妄想日記6<<EVOLUTION>>

YAMATO

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Chapter5(懽楽編)

Chapter5-①【桃色吐息】後編

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「ケツは大丈夫か?」
二人でファミレスに入った。
「全然と言いたい所だけど、座ってるだけで強烈に痛む。
明日の仕事は無理そう。」
タクは明るさに慣れずに下を向く。
「悪かったな。
久しく掘ってなかったら、つい夢中になっちゃって。
休業補償として、ここは俺の奢りだ。
好きなだけ、注文してくれ。」
はにかんだ笑顔が眩し過ぎたのだ。
「でも…。」
タクは言い掛けて止める。
掘られて、始めて射精した事を告げる程傾向したくなかった。
 
交尾はゲームだ。
高揚感を楽しみ、それに没頭する。
相手がデカければデカい程、血が滾った。
闘争本能を剥き出しにして、相手を飲み込む。
その勝利は射精する事より、遥かに満足させてくれた。
それ故にリピターは不要が信念だ。
敗者との再戦は無意味極まりない。
リピートするのは苦汁を嘗めた相手に限定されていた。
連敗したのはリョウマが初めてだ。
悔しいが、この先も勝てる見込みはない。
目の前の男にも、最初は苦戦した。
だが劇的なサヨナラホームランで逆転勝利を掴んだ。
自分が射精する直前に、ザーメンが腸内を掛け上った。
いつもだったらそれに満足出来た。
家に帰って、安眠する筈だ。
腸内のザーメンを戦利品として。
『でも…。』
試合に勝った筈なのに、再戦を望んでいる自分に戸惑う。
 
「もしかしてスポーツ選手?
凄い筋量だし。
あんな妖しいナイト行って大丈夫なの?」
張り裂けそうなスーツを見て、話題を変える。
「一応芸能活動をしてるけど、売れてないから写真撮られても平気さ。
いや、却って週刊紙に載りたい位だ。」
屈託のない笑顔に影が落ちた。
「役者?」
「スーツアクター、平たく言うとスタントマンだ。」
男がサラダバーから取ってきた山盛りの野菜を頬張る。
「凄いじゃん。
アクション俳優って訳か。」
タクは苦いコーヒーを啜りながら、男の持つフォークの動きを追う。
流石に深夜に食べる気はしない。
何故、腹も減ってないのに、ファミレスへ寄ったのだろうか?
「と言っても、今はデパートの屋上での着ぐるみショー位しか仕事はないんだけど
な。」
男は自嘲気味に言うと、プチトマトを刺したフォークを二人の中間で止めた。
視線が搗ち合い、慌てて逸らす。
 
「ダチに似てんだ。」
沈黙を男が破った。
「なんて名前?」
タクは聞きたくない話題を無視した。
誰かの身代わりならゴメンだ。
「俺はシュウヘイだけど。」
「僕はタク、バリウケのタク。
それと聞きたかったのは友達の方。」
態とふざけて言う。
「ピンクと呼んでた。」
「変な名前。
まだ仲がいいの?」
潔くないのは分かっているが、探りを入れてしまう。
「いや、遠くへ行ったんだ。」
その答に納得する。
『やはりフラレた相手に似ているから、誘ってきたんだ。
そうでなければ多くの影の中から、自分を選ぶ訳がない。
この男が見ているのは僕じゃない。
ピンクを見てるんだ。』
タクは始めて男の視線と対峙した。
 
 
(つづく)
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