妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

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Chapter2(復讐編)

Chapter2-⑦【夏の王様】後編

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「じゃあ、またジムでな。」
タクヤは自転車に跨がると、手を上げた。
「お前もレポート出したら、ガンガン鍛えてやる。
覚悟しておけ。
セブに行く頃には一端のマッチョにしてやる。」
手を後頭部で組んだナツキとそぞろ歩く。
タクヤの射精を見た所為で、身体が火照っていた。
「だったら交換条件しない?
ボクは頑張って筋トレに取り組むよ。
言われた通り、ゲインプロテインも飲むし。
その代わりにナッキーは…。」
カズユキはそこで言葉を止める。
「代わりに何だ?」
ナツキが顔を覗き込んだ。
「代わりにナッキーの身体を改造したいんだ。」
ファミレスで思い付いた願望を口にする。
「もっと筋肉を付けろってか。
ああ、望むところだ。」
分厚い胸を叩く。
「いや、違うんだ。
ボクがナッキーを理想の身体にプロデュースしたいんだ。
ねっ、いいねしょ?」
逆にナツキの顔を覗き込む。
「良く分からねぇが、お前の望みを聞けばいいんだな。
分かった、分かった、何でもしてやるさ。
だから少しでも安い航空機チケット探しておけ。」
ナツキは意味が分からぬまま同意した。
「じゃあ、約束だよ。」
カズユキは小指を絡める。
「指切りげんまん、嘘吐いたら…。」
 
朝、ナツキはシェービングクリームを顔に塗り、T型のカミソリに手を伸ばす。
だがいつもの場所には何もない。
「おいっ、俺のカミソリ知らねぇか?」
朝食の用意をしているカズユキに声を掛ける。
「必要ないから捨てたよ。」
カズユキがフライパンを返しながら答えた。
「あのな、捨てたって…。
なら俺の髭はどうするんだ?」
呆れ顔で聞き返す。
「昨日、ボクがナッキーをプロデュースするって、約束したじゃん。
食べ終わったら、ボクが剃ってあげる。
早く顔を洗ってきなよ。」
カズユキの言葉に舌打ちすると、ナツキは洗面台のシャワーに頭を突っ込んだ。
 
バリカンのモーター音が激しく唸る。
皮膚に当たる感触が高校時代を想起させた。
部員同士で五厘に刈っていたのだ。
新聞紙の上に髪が積もっていく。
今時、五厘刈りなど、滅多に見掛けない。
『唯我独尊』高校時代の監督がよく口にしていた。
「他人を真似るな。
自分の頭で考えろ。」
ナツキはその言葉を呟く。
町中がベッカムの髪型を真似る男で溢れている。
『俺は五厘が合ってるんだ。』
そんな昔話を思い出しながら、船を濃ぎだした。
 
「出来たよ。」
頭を叩かれ目を覚ます。
辺りは毛髪で溢れていた。
「随分、大胆に刈ったな。」
ナツキは掌で頭を撫でる。
「へっ…。」
全く抵抗がない。
ザラザラするどころか、ツルツルだ。
「お前っ…。」
慌てて風呂場の鏡の前に立つ。
目を見開いたスキンヘッドの男が映る。
生え揃ってないラウンド髭と共にジダンを連想させた。
「おいっ!担いだな!」
大声を出しながら、キッチンに戻る。
「おおっ、めちゃ人相悪ぅ!」
ニヤニヤしたカズユキがデジカメを向けた。
「序でにチン毛も剃っておいたから。」
その言葉に面食らったナツキはジャージに手を突っ込んだ。
 
 
(つづく)
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