大体、カズユキが怒ってる訳が分からねぇし。
口も利いてくれねぇしよ。」
「お前、本気で言ってるのか?」
「はっ?」
「カズユキが怒ってる理由だよ。
お前の事が好きだからに決まってんだろ。」
「へっ、俺の事を好き?」
ナツキが素っ頓狂な声を出す。
「だから別れるのが寂しんだよ。」
呆れ顔でタクヤが言った。
ナツキは生まれてから、一度も人から好きだと言われた事がない。
パスポートの写真に視線を落とす。
どう見ても人に好かれる面ではない。
逆に整った顔立ちのカズユキは男女から好かれるだろう。
多少のやっかみはあるにしても。
そのカズユキが自分の事を好いてるとは信じ難い。
同じ愛好者だから、一緒にいて楽しい程度だと思っていた。
「きっとカズユキは後悔してる筈だぜ。
残りの日々をケンカで終わらせたくないだろうからな。」
「でも話もしねぇんだよ。
これから帰るのも億劫だ。
今晩、泊めてくんねぇか?」
ナツキは両手を合わせる。
「あー、無理無理!
今夜はコウスケが来んだ。」
「別にお前らの交尾なんて興味深いねぇから、気にすんな。」
「馬鹿か。
俺が気にするよ。
口を利かないなら、身体に利かせればいいのさ。」
タクヤがニヤリと笑う。
「そういう時はな、こうするのさ。」
起き上がったタクヤの唇がナツキの口を塞ぐ。
驚いたナツキは見開いた瞳でタクヤを見るだけだった。
家に戻ると、電気は消えていた。
カズユキはまだ戻ってない様だ。
タクヤの考えたサプライズの準備をする。
「これでカズユキの機嫌は一発で直るぜ。」
その言葉を思い出し、苦笑いした。
終電を過ぎたが、カズユキは戻ってこない。
こんな事は一度もなかった。
携帯でカズユキを呼び出してみる。
意外と簡単に繋がった。
「あっ、俺。
悪かったな。
まさか帰ってこねぇつもりじゃねぇだろ?」
ナツキは堰が切れた如く話し出す。
「あの、こちらの携帯電話の持ち主のお知り合いですか?」
聞き覚えのない女性の声が返ってきた。
「あっ、はい。
同居している者ですが…。」
「あの、こちらの持ち主の方が交通事故に遭いまして…。
至急、病院に来てもらえますか。」
予想だにしない話にナツキは携帯を落とす。
「もしもし、聞こえてますか?
病院の場所は…。」
落ちた携帯から漏れる声が現実とは思えなかった。
(つづく)
ナツキの出来上がったばかりのパスポートの写真を見て、タクヤが感想を口にした。
自分で見てもスキンヘッドにラウンド髭の男は人相が悪過ぎる。
「多分だが、平気だろう。」
ナツキも自信がなくなってきた。
「それよりカズユキは本当に旅行行かないのか?
今更、宿どうするんだよ。
おりゃ!」
ブリッジしたタクヤの股間に歪な陰影が浮かぶ。
貞操管理されてるペニスから饐えた臭いが漂った。
「お前こそ、その臭いで、飛行機乗れないじゃねぇか。」
ナツキは自分の鼻を摘まみ、手で扇ぐ真似をする。
「仕方ねぇだろ。
この臭いがコウスケの好物なんだからよぉ!」
潰れかけたタクヤが、気合いでバーを戻した。
「大体、カズユキが怒ってる訳が分からねぇし。
口も利いてくれねぇしよ。」
「お前、本気で言ってるのか?」
「はっ?」
「カズユキが怒ってる理由だよ。
お前の事が好きだからに決まってんだろ。」
「へっ、俺の事を好き?」
ナツキが素っ頓狂な声を出す。
「だから別れるのが寂しんだよ。」
呆れ顔でタクヤが言った。
ナツキは生まれてから、一度も人から好きだと言われた事がない。
パスポートの写真に視線を落とす。
どう見ても人に好かれる面ではない。
逆に整った顔立ちのカズユキは男女から好かれるだろう。
多少のやっかみはあるにしても。
そのカズユキが自分の事を好いてるとは信じ難い。
同じ愛好者だから、一緒にいて楽しい程度だと思っていた。
「きっとカズユキは後悔してる筈だぜ。
残りの日々をケンカで終わらせたくないだろうからな。」
「でも話もしねぇんだよ。
これから帰るのも億劫だ。
今晩、泊めてくんねぇか?」
ナツキは両手を合わせる。
「あー、無理無理!
今夜はコウスケが来んだ。」
「別にお前らの交尾なんて興味深いねぇから、気にすんな。」
「馬鹿か。
俺が気にするよ。
口を利かないなら、身体に利かせればいいのさ。」
タクヤがニヤリと笑う。
「そういう時はな、こうするのさ。」
起き上がったタクヤの唇がナツキの口を塞ぐ。
驚いたナツキは見開いた瞳でタクヤを見るだけだった。
家に戻ると、電気は消えていた。
カズユキはまだ戻ってない様だ。
タクヤの考えたサプライズの準備をする。
「これでカズユキの機嫌は一発で直るぜ。」
その言葉を思い出し、苦笑いした。
終電を過ぎたが、カズユキは戻ってこない。
こんな事は一度もなかった。
携帯でカズユキを呼び出してみる。
意外と簡単に繋がった。
「あっ、俺。
悪かったな。
まさか帰ってこねぇつもりじゃねぇだろ?」
ナツキは堰が切れた如く話し出す。
「あの、こちらの携帯電話の持ち主のお知り合いですか?」
聞き覚えのない女性の声が返ってきた。
「あっ、はい。
同居している者ですが…。」
「あの、こちらの持ち主の方が交通事故に遭いまして…。
至急、病院に来てもらえますか。」
予想だにしない話にナツキは携帯を落とす。
「もしもし、聞こえてますか?
病院の場所は…。」
落ちた携帯から漏れる声が現実とは思えなかった。
(つづく)
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説




体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる