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Chapter1(立志編)
Chapter1-②【Breakin' out to the morning】後編
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「いい事教えてやるよ。
只でここを使う方法だ。」
シンゴが耳元で囁く。
「そんな旨い方法があるっすか?」
ナツキはその言葉に食い付く。
「ああ、簡単さ。
ここでバイトすればいいのさ。」
満面の笑顔がウィンクした。
「今日からお世話になるタジマ ナツキです。
宜しくお願いします!」
余りの大声に女性スタッフが苦笑いした。
「まあ、そんなに気張るな。
当面、俺が面倒見てやる。
先ずは便所掃除からだ。」
シンゴはゴム手袋を持つと、先陣を切った。
「便所の汚いジムに人は来ない。
しっかり掃除して、ピカピカにしろ。」
ブラシを持ったシンゴが力任せに便器を擦る。
「ちょっと貸してもらうっすよ。」
ブラシを奪い取ると、上原のおばちゃんから習ったテクニックを披露した。
黄ばみ、黒ずみが落ちていく。
「これでクエン酸があれば、もっとピカピカになるんだけどな。
ないっすよね?」
「お前、凄いな…。
今度、買っておく…。」
きょとんとした顔が便器を見詰める。
「じゃあ、残りやっておくっす。」
エアコンの効いた便所の掃除は楽だった。
沖縄の悪環境のバイトに比べたら、正に天国だ。
「先ずは会員に顔を売るんだ。
元気に挨拶する。
そして名前を言って、話し掛けろ。」
シンゴの助言はこれだけだった。
ナツキはジム内を歩き回る。
離れ場所でシンゴが見ていた。
「こんにちは。
新しく入りましタジマ ナツキです。
分からない事があったら、何でも聞いて下さい。」
物怖じしないナツキは次々に声を掛けていく。
強面のルックスが災いして、女性会員は早々に去ってしまう。
だが男性会員には受けがいい。
「ナツキ君、ありがとう。
助かったよ。
また明日も補助を頼むよ。」
サポートを終えた年配者がにこやかに手を差し出してきた。
「次回はウェイトを増やしてみましょう。」
ナツキも満足げにその手を握る。
コンビニのバイトに比べると、充実感があった。
ナツキは次の会員へ声を掛けに行く。
スタッフルームに入っていくと、パーテーションの奥から小声が聞こえてきた。
「本当にゴメン。
あん時は酔っぱらってただけなんだ。」
シンゴの声だ。
「違う、そんな性癖がある訳じゃないんだ。
神様に誓ってもいいぜ。
信じてくれよぉ。」
懇願する声を聞いてナツキは引き返そうと、ドアノブを押す。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ…。
人が来たみたいだ。
後で掛け直す。」
電話を切った様子だ。
「何だ、お前か。
聞いてたのか?」
パーテーションから出てきたシンゴが声を掛けてきた。
「あっ、すいません。
別に聞く気はなかったんすけど…。」
気まずさに語尾を濁す。
「ちょい彼女とケンカしちまってな。」
シンゴが頭を掻く。
「何をしたんすか?
性癖がどうのこうのと言ってたけど。」
気になった所を聞いてみる。
「誰にも言うなよ。」
シンゴはドアに目線を向けて、声を潜めた。
ナツキは大きく頷く。
「酔ったら勢いで、嫌がる彼女なアナル、まあ肛門だ。
そこを犯しちゃったんだ。」
シンゴがニヤニヤ笑う。
「こっ、肛門っすか?」
思わず大きな声が出てしまう。
「ばっ、馬鹿、声がデケェよ。
俺って、性欲強いんだよな。
普通のセックスじゃ、物足りねぇんだ。」
シンゴの思わぬ告白に返す言葉が見付からない。
「今日はコンビニのバイトないだろ。
よしっ、終わったら飲みに行くぞ。」
シンゴは勝手に決めると、部屋を出て言った。
(つづく)
只でここを使う方法だ。」
シンゴが耳元で囁く。
「そんな旨い方法があるっすか?」
ナツキはその言葉に食い付く。
「ああ、簡単さ。
ここでバイトすればいいのさ。」
満面の笑顔がウィンクした。
「今日からお世話になるタジマ ナツキです。
宜しくお願いします!」
余りの大声に女性スタッフが苦笑いした。
「まあ、そんなに気張るな。
当面、俺が面倒見てやる。
先ずは便所掃除からだ。」
シンゴはゴム手袋を持つと、先陣を切った。
「便所の汚いジムに人は来ない。
しっかり掃除して、ピカピカにしろ。」
ブラシを持ったシンゴが力任せに便器を擦る。
「ちょっと貸してもらうっすよ。」
ブラシを奪い取ると、上原のおばちゃんから習ったテクニックを披露した。
黄ばみ、黒ずみが落ちていく。
「これでクエン酸があれば、もっとピカピカになるんだけどな。
ないっすよね?」
「お前、凄いな…。
今度、買っておく…。」
きょとんとした顔が便器を見詰める。
「じゃあ、残りやっておくっす。」
エアコンの効いた便所の掃除は楽だった。
沖縄の悪環境のバイトに比べたら、正に天国だ。
「先ずは会員に顔を売るんだ。
元気に挨拶する。
そして名前を言って、話し掛けろ。」
シンゴの助言はこれだけだった。
ナツキはジム内を歩き回る。
離れ場所でシンゴが見ていた。
「こんにちは。
新しく入りましタジマ ナツキです。
分からない事があったら、何でも聞いて下さい。」
物怖じしないナツキは次々に声を掛けていく。
強面のルックスが災いして、女性会員は早々に去ってしまう。
だが男性会員には受けがいい。
「ナツキ君、ありがとう。
助かったよ。
また明日も補助を頼むよ。」
サポートを終えた年配者がにこやかに手を差し出してきた。
「次回はウェイトを増やしてみましょう。」
ナツキも満足げにその手を握る。
コンビニのバイトに比べると、充実感があった。
ナツキは次の会員へ声を掛けに行く。
スタッフルームに入っていくと、パーテーションの奥から小声が聞こえてきた。
「本当にゴメン。
あん時は酔っぱらってただけなんだ。」
シンゴの声だ。
「違う、そんな性癖がある訳じゃないんだ。
神様に誓ってもいいぜ。
信じてくれよぉ。」
懇願する声を聞いてナツキは引き返そうと、ドアノブを押す。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ…。
人が来たみたいだ。
後で掛け直す。」
電話を切った様子だ。
「何だ、お前か。
聞いてたのか?」
パーテーションから出てきたシンゴが声を掛けてきた。
「あっ、すいません。
別に聞く気はなかったんすけど…。」
気まずさに語尾を濁す。
「ちょい彼女とケンカしちまってな。」
シンゴが頭を掻く。
「何をしたんすか?
性癖がどうのこうのと言ってたけど。」
気になった所を聞いてみる。
「誰にも言うなよ。」
シンゴはドアに目線を向けて、声を潜めた。
ナツキは大きく頷く。
「酔ったら勢いで、嫌がる彼女なアナル、まあ肛門だ。
そこを犯しちゃったんだ。」
シンゴがニヤニヤ笑う。
「こっ、肛門っすか?」
思わず大きな声が出てしまう。
「ばっ、馬鹿、声がデケェよ。
俺って、性欲強いんだよな。
普通のセックスじゃ、物足りねぇんだ。」
シンゴの思わぬ告白に返す言葉が見付からない。
「今日はコンビニのバイトないだろ。
よしっ、終わったら飲みに行くぞ。」
シンゴは勝手に決めると、部屋を出て言った。
(つづく)
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