妄想日記6<<EVOLUTION>>

YAMATO

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Chapter8(がむしゃら編)

Chapter8-⑫【Face My Fears】後編

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結構な距離を走った。
波止場に着き、ワタルの足が止める。
「気持ちいいな。」
伸びをするワタルの股間が膨らむ。
やはり細かい凹凸がある。
どうやら何かで覆われている様だ。
『貞操具?』
ビデオでは見た事がある。
Mに装着し、射精を禁ずる道具だ。
『それをワタルさんが?
という事は…、ワタルさんはドM?
管理いているのは誰?』
俄に信じ難い。
だがツグムの例もある。
自信満々の奴に限って、ドMは多いのかもしれない。
 
「ワタルさんこそ奴隷がいそう。
いや、逆にワタルが飼われてたりして。」
冗談を装い、鎌をかける。
「ああ、そうだ。」
ワタルは簡単に白状した。
対岸の観覧車に目を向ける。
「そんな時代もあった。」と付け加えた。
「と言うと、今はどっちなんですか?」
「どっちだと思うか?」
逆に質問してきた。
「んー、難しい…。
如何にもSって人の方が実はMが多いと聞くから、ワタルさんもMじゃないですか?」
「当たらずとも、遠からずだな。」
「とすると以前はMで、現在はSっ事ですか?」
「いや、前はMで、今はどっちでもない。」
ワタルがストレッチをしながら答えた。
 
「今日は新月だから星が綺麗だ。
風が雲を飛ばしてくれた。」
ワタルが話を逸らした。
「どっちでもないって、そんな事あるんですか?」
シオンは話を戻す。
自分の経験から、性的欲望は萎える事はない。
それどころか日毎に増すばかりだ。
初老の男なら兎も角、ワタルの年代では信じられない。
寝ても覚めても性欲は尽きる事がない。
坂道を下る雪玉の様に大きくなる一方だ。
「もう欲情とか、興奮とかは卒業した。」
屈伸したワタルが顔を伏せて言う。
「えっ、もう感じないって意味ですか?」
「ああ、そういう風に考えれば納得いくか?
掘る事は可能だ。
だがそれによる快感はないし、射精もない。」
その答えに不感症という単語が浮かぶ。
ワタルがジョギングパンツを下げた。
重厚な鉄製のケージが街灯を浴び、浮かび上がる。
その中で藻掻くペニスは殺気すら感じた。
柵から解き放てば、牙を剥いて襲い掛かってきそうだ。
 
「その勇ましさは興奮を意味してないと?」
「ああ、そうだ。
普段からこんな状態だ。」
「えっ、年中勃起してるんですか?
しかも貞操具の中で…。」
締め付けられたリングが根本に食い込んでいる。
赤く染まったペニスは暴発寸前に見えた。
「そうだ、もう先走りすら出ない。
もう性器としての役目は終えたんだ。」
「だったら外せば?」
至極簡単な事だと思う。
「ああ、それが出来ればな。」
微笑むワタルが本当の神に見えた。
「さあ、星空を満喫しながら戻るか。
東京でこんな星空は滅多に見れないからな。」
ワタルはランニングパンツを上げると走り出した。
上げ過ぎたパンツから大殿筋が覗く。
二度と触れてはいけない事を知る。
それは神に対する冒涜だと察したのだ。
 
 
(つづく)
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