妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

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Chapter2(復讐編)

Chapter2-④【Lifetime Respect】前編

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ナツキは神志那の出張の度に縛りの他、格闘のスキルを教わった。
「やれば、やり返してくる奴もいる。
そいつらを返り討ちにするには格闘のスキルが必要だ。
お前はセンスはいいが、知識がない。
無知は負けに繋がる。」
神志那が分かり易く説明する。
「格闘技ならテレビで見てるぜ。」
「格闘と格闘技は違う。
格闘にルールはない。
如何に早く相手を倒すかだ。」
即座に否定された。
「そりゃ、瞬殺出来たら楽だけどよ。
どうやって?」
「簡単だ、ルールを逆手に取ればいい。」
「と言うと?」
「禁止事項をやればいいんだ。
目潰し、脛椎絞め、危険な関節技、そして金玉だ。」
神志那がにやりと笑う。
ナツキの得意技の腕挫腋固めも、立ち技からの仕掛けは禁止となっている。
それだけ危険という事だ。
「一発で仕留め、戦意を奪っちまうんだな。」
「そうだ、ルールのない格闘は一発必中が絶対だ。
急所を確実に突け。
闇雲に打ち出すパンチなど無意味だ。
先手必勝、それで全てを終わらせる。
それをしっかり頭に叩き込んでおけ。」
神志那の言葉を思い出す。
 
シゲルは一発で仕留めた。
次は巨漢のゴロウだ。
動きは鈍いが打たれ強い。
巨体が闘牛の如く突進してきた。
寸前の所でナツキは尻餅を搗く。
大きな身体が覆い被さってくる。
『急所を確実に突け。』
高く上げた右足で喉仏を狙う。
案の定、俊敏さは微塵もない。
喉を押さえて、巨体が沈んだ。
 
「この野郎!」
ユズルが立ち上がりかけたナツキの鳩尾を狙ってきた。
「もう許して下さい。」
言葉とは裏腹にナツキは微笑む。
分かり易い攻撃パターンに思わず笑ってしまう。
神志那の言っていた格闘と格闘技の違いだ。
格闘の経験のない男など子供を相手にするのと変わらない。
『闇雲に打ち出すパンチなど無意味だ。』
パンチを躱し、伸びた腕に飛び掛かる。
蹴り上げた右脚を首に掛け、腕を取った。
勢い余って二人は倒れ込む。
だがナツキはその腕を離さず、関節とは逆の方向に伸ばす。
駆け寄ってくるシンゴが視界に入る。
タイムリミットだ。
躊躇する事なく、全体重を腕に掛けた。
 
「こっ、怖かったんです。
兎に角、怖くて、無我夢中で、良く覚えてないです。」
警察の事情聴取に答えながら、本当に涙が出てきた事に自分でも驚いた。
「誰も助けてくれなくて…。」
ここがポイントだ。
強く睾丸を握り、身体を揺らしてみせる。
「俺がもっと早く駆け付ければ、こんな事にならなかったのに。
すまん。」
神妙な表情のシンゴが頭を下げる。
過剰防衛が疑われたが、証人全員が被害者達の非を訴えた。
「それにしても、三人共病院送りにするとはな…。」
年配の警官はすっきりしない様子だ。
駆け付けた宮脇が柔道部での経緯を話してくれた。
これが駄目押しになる。
被害者から二度も靭帯を損傷された過去が心証を得るのに役立つ。
「また大怪我するのが怖かったんです。」
握力を強めると、身体は大きく揺れた。
 
 
(つづく)
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