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Chapter8(がむしゃら編)
Chapter8-①【今夜ここまま】後編
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「だったら何だ?」
「セレクトショップを出したいんです。
そんな変わったボディスーツやアクセサリーを並べた店を出すのが夢なんです。
全頭マスクやグローブに、ロングブーツなど。
どこに売っているか分からない物を並べたい。」
山下の白いスーツを指差す。
「お前、そんなんで食っていけると思ってんのか?」
呆れ顔で山下が言う。
「簡単でないのは分かっています。
ただこういうスーツに興味ある人はいる筈です。
俺がそれを着て、買いたいと思っている人の背中を押してあげたいんです。」
「まあ、いない事はないと思うが、絶対的に少ないぞ。」
山下が眉間に皺を寄せる。
「買っても着る機会がないと思うんです。
折角買っても着ていく場所がない。
買いそびれている人って、クラブなんか行かない筈だし。」
漠然と想像していた店が口に出す事で明確になってきた。
「それを着れる場所にもしたいんです。
誰の視線も気にせず、リラックス出来る店に。」
頭の中に具体的なイメージが沸いきた。
店半分をショップにして、残ったエリアをラウンジにする。
談笑しながら寛げる店がはっきりと映像となった。
「確かにそんな店があれば、俺も通うがな。」
山下が笑う。
「でしょ!
簡単に手に入らない奇抜なウェアを揃えて、それを着てもらうんです。
軽食を出して、酒を飲みながら寛いでもらう。
買った人は皆喜びますよ。」
同意を得て、自信が増す。
「だったら俺のジムと提携しないか?
そんなエロ着でトレーニングなんて、余所じゃ出来ないからな。」
山下も乗ってきた。
「それ良いですね。
だったらオリーブオイル・トレーニング方をもっと広めましょう。」
ワタルは夢が一歩近づいた様に思えた。
「夢を語るって良いですね。」
ワタルは思い切り伸びをした。
「その赤いパンツはユウヤに貰ったんだろ?」
頷いた顔を下に向ける。
赤いエナメルのパンツを今日渡された。
エナメルの生地に夜景が反射している。
「あいつは気に入った奴に赤い物をプレゼントすると言ってた。
だったらユウヤの喜ぶ顔も見たくないか?
それがお前の夢なんだろ?」
山下の見開いた瞳にワタルが映った。
矛盾点を突かれ、困惑を浮かべた表情だ。
『夢を語るにはまだ早い。』
暗にそう言われた気がした。
水面に対岸の観覧車が映る。
「どうせ軍資金はユウヤからもらった金だろ?
今更、それが増えたところで問題ないだろう。
それでユウヤが喜ぶんだ。
お前は軍資金を使わないで済む。
ウインウインで、良い提案だと思うがな。」
「少し考えてみます。」
「そうしてくれ。
何時もキャップを目深に被った男の笑い顔を見てみたいだろ。
俺はあいつの笑った顔をまだ見た事がない。
それを知っているのはお前だけだ。」
山下が観覧車に向かって石を投げる。
三回水を切った石は四度目で海中へ消えた。
観覧車には届かない。
ワタルはもう一回ジャンプしてみる気になった。
(つづく)
「セレクトショップを出したいんです。
そんな変わったボディスーツやアクセサリーを並べた店を出すのが夢なんです。
全頭マスクやグローブに、ロングブーツなど。
どこに売っているか分からない物を並べたい。」
山下の白いスーツを指差す。
「お前、そんなんで食っていけると思ってんのか?」
呆れ顔で山下が言う。
「簡単でないのは分かっています。
ただこういうスーツに興味ある人はいる筈です。
俺がそれを着て、買いたいと思っている人の背中を押してあげたいんです。」
「まあ、いない事はないと思うが、絶対的に少ないぞ。」
山下が眉間に皺を寄せる。
「買っても着る機会がないと思うんです。
折角買っても着ていく場所がない。
買いそびれている人って、クラブなんか行かない筈だし。」
漠然と想像していた店が口に出す事で明確になってきた。
「それを着れる場所にもしたいんです。
誰の視線も気にせず、リラックス出来る店に。」
頭の中に具体的なイメージが沸いきた。
店半分をショップにして、残ったエリアをラウンジにする。
談笑しながら寛げる店がはっきりと映像となった。
「確かにそんな店があれば、俺も通うがな。」
山下が笑う。
「でしょ!
簡単に手に入らない奇抜なウェアを揃えて、それを着てもらうんです。
軽食を出して、酒を飲みながら寛いでもらう。
買った人は皆喜びますよ。」
同意を得て、自信が増す。
「だったら俺のジムと提携しないか?
そんなエロ着でトレーニングなんて、余所じゃ出来ないからな。」
山下も乗ってきた。
「それ良いですね。
だったらオリーブオイル・トレーニング方をもっと広めましょう。」
ワタルは夢が一歩近づいた様に思えた。
「夢を語るって良いですね。」
ワタルは思い切り伸びをした。
「その赤いパンツはユウヤに貰ったんだろ?」
頷いた顔を下に向ける。
赤いエナメルのパンツを今日渡された。
エナメルの生地に夜景が反射している。
「あいつは気に入った奴に赤い物をプレゼントすると言ってた。
だったらユウヤの喜ぶ顔も見たくないか?
それがお前の夢なんだろ?」
山下の見開いた瞳にワタルが映った。
矛盾点を突かれ、困惑を浮かべた表情だ。
『夢を語るにはまだ早い。』
暗にそう言われた気がした。
水面に対岸の観覧車が映る。
「どうせ軍資金はユウヤからもらった金だろ?
今更、それが増えたところで問題ないだろう。
それでユウヤが喜ぶんだ。
お前は軍資金を使わないで済む。
ウインウインで、良い提案だと思うがな。」
「少し考えてみます。」
「そうしてくれ。
何時もキャップを目深に被った男の笑い顔を見てみたいだろ。
俺はあいつの笑った顔をまだ見た事がない。
それを知っているのはお前だけだ。」
山下が観覧車に向かって石を投げる。
三回水を切った石は四度目で海中へ消えた。
観覧車には届かない。
ワタルはもう一回ジャンプしてみる気になった。
(つづく)
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