妄想日記6<<EVOLUTION>>

YAMATO

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Chapter5(懽楽編)

Chapter5-⑤【虹が生まれる国】後編

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「ここがジョムティエンビーチ?」
テンソウを降り立つと、普通の浜辺が広がっていた。
「アジア一のゲイビーチっていう位だから、もっと派手だと思ったんだがな。」
シュウヘイはスマホを出し、画像を表示させる。
タカユキが送ってくれたナツキの画像だ。
小さなビキニを穿いたマッチョ軍団が写っている。
その真ん中でナツキが尻を出して笑っていた。
写り込む景色にデッキチェアーが並び、後方にレインボーフラッグが棚引く。
この風景を探すしかない。
 
「少し浜を歩いてみるか。」
シュウヘイはリュックを背負うと歩き出す。
往来する物売りは慣れた様子でスタスタ歩いている。
振り返ると、かなり後ろをタクが歩いていた。
「おい、早く歩け。」
「待ってよ。
暑いのは苦手なんだ。
日影を歩かない?」
「ダメだ。日影を歩くと、客引きがしつこい。」
シュウヘイは手の甲で汗を拭くと、波打ち際を歩く。
日影はデッキチェアーでぎっしり埋まっていた。
そこを歩くと海の家の店員に手を引かれ、うんざりしていたのだ。
だがゴールは意外と近かった。
風に揺らめくレインボーフラッグが目に入る。
辺りで日焼けしているのは一目でゲイと分かる連中だ。
露出度の高いビキニを穿いた男達が寝そべっていた。
 
「ねぇ、この辺じゃない?」
瞳を輝かせたタクが寄ってきた。
「みたいだな。」
画像と見比べると、確かに似ている。
周囲を見回すが、ナツキらしき男はいない。
「少し休も。
飛行機降りてから、BTSと高速バス、最後にテンソウ乗り継いでクタクタだよ。」
タクが情けない声で訴えた。
「どうぞ、どうぞ。」
タイ人の若者が微笑みながら寄ってきた。
「もうここでいいよ。
兎に角、休もう。
聞き込みはここを拠点にしよ。」
タクは若者の後に付いていく。
 
「飲み物はどうしますか?」
若者がメニューを差し出した。
「僕はバナナシェイク!シュウヘイは?」
タクが受け取ったメニューを寄越す。
「日本語が上手ですね。
俺はシンハービールで。」
メニューにチップを挟んで返す。
「ありがとうごさいます。
私、ニックです。
日本が大好きで、少し住んでました。
日本のアニメ、好きです。
もう一回、行きたいです。」
ニックはチップを抜き取ると、ポケットへ押し込んだ。
「この男を見た事あるかな?」
画像を大きくし、ニックへ見せる。
「ナツキ知ってます。
ナツキの友達ですか?」
「ほらっ、ここで良かったろ。」
タクが勝ち誇った様に言う。
「今日も来るかな?」
その質問にニックの顔が曇る。
「ナツキもう来ません。」
「えー、折角タイ迄来たのに。
もしかして入れ違い?
日本に帰っちゃったのかな。」
タクが落胆の声をあげた。
シュウヘイはその言い方に違和感を覚える。
「もう来ないって…。」
「ナツキ…、死にました。」
ニックが声を絞り出す。
突き刺す陽射しには不似合いな単語だった。
 
 
(つづく)
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