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Chapter8(宝物編)
Chapter8-①【To the Beach】
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日焼けどころか、海に来るのも初めてだ。
引きこもり体質の所為で、眩しい場所は苦手だった。
厚いカーテンは開けた事がない。
昼間でも薄暗い部屋が自分の居場所だ。
加えて色黒の父親を毛嫌いしていた。
日焼けしたマッチョは嫌悪感の対象でしかない。
それをヒュウガが和らげてくれた。
目の前の焼けた肌が魅力的に映る。
あれ程、嫌いだったのに。
今ではこの黒い肌に欲情した。
『このモデル、僕の理想なんだ。』
ソラが持つ父親の感想だ。
ビデオの中の父親は黒光りする肌を晒していた。
淫らなウェアは黒い肌の引き立て役でしかない。
肌が黒くなれば、ソラはもっと自分を見てくれるだろうか?
ジムのスタッフではなく、自分に会いに来てくれるだろうか?
黒くなった自分が想像出来ない。
だが今は進むしかない。
そう言えばスタッフも良く焼けていた。
ソラは黒い肌に執着している。
これは間違いない推理に思えた。
黒くなれば、何かが変わるかもしれない。
「ねぇ、まだ焼くの?」
三月とは思えない陽射しに思わず、弱音が口を衝く。
先程の決心が暑さでゆらいでしまう。
「何言ってるんだ?
まだ一時間しか焼いてないよ。
この後、裏を焼いて1セット。
最低2セットはやらないとな。」
「にっ、2セット…。」
この炎天下、計4時間焼く事になる。
それは遥か先に思えた。
「今日は僕が日焼け道を教えてあげる。
小麦色の筋肉はエロさ満点だ。
はい、背中向けて。
オイル塗ってあげるから。」
強い陽射しがソラを照らす。
オイルでギラギラした顔は楽し気だ。
心底、日焼けを楽しんでいる様だ。
「時計を見ないで、どうして一時間が分かるの?」
ソラは時計をしてない。
スマホは音楽を流しているだけで、使っている気配はない。
「ああ、12曲終わると、大体1時間なんだ。
セットリストで12曲目はバラード系にして、分かる様にしてる。」
「そうなんだ、結構きっちりしてるんだね。」
もっといい加減な時間管理かと思ったが、この分ではきっちり四時間焼く事になりそうだ。
早くも次のバラード曲が流れてくる事を願う。
背を向けると、掌がオイルを伸ばしていくのが分かる。
人との触れ合いが少なかったリヒトにとって、それは至極の時に思えた。
「その年の最初に履いたビキニが重要なんだ。
それでシーズンを通さなくてはならないの。
何故だか分かるかな。」
「一年間ずっと?」
「そう、ずっと。
それはね、日焼けの跡をくっきりさせるため。
水着を変えると、跡がずれちゃうからね。」
「くっきり…、ずれちゃう…。」
「そう、だからリヒトは今シーズンはずっとこれを履きなさい。
はい、塗り終わったよ。
じゃあ、僕の背中にも塗って。」
ソラはオイルを手渡すと、背中を向けた。
広背筋が翼の様に動く。
大胸筋は動きが見える分、発達している人は多い。
それに比べると、広背筋は目一杯可動域を使っている人が少ない。
貧弱な背中の人が多い理由だ。
惚れ惚れする筋肉に掌を添える。
「おい、くすぐったいよ。」
広背筋を撫でているつもりだったが、いつの間にか脇の下まで指が行っていた。
「ごめん。」
楽しい時だった。
独りでは味わえない貴重な時間だ。
それが例え片思いでも。
(つづく)
引きこもり体質の所為で、眩しい場所は苦手だった。
厚いカーテンは開けた事がない。
昼間でも薄暗い部屋が自分の居場所だ。
加えて色黒の父親を毛嫌いしていた。
日焼けしたマッチョは嫌悪感の対象でしかない。
それをヒュウガが和らげてくれた。
目の前の焼けた肌が魅力的に映る。
あれ程、嫌いだったのに。
今ではこの黒い肌に欲情した。
『このモデル、僕の理想なんだ。』
ソラが持つ父親の感想だ。
ビデオの中の父親は黒光りする肌を晒していた。
淫らなウェアは黒い肌の引き立て役でしかない。
肌が黒くなれば、ソラはもっと自分を見てくれるだろうか?
ジムのスタッフではなく、自分に会いに来てくれるだろうか?
黒くなった自分が想像出来ない。
だが今は進むしかない。
そう言えばスタッフも良く焼けていた。
ソラは黒い肌に執着している。
これは間違いない推理に思えた。
黒くなれば、何かが変わるかもしれない。
「ねぇ、まだ焼くの?」
三月とは思えない陽射しに思わず、弱音が口を衝く。
先程の決心が暑さでゆらいでしまう。
「何言ってるんだ?
まだ一時間しか焼いてないよ。
この後、裏を焼いて1セット。
最低2セットはやらないとな。」
「にっ、2セット…。」
この炎天下、計4時間焼く事になる。
それは遥か先に思えた。
「今日は僕が日焼け道を教えてあげる。
小麦色の筋肉はエロさ満点だ。
はい、背中向けて。
オイル塗ってあげるから。」
強い陽射しがソラを照らす。
オイルでギラギラした顔は楽し気だ。
心底、日焼けを楽しんでいる様だ。
「時計を見ないで、どうして一時間が分かるの?」
ソラは時計をしてない。
スマホは音楽を流しているだけで、使っている気配はない。
「ああ、12曲終わると、大体1時間なんだ。
セットリストで12曲目はバラード系にして、分かる様にしてる。」
「そうなんだ、結構きっちりしてるんだね。」
もっといい加減な時間管理かと思ったが、この分ではきっちり四時間焼く事になりそうだ。
早くも次のバラード曲が流れてくる事を願う。
背を向けると、掌がオイルを伸ばしていくのが分かる。
人との触れ合いが少なかったリヒトにとって、それは至極の時に思えた。
「その年の最初に履いたビキニが重要なんだ。
それでシーズンを通さなくてはならないの。
何故だか分かるかな。」
「一年間ずっと?」
「そう、ずっと。
それはね、日焼けの跡をくっきりさせるため。
水着を変えると、跡がずれちゃうからね。」
「くっきり…、ずれちゃう…。」
「そう、だからリヒトは今シーズンはずっとこれを履きなさい。
はい、塗り終わったよ。
じゃあ、僕の背中にも塗って。」
ソラはオイルを手渡すと、背中を向けた。
広背筋が翼の様に動く。
大胸筋は動きが見える分、発達している人は多い。
それに比べると、広背筋は目一杯可動域を使っている人が少ない。
貧弱な背中の人が多い理由だ。
惚れ惚れする筋肉に掌を添える。
「おい、くすぐったいよ。」
広背筋を撫でているつもりだったが、いつの間にか脇の下まで指が行っていた。
「ごめん。」
楽しい時だった。
独りでは味わえない貴重な時間だ。
それが例え片思いでも。
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