妄想日記8<<FLOWERS>>

YAMATO

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Chapter9(最愛編)

Chapter9-⑦【君が望む世界】

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「さあ、夕飯の支度が出来ました。
食事を始めましょう。」
やっと自分の置かれている立場を理解した。
狂人に監禁されているのだ。
だがここは日本だ。
手足は自由なのだから、表に行って助けを求めればいい。
『落ち着け、落ち着け。』
自分に言い聞かせる。
隙を見て、逃げるタイミングを計るのだ。
 
相手のペースに合わせる事にする。
先ずは安心させるのだ。
グラスを持ち、乾杯する。
一本のバラがキャンドルの灯りで寂しげに見えた。
「夢の様です。
貴方と一緒にディナーを食べれるなんて。
ステーキは松坂にしました。
それとスープとサラダです。
パンが足りなかったら、言って下さい。」
真っ赤なレアステーキはバラに似ている。
肉は噛む前に溶けていく。
この状況でなければ、最高の肉なのだろう。
「どうしてこんなケージをするの?
これがなくても、このブーツで幾らでも踏んであげるのに。」
あくまでも講和的に話を進める。
「貴方にはいつもムラムラしてて、欲しいのです。
その為の射精管理です。
貴方が射精出来るのは私を責めている時だけです。」
リョウキはマスクを外す事なく、グラスを傾けた。
「それって、おかしくない?
リョウキはMなんだろ?
それはSの発想じゃないのかな。
僕は僕のタイミングでリョウキを責めたいんだ。」
「貴方は私の理想です。
ですが少し難点を言うなら、経験が少ない様ですね。
生粋のMなどいません。
人は振り子と同じです。
左に大きく振れた時はMとなります。」
「じゃあ、逆もあるってこと?」
「そうです。
Mとして受けた責めを、次はSとして与えるのです。」
「でも僕はMじゃない!」
「それは経験の少なさ故の勘違いです。
貴方は私のスレイブに欲情したではないですか。
トイレでそのケージを物欲しそうに見たのが、何よりの証拠です。」
あの日、隣の個室にいたのはリョウキのスレイブというのか?
俄に信じがたい。
 
「だって黒とかげで、いつもSが来るのを待ってたじゃないか!」
「待っていたのはSだけではありません。
Mが来れば、私のスレイブに加えたでしょう。」
リョウキは手に持つグラスをくるくる揺らした。
ワインの芳香な香りが拡散していく。
「そして貴方が現れた。
貴方がご自身の事をSと思うなら、私は奉仕します。
もし貴方が深層に隠れたM気質に気付けば…。」
止めたグラスがゆっくり唇へ運ばれていく。
「気付いたら?」
それはないと思いつつ、先を促す。
「私は貴方が望む責めを与え続けます。
まあ、どちらにしても私は貴方に奉仕する事になりますが。」
赤みの加わった焼けた顔が微笑む。
 
「そんな事、クロさんは言ってなかった…。」
「それはクロも私のスレイブだからです。」
 「まさか…。」
「黒とかげのオーナーは私です。
クロは飾り物の店主です。
私を喜ばせるのが、本来の仕事です。
クロは一生、私と黒とかげに奉仕するのです。」
宝物は手に入れず、遠くから見ているのがいいと、クロは言った。
宝物はリョウキの事だったのか?
「そして貴方はここで私の奉仕を受けるのです。
それはMとしてか、Sとしてかは貴方の望むままです。」
「冗談じゃない!
僕の宝物は他にあるんだ。
ここにはない!」
立ち上がった拍子に椅子が倒れた。
 
(つづく)
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