妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

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Chapter1(立志編)

Chapter1-⑤【BE TOGETHER】後編

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帰り道、自然と口笛が衝いて出た。
犬のおまわりさんのメロディーだ。
「ワン、ワン、ワン、ワン!」
最後は声に出して歌う。
思わずスキップでもしたくなる気分だった。
駅へ向かう商店街に入る。
冷たい北風が襲ってきた。
口笛が止まる。
古傷が陽気な気分に水を差す。
寒い季節になると、肘の内側がズキズキ痛んだ。
「あの野郎!」
一人の男の顔が浮かぶ。
稽古中に二度もナツキの靭帯を切った男だ。
一学年上のユズルだった。
ナツキが入部してから、ユズルは代表から漏れた。
最初の乱取りで怪我した時は単に不運だと思った。
だが二度目は違う。
寝技中に畳を叩くナツキを無視して、体重を預けてきたのだ。
「目障りなんだよ。」
その声と靭帯の切れる音が同時に聞こえた。
 
コーチの調査では三年全員が口裏を合わせた。
「我慢しないで、畳を叩けば良かったんだよな。」
「あいつ、一年で代表になったから、天狗になってたんすよ。」
「プライド高いから、敗けを認めたくなかったんじゃないっすか?」
一年、二年生で先輩に楯突いて、真実を伝える者はいない。
結局、ユズルはお咎めなしで、その後代表に復帰した。
ナツキは顔を顰めて、北風に向かう。
『絶対に後悔させてやる。』
そう思う事で、痛みが和らぐ気がした。
 
明け方、腕の痛みで目が覚める。
バイトで疲れている筈だが、眠気は再び訪れてこない。
股間に手を伸ばすと、勃起したマラが放出を望んでいる。
今迄なら、機械的に自慰をすれば性的欲求は治まった。
だがより快感を伴う射精方法を知ってしまった身体は自慰を拒んだ。
無性に穴が欲しい。
「くそっ!」
布団から起き上がる。
苛立ちと性欲がナツキを駆り立てた。
ボロアパートは室内でも息が白い。
ジムへ行く事を思い立つ。
カズユキの部屋から着てきたタイトなウェアに身を包み、アパートを出る。
ジムまで二駅だが、始発はまだ動いてない。
寒い改札で始発を待つ位なら、走る事を選択した。
 
「おはようございます。」
ナツキはフロントのユウコに挨拶する。
「おはよう。随分、早いのね。」
髪の毛の掛かった目が見開く。
「初めての早番だから、早めに起きたんで…。」
ユウコの視線が股間に留まっている事に気付く。
ナツキは態と亀頭を膨らませる。
フリーズするユウコが滑稽に見えた。
 
スタッフルームで着替えていると、携帯が鳴った。
メールの着信を伝える音だ。
送信主はカズユキだった。
少し調子にのり過ぎた事を思い出し、メールを開くのが億劫だ。
『昨日のプレイはマジ凄かった。
あんなノリは初めて。
ずっと興奮しっぱなしで、寝れないんだ。
次、いつ会える?
早く会いたいんだ。
また小便ぶち込んで。』
予想外の内容に呆れる。
やり過ぎて嫌われたシンゴが哀れに思えた。
『ゲイの世界にはやり過ぎって、ねぇんだな。』
ナツキはひとつ学習する。
『だったらバイトが終わったら、躾に行ってやる。
犬の格好して待ってろ。』
送信ボタンを押すと、意気揚々とトレーニングエリアへ向かった。
 
 
(つづく)
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