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Chapter4(下坂編)
Chapter4-⑦【ズンドコ パラダイス】前編
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ワタルは荷物を片付け始める。
まだ一時だが、とても日焼けを続ける気にはなれない。
目の前の監視台にはマサミが座っていた。
あの異様な情景を見ても、平然と座っているマサミに感心する。
昨今の若い女性は皆そうなのか、彼女が特有なのか?
日に焼けた横顔は健康的だ。
男に媚びる事等、一切ないのだろう。
意思の強そうな表情を見ていると、益々気が滅入る。
自分の節操のなさが際立ってしまう。
「昼飯食わせてもらったから、さっきの彼に返しといて。」
帰り際、マサミに声を掛ける。
「あっ、さっきのおっ…。」
驚いた小さな口は『さん』を飲み込んだ。
「別に払わなくていいんじゃない。
あの露出狂にお金渡したら、また図に乗るわ。
どうしても渡したかったら、ご自分でどうぞ。」
マサミは興味なさそうにプールへ視線を戻した。
つくづく最近の若者に付いていけないと実感する。
リョウマの突拍子もない行動だけでなく、このマサミの対応も信じ難い。
『世の中どうなってんだ?』
行き先を失った千円札を仕舞うと、更衣室へ歩き出す。
足元の影は殆どない。
陽射しが自棄に厳しく感じた。
陽炎の先にあるコースを眩し気に見詰める。
「おっさん、帰りっすか?
続きを見たいんじゃないっすか?
俺を探していたみたいだけど。
これ持って来たら、割引で見せてあげるっすよ。」
更衣室にリョウマが入ってきた。
声の大きさの所為か、隆起した股間の所為か、回りの者達が注目している。
ワタルは真っ赤な顔をして、カードを受け取る。
『メンズパラダイス カタルシス パフォーマー リョウマ』
と書いてあった。
「受付でこれ出せば、千円で俺のストリップを見れるっすよ。」
周囲の視線が突き刺さる。
名刺をポケットに捩じ込み、逃げる様に更衣室を脱出する。
「マジ来て!
約束っすよ!」
追ってくる声よりも早くゲートを駆け抜けた。
「へー、そんなのあるんだ。」
タクが頻りにスマホを操作する。
「あった!」
翳すスマホに『カタルシス』の文字が浮かんでいた。
「ねぇ、基本入場料千円って書いてあるよ。
普通に定価じゃん。」
「本当か?
危うく嵌められる所だった。」
ワタルは苦笑いするしかない。
「他にドリンクやチップ代がチャージされる仕組みみたい。
でも面白そうじゃん。
社会見学に行ってみない?」
画面をスクールさせながらタクが言う。
「だったら行かないよ。
金が勿体ない。
絶対、ぼったくられる。」
ワタルは知らず知らず内股になっていた。
「まだ脱肛が治らないの?
ねぇ、どんだけ激しく掘られたのさ?
言ってみ。」
タクが疑惑の視線を向ける。
「だからハリガタだって言ってんだろ。」
思わず出た言葉でリョウマのペニスを思い出す。
ディルドの様に均整の取れた造形をはっきり覚えている。
あんな一物持っていたら、確かに自慢したくなるだろう。
「あー、デカマラになる方法はないのか?」
本音が溢れた。
(つづく)
まだ一時だが、とても日焼けを続ける気にはなれない。
目の前の監視台にはマサミが座っていた。
あの異様な情景を見ても、平然と座っているマサミに感心する。
昨今の若い女性は皆そうなのか、彼女が特有なのか?
日に焼けた横顔は健康的だ。
男に媚びる事等、一切ないのだろう。
意思の強そうな表情を見ていると、益々気が滅入る。
自分の節操のなさが際立ってしまう。
「昼飯食わせてもらったから、さっきの彼に返しといて。」
帰り際、マサミに声を掛ける。
「あっ、さっきのおっ…。」
驚いた小さな口は『さん』を飲み込んだ。
「別に払わなくていいんじゃない。
あの露出狂にお金渡したら、また図に乗るわ。
どうしても渡したかったら、ご自分でどうぞ。」
マサミは興味なさそうにプールへ視線を戻した。
つくづく最近の若者に付いていけないと実感する。
リョウマの突拍子もない行動だけでなく、このマサミの対応も信じ難い。
『世の中どうなってんだ?』
行き先を失った千円札を仕舞うと、更衣室へ歩き出す。
足元の影は殆どない。
陽射しが自棄に厳しく感じた。
陽炎の先にあるコースを眩し気に見詰める。
「おっさん、帰りっすか?
続きを見たいんじゃないっすか?
俺を探していたみたいだけど。
これ持って来たら、割引で見せてあげるっすよ。」
更衣室にリョウマが入ってきた。
声の大きさの所為か、隆起した股間の所為か、回りの者達が注目している。
ワタルは真っ赤な顔をして、カードを受け取る。
『メンズパラダイス カタルシス パフォーマー リョウマ』
と書いてあった。
「受付でこれ出せば、千円で俺のストリップを見れるっすよ。」
周囲の視線が突き刺さる。
名刺をポケットに捩じ込み、逃げる様に更衣室を脱出する。
「マジ来て!
約束っすよ!」
追ってくる声よりも早くゲートを駆け抜けた。
「へー、そんなのあるんだ。」
タクが頻りにスマホを操作する。
「あった!」
翳すスマホに『カタルシス』の文字が浮かんでいた。
「ねぇ、基本入場料千円って書いてあるよ。
普通に定価じゃん。」
「本当か?
危うく嵌められる所だった。」
ワタルは苦笑いするしかない。
「他にドリンクやチップ代がチャージされる仕組みみたい。
でも面白そうじゃん。
社会見学に行ってみない?」
画面をスクールさせながらタクが言う。
「だったら行かないよ。
金が勿体ない。
絶対、ぼったくられる。」
ワタルは知らず知らず内股になっていた。
「まだ脱肛が治らないの?
ねぇ、どんだけ激しく掘られたのさ?
言ってみ。」
タクが疑惑の視線を向ける。
「だからハリガタだって言ってんだろ。」
思わず出た言葉でリョウマのペニスを思い出す。
ディルドの様に均整の取れた造形をはっきり覚えている。
あんな一物持っていたら、確かに自慢したくなるだろう。
「あー、デカマラになる方法はないのか?」
本音が溢れた。
(つづく)
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