妄想日記6<<EVOLUTION>>

YAMATO

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Chapter7(女優編)

Chapter7-⑥【Fight from the Inside】後編

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「はっけよい、残った!」
テツヤが行司をする。
猛烈な圧力がのし掛かった。
一気に土俵際迄、後退する。
ワタルは渾身の力でコウキの腹の肉を掴む。
懸垂により握力が付いていた。
「痛え!」
コウキが顔を顰める。
スクワットで鍛えた大腿を伸ばし、土俵の中央に戻す。
コウキの腕の下に肩を入れ、自慢の腕っぷしを使わせない。
ジリジリと前進すると、コウキの足が土俵に掛かった。
掴んだ肉で投げを打つ。
コウキの右足が浮き、体勢が崩れる。
決まったと思った時、肉が外れた。
オイルで濡れた指が滑ったのだ。
 
浮いた足が砂の中に戻った。
身体が離れ、睨み合いが続く。
コウキの肩が大きく上下する。
呼吸が乱れている内に勝負を付けるべきだ。
ワタルは正面から行くと見せ掛けて、左側へ跳ぶ。
巨体の脇に食らい付き、今度は両手で脂肪を掴む。
目一杯の握力で、指を肉に食い込ます。
「うぐっ!」
熊手の様な掌で顔面を押された。
身体が仰け反るが、絶対に肉は離さない。
圧力が増していく。
鼻と口を塞がれ、呼吸が出来ない。
それを避ける為に、コウキの脇の下へ顔を移動する。
猛烈な刺激臭が鼻を衝いた。
異臭が体内を駆け抜け、思考が止まる。
次の瞬間、視界が闇に閉ざされた。
強烈な張り手を食い、身体がすっ飛んだ。
 
「もう少しでインターハイ選手のコウキが投げられる所だった。
もし本当に負けてたら、問答無用でテツヤさんの所へ通わせましたよ。」
闇の中で声がした。
笑い声の主が大園だと分かる。
どうやら失神していた様だ。
後ろ手で縛られ、大胸筋に拘束感を覚えた。
暫く気絶したままを装う事にする。
「それにしても物凄い力だ。」
「それを開眼させるのが僕の仕事なので。
トレーニングはメンタルが8割が僕の持論です。
如何にして本人にやる気を起こさせるかです。
無理強いは駄目です。
本人に暗示を掛け、モチベーションを上げる。
自ら過酷なトレーニングを課する様になるでしょう。
単純な人程、効果があります。」
暗にワタルの事を言っていた。
 
「売り物に性欲は無用、トラブルの原因になるだけだ。
飼い主の欲望の捌け口になれば良い。
その点はどうだ?」
大園とテツヤの声が交互に聞こえる。
ワタルは薄目を開け、様子を伺う。
話し合う二人の奥に夕陽が見える。
気を失っていたのは数分らしい。
「その点は安心して下さい。
万全の品質を保証します。
性欲は完全に取り除いてあります。
彼の本能は肉体を鍛える事にしか、興味を示さないでしょう。」
「本当だろうな?
前回の奴はお客様に掘られて、失禁したんだ。
賠償金を払わされて、利益がすっ飛んだ。
今回も不良品だったら、二度と取引はないと思え。」
「申し訳ありません。
賠償金は今回の値引きとして、相殺させて頂きます。
そのクレームを頂きまして、今回は二重の対策を打っております。」
ネットショッピングの話をしているとしか思えない。
 
 
(つづく)
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