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Chapter5(懽楽編)
Chapter5-⑤【虹が生まれる国】前編
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「誰に電話したの?」
「昔の友人さ。
ナツキさんの連絡先を聞こうと思って…。」
タクの視線が下降する。
「何で友人と話すのに勃起するのさ?
只の友人じゃくて、SFじゃないの?
まあ、いいけどさ。」
顰めっ面のタクがドリンクバーへ向かう。
暫くするとスマホが震えた。
「分かったか?」
「それがタイらしいんだ。
ジャスティンと気が合って、一緒に行ったらしい。」
「住所は分かるか?」
つい詰問調になってしまう。
「それが…、先月エアメールが届いたけど、住所はタイ語で読み取れないって。」
タカユキが申し訳なさそうに答えた。
「中身は何と?」
「『元気か?俺は元気だ。』
と書いてあったって。
笑わない?それに写真が二枚入ってたんだって。」
「どんな写真?
それをカメラで撮って、送ってくれないか。
出来るだけ早く。
今度、充分な礼をするんで。
急を要する話なので、急かしてすみません。」
「冷静なブラックが慌てるって事は余程なんだな。
分かった、ヨンハに急いで送ってもらう。
じゃあ、落ち着いたら飯でも食おうよ。」
電話が切れた。
非礼さに怒ったのかと後悔するが、今は致し方ない。
「おい、タイに行くぞ。
そこにナツキさんがいるらしい。」
戻ってきたタクがきょとんとする。
「らしいって、確かじゃないのに行く気?
会える確証もないのに。
そこ迄は甘えられないよ。
行くなら一人で行ってくる。」
タクは座ると、ストローを音を立てて吸った。
何故、こんなに執着するのか自分でも分からない。
一言で言えば血が騒ぐだ。
上手く行かない社会人生活に刺激が欲しかった。
学生時代の時の様に何かに熱中したい。
三銃士と派手にやってた頃に戻りたかったのだ。
この一件は熱中するのに打って付けだった。
「乗り掛かった舟だ。
今更、退く訳にもいかない。
俺に任せろ。」
上手く説明出来ず、啖呵を切るしかなかった。
勃起したのはタカユキと話したからではない。
一番楽しかった頃を思い出したからだ。
あの頃はバイクに乗っているか、掘っているかだった。
刺激的な毎日は必ずやってくる。
それは当たり前の事だった。
ピンチになればなる程、精力が漲る。
穏やかな日々を過ごしたいと言いながら、トラブル続きの毎日に満足していた。
それが生きている証だった。
『今の俺は死んでいる。』
最近、力強い勃起を感じた事がない。
大き過ぎる故か、隅々迄力が伝わらないのだ。
ナツキに会って、喝を入れて欲しい。
そして輝いていた頃を取り戻したかった。
「なら僕も一緒に行くよ。」
タクがストローを吹いて泡立てる。
「おいおい、仕事はいいのか?」
「この時期は暇だから。
帰ってからリカバリーするよ。」
落ち着きのないタクはまた席を立つ。
シュウヘイはスマホを操作し、格安航空チケットを探す。
「旅は道ずれだ。
掘って、掘って、掘りまくってやるか。」
久し振りに血が騒ぐ感覚で股間が熱くなった。
(つづく)
「昔の友人さ。
ナツキさんの連絡先を聞こうと思って…。」
タクの視線が下降する。
「何で友人と話すのに勃起するのさ?
只の友人じゃくて、SFじゃないの?
まあ、いいけどさ。」
顰めっ面のタクがドリンクバーへ向かう。
暫くするとスマホが震えた。
「分かったか?」
「それがタイらしいんだ。
ジャスティンと気が合って、一緒に行ったらしい。」
「住所は分かるか?」
つい詰問調になってしまう。
「それが…、先月エアメールが届いたけど、住所はタイ語で読み取れないって。」
タカユキが申し訳なさそうに答えた。
「中身は何と?」
「『元気か?俺は元気だ。』
と書いてあったって。
笑わない?それに写真が二枚入ってたんだって。」
「どんな写真?
それをカメラで撮って、送ってくれないか。
出来るだけ早く。
今度、充分な礼をするんで。
急を要する話なので、急かしてすみません。」
「冷静なブラックが慌てるって事は余程なんだな。
分かった、ヨンハに急いで送ってもらう。
じゃあ、落ち着いたら飯でも食おうよ。」
電話が切れた。
非礼さに怒ったのかと後悔するが、今は致し方ない。
「おい、タイに行くぞ。
そこにナツキさんがいるらしい。」
戻ってきたタクがきょとんとする。
「らしいって、確かじゃないのに行く気?
会える確証もないのに。
そこ迄は甘えられないよ。
行くなら一人で行ってくる。」
タクは座ると、ストローを音を立てて吸った。
何故、こんなに執着するのか自分でも分からない。
一言で言えば血が騒ぐだ。
上手く行かない社会人生活に刺激が欲しかった。
学生時代の時の様に何かに熱中したい。
三銃士と派手にやってた頃に戻りたかったのだ。
この一件は熱中するのに打って付けだった。
「乗り掛かった舟だ。
今更、退く訳にもいかない。
俺に任せろ。」
上手く説明出来ず、啖呵を切るしかなかった。
勃起したのはタカユキと話したからではない。
一番楽しかった頃を思い出したからだ。
あの頃はバイクに乗っているか、掘っているかだった。
刺激的な毎日は必ずやってくる。
それは当たり前の事だった。
ピンチになればなる程、精力が漲る。
穏やかな日々を過ごしたいと言いながら、トラブル続きの毎日に満足していた。
それが生きている証だった。
『今の俺は死んでいる。』
最近、力強い勃起を感じた事がない。
大き過ぎる故か、隅々迄力が伝わらないのだ。
ナツキに会って、喝を入れて欲しい。
そして輝いていた頃を取り戻したかった。
「なら僕も一緒に行くよ。」
タクがストローを吹いて泡立てる。
「おいおい、仕事はいいのか?」
「この時期は暇だから。
帰ってからリカバリーするよ。」
落ち着きのないタクはまた席を立つ。
シュウヘイはスマホを操作し、格安航空チケットを探す。
「旅は道ずれだ。
掘って、掘って、掘りまくってやるか。」
久し振りに血が騒ぐ感覚で股間が熱くなった。
(つづく)
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