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Chapter3(立身編)
Chapter3-④【サヨナラの意味】前編
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「筋肉を監禁って、どういう意味っすか?」
ナツキは振り返り、初めて神志那の顔を見る。
神志那の開いた口がそのまま固まった。
ラバーのマスクが精強な男をフリーズさせる。
「どうすっか?
アメリカ土産に貰ったんすけど。」
ナツキは目の前で拳を作ると、そこへ舌を伸ばす。
「見込みがあるとは思ったが、ここまで素質があるとはな…。」
開いたまま口がやっと言葉を吐き出した。
神志那は闇の中、腕を組んで瞳を閉じる。
思考を整理している様子だ。
『もう一息だ。』
ナツキは口のジッパーをゆっくり閉める。
閉ざされた口から空気が吸えなくなり、音を立てを激しく鼻呼吸をした。
闇が部屋を支配する。
シルエットとなった神志那が大きく息を吐き出した。
静まり返った部屋に存在するのは荒い呼吸音だけだ。
頭の中で、台詞を繰り返す。
唇が動かないので、多少噛んでも大丈夫そうだ。
次の発言を待つ。
「ラバーマスクは気に入ったのか?
息苦しいだろ?」
白い歯だけが闇に浮かぶ。
『苦しいだろ?』
想定通りの質問だ。
「めちゃ気に入ってるっす。
一時も外したくないくらいに。
勿論、苦しいっすよ。
締め技、食らってるみたく。
でもそれが気持ちいいんすよ。
生きてる事が犇々と感じられて、チンコがギンギンになるんす。
俺って、おかしいっすか?」
練習した台詞を一気に捲し立てる。
籠った声は他人の物の様だ。
「お前、名古屋に来ないか?
俺が面倒みてやる。」
長い沈黙の後、神志那が言った。
「それって、仕事の面倒って事っすか?」
「そうだ、俺の秘書だ。」
「それは嬉しい誘いっすけど、俺にも東京の生活があるんすよ。」
ナツキは勿体付けて答える。
「何が望みだ?」
「別に望みはないっすよ。
ただ一つだけ条件が、いやお願いがあります。」
ナツキは真っ直ぐ神志那を見る。
後は正直に言うだけだ。
「えー、名古屋へ行っちゃうの!」
カズユキが大声をあげた。
「何時までも、ここに居候する訳にはいかねぇだろ。
お前も集中して勉強出来ねぇし。」
「そんなの絶対嫌だよ。
集中したかったら大学や図書館でしてくるし。
ナッキーはずっと、ここにいていいんだよ。」
カズユキの瞳に涙が溜まる。
「おいおい、別に遠くに行く訳じゃあるまいし。
大袈裟だな。
深夜バスに乗れば、名古屋なんか直ぐだぞ。」
カズユキのリアクションにナツキは狼狽える。
何故、泣くのか理由が分からない。
「いつから?」
「来月からだ。」
「来月って、もう二週間しかないじゃん!
もう、勝手にすればいいよ!」
ドアがバタンと閉じ、カズユキが出ていった。
ここを出ていくと言えば、カズユキは精々すると思っていた。
金は一切渡しておらず、出ていく事に何の負担もない筈だ。
逆に食費や光熱費は浮くだろう。
だが予想とは全く逆の反応だった。
「良く分かんねぇな。」
ナツキは呟くと、カミソリを頭に当てる。
これからする事が山程あった。
(つづく)
ナツキは振り返り、初めて神志那の顔を見る。
神志那の開いた口がそのまま固まった。
ラバーのマスクが精強な男をフリーズさせる。
「どうすっか?
アメリカ土産に貰ったんすけど。」
ナツキは目の前で拳を作ると、そこへ舌を伸ばす。
「見込みがあるとは思ったが、ここまで素質があるとはな…。」
開いたまま口がやっと言葉を吐き出した。
神志那は闇の中、腕を組んで瞳を閉じる。
思考を整理している様子だ。
『もう一息だ。』
ナツキは口のジッパーをゆっくり閉める。
閉ざされた口から空気が吸えなくなり、音を立てを激しく鼻呼吸をした。
闇が部屋を支配する。
シルエットとなった神志那が大きく息を吐き出した。
静まり返った部屋に存在するのは荒い呼吸音だけだ。
頭の中で、台詞を繰り返す。
唇が動かないので、多少噛んでも大丈夫そうだ。
次の発言を待つ。
「ラバーマスクは気に入ったのか?
息苦しいだろ?」
白い歯だけが闇に浮かぶ。
『苦しいだろ?』
想定通りの質問だ。
「めちゃ気に入ってるっす。
一時も外したくないくらいに。
勿論、苦しいっすよ。
締め技、食らってるみたく。
でもそれが気持ちいいんすよ。
生きてる事が犇々と感じられて、チンコがギンギンになるんす。
俺って、おかしいっすか?」
練習した台詞を一気に捲し立てる。
籠った声は他人の物の様だ。
「お前、名古屋に来ないか?
俺が面倒みてやる。」
長い沈黙の後、神志那が言った。
「それって、仕事の面倒って事っすか?」
「そうだ、俺の秘書だ。」
「それは嬉しい誘いっすけど、俺にも東京の生活があるんすよ。」
ナツキは勿体付けて答える。
「何が望みだ?」
「別に望みはないっすよ。
ただ一つだけ条件が、いやお願いがあります。」
ナツキは真っ直ぐ神志那を見る。
後は正直に言うだけだ。
「えー、名古屋へ行っちゃうの!」
カズユキが大声をあげた。
「何時までも、ここに居候する訳にはいかねぇだろ。
お前も集中して勉強出来ねぇし。」
「そんなの絶対嫌だよ。
集中したかったら大学や図書館でしてくるし。
ナッキーはずっと、ここにいていいんだよ。」
カズユキの瞳に涙が溜まる。
「おいおい、別に遠くに行く訳じゃあるまいし。
大袈裟だな。
深夜バスに乗れば、名古屋なんか直ぐだぞ。」
カズユキのリアクションにナツキは狼狽える。
何故、泣くのか理由が分からない。
「いつから?」
「来月からだ。」
「来月って、もう二週間しかないじゃん!
もう、勝手にすればいいよ!」
ドアがバタンと閉じ、カズユキが出ていった。
ここを出ていくと言えば、カズユキは精々すると思っていた。
金は一切渡しておらず、出ていく事に何の負担もない筈だ。
逆に食費や光熱費は浮くだろう。
だが予想とは全く逆の反応だった。
「良く分かんねぇな。」
ナツキは呟くと、カミソリを頭に当てる。
これからする事が山程あった。
(つづく)
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