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Chapter2(復讐編)
Chapter2-⑩【Love, Day After Tomorrow】前編
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「ご無沙汰してます。
あれっ、随分切っちゃったんすね、髪の毛。」
前に勤めていたジムで受付をしているユウコに呼び出されて、居酒屋で待ち合わせを
していた。
「まあ心機一転、気分転換かな。」
ユウコは取って付けた様な理由を言う。
「あれっ、先輩は?」
四人掛けのテーブルに1人座っているユウコに聞く。
「シンちゃんとの待ち合わせは一時間後なの。
その前にナツキ君に相談があって…。」
快活なユウコにしては歯切れが悪い。
「吸収合併の事っすか?」
ナツキは座りながら聞いてみた。
「何で、知ってるの?
まだオフレコで、一部の社員しか知らないのに。」
驚いたユウコが目を丸くする。
「俺って、意外と情報通なんすよ。」
ナツキは笑って誤魔化す。
ユウコは納得が行かない様子だが、本題に入った。
「シンちゃん、もう直ぐ結婚するらしいの。
君も式に呼ぶって、喜んでたわ。」
目出度い話の割りにユウコの表情は冴えない。
「だったら二次会の相談すか?
先輩の二次会だったら一杯集まりそうっすね。
会員のおばちゃん達も挙って来そうだし。」
「違うの。実はその合併の際の移動メンバーにシンちゃんが入っているのよ。」
やっとユウコの曇りがちな表情の意味が分かった。
「でも、そんな話じゃ、俺は役に立たないっすよ。」
ナツキは煙草のフィルターをテーブルで叩きながら言った。
「吸ってもいいっすか?」
その問いにユウコは頷く。
「それが君じゃないと駄目なのよ。
向こうの社長は君の知ってる人なの。」
ユウコの言ってる意味が理解出来ない。
そんな大層な知り合いなど心当たりがない。
「へっ、俺の知ってる人?」
今度はナツキがきょとんとして聞き返す。
「そう、君の知ってる人。
内のジムにもちょくちょく顔を出してた神志那さんを覚えてる?」
ナツキはその名前を聞いて、煙草を折ってしまった。
「強面のあの人と、君だけは良く話してたと聞いたわ。
あの人と仲良く話したスタッフは後にも先にも君だけと。
連絡先知ってる?」
ユウコの視線がナツキに突き刺さる。
「何回か飲みに行ったんで、電話番号は聞いたっすけど…。」
ここで嘘を言っても仕方ない。
正直に告げる。
但し、名古屋に行った件は伏せて話す。
「ねぇ、コンタクト取って、シンちゃんを移動メンバーから外す様に頼んでくれな
い。
新婚早々単身赴任じゃ、可哀想でしょ。
下手すると、破談になるかもしれないし。
ねぇ、お願い!」
ユウコが顔の前で両手を合わせた。
『地方店舗に追いやられて、自分から辞めるの待つ。』
チカラの言葉が頭を掠める。
同僚の為にこんなに奔走するものだろうかと、ナツキは不思議に思う。
「もしかしてユウコさんは先輩の事、好き…。」
「違うわ!」
言い終わる前にユウコは否定した。
余りの語尾の強さに本人も驚いている。
「違うの…。
シンちゃんと私は同期なの。
沢山いた同期も、もう二人だけになったわ。
だから彼には私達の代表として頑張って欲しいのよ。
92年入社がいた証として。」
今度はゆっくりと話す。
だがその説明が本心でない事は、鈍感なナツキでも分かった。
(つづく)
あれっ、随分切っちゃったんすね、髪の毛。」
前に勤めていたジムで受付をしているユウコに呼び出されて、居酒屋で待ち合わせを
していた。
「まあ心機一転、気分転換かな。」
ユウコは取って付けた様な理由を言う。
「あれっ、先輩は?」
四人掛けのテーブルに1人座っているユウコに聞く。
「シンちゃんとの待ち合わせは一時間後なの。
その前にナツキ君に相談があって…。」
快活なユウコにしては歯切れが悪い。
「吸収合併の事っすか?」
ナツキは座りながら聞いてみた。
「何で、知ってるの?
まだオフレコで、一部の社員しか知らないのに。」
驚いたユウコが目を丸くする。
「俺って、意外と情報通なんすよ。」
ナツキは笑って誤魔化す。
ユウコは納得が行かない様子だが、本題に入った。
「シンちゃん、もう直ぐ結婚するらしいの。
君も式に呼ぶって、喜んでたわ。」
目出度い話の割りにユウコの表情は冴えない。
「だったら二次会の相談すか?
先輩の二次会だったら一杯集まりそうっすね。
会員のおばちゃん達も挙って来そうだし。」
「違うの。実はその合併の際の移動メンバーにシンちゃんが入っているのよ。」
やっとユウコの曇りがちな表情の意味が分かった。
「でも、そんな話じゃ、俺は役に立たないっすよ。」
ナツキは煙草のフィルターをテーブルで叩きながら言った。
「吸ってもいいっすか?」
その問いにユウコは頷く。
「それが君じゃないと駄目なのよ。
向こうの社長は君の知ってる人なの。」
ユウコの言ってる意味が理解出来ない。
そんな大層な知り合いなど心当たりがない。
「へっ、俺の知ってる人?」
今度はナツキがきょとんとして聞き返す。
「そう、君の知ってる人。
内のジムにもちょくちょく顔を出してた神志那さんを覚えてる?」
ナツキはその名前を聞いて、煙草を折ってしまった。
「強面のあの人と、君だけは良く話してたと聞いたわ。
あの人と仲良く話したスタッフは後にも先にも君だけと。
連絡先知ってる?」
ユウコの視線がナツキに突き刺さる。
「何回か飲みに行ったんで、電話番号は聞いたっすけど…。」
ここで嘘を言っても仕方ない。
正直に告げる。
但し、名古屋に行った件は伏せて話す。
「ねぇ、コンタクト取って、シンちゃんを移動メンバーから外す様に頼んでくれな
い。
新婚早々単身赴任じゃ、可哀想でしょ。
下手すると、破談になるかもしれないし。
ねぇ、お願い!」
ユウコが顔の前で両手を合わせた。
『地方店舗に追いやられて、自分から辞めるの待つ。』
チカラの言葉が頭を掠める。
同僚の為にこんなに奔走するものだろうかと、ナツキは不思議に思う。
「もしかしてユウコさんは先輩の事、好き…。」
「違うわ!」
言い終わる前にユウコは否定した。
余りの語尾の強さに本人も驚いている。
「違うの…。
シンちゃんと私は同期なの。
沢山いた同期も、もう二人だけになったわ。
だから彼には私達の代表として頑張って欲しいのよ。
92年入社がいた証として。」
今度はゆっくりと話す。
だがその説明が本心でない事は、鈍感なナツキでも分かった。
(つづく)
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