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Chapter3(楓編)
Chapter3-⑩【RED】後編
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「相変わらず淫乱だね。
久し振りに入れてあげようか?
それ、好物だったろ。」
肩越しからユーリがファインダーを覗く。
咄嗟にデジカメを伏せ、視線を上げる。
タクは瞳を閉じ、ぶつぶつ呟いていた。
ユーリの声に気付いてない。
「見立ては先生に任せて、こっち来いよ。」
「いや勝手な事は出来ないんだ。」
汗が背筋を伝う。
「サイン見ただろ。
そのサインに頷いたじゃないか。
契約は守ってもらうよ。」
「いや、あれは…。」
「この家ではここの仕来たりに従ってもらうよ。
前にそう伝えたよね。」
ユーリが出て行くのが気配で分かる。
ワタルは鏡をデジカメで撮ると、バスルームを後にした。
「まさかワタルと再会出来るとは!
これって運命かな?」
無邪気さを装うユーリが不気味に感じられた。
「ワタルが俺を見て、欲情してくれて嬉しいよ。
さあ、再会に乾杯だ。」
ユーリはグラスをワタルの股間に当てる。
この時、初めて自分が勃起している事に気付く。
こんな状況で興奮する訳がない。
それに加えて、この寒気のする部屋で汗が止まらない。
理由は安易に想像が付く。
ユーリが何かを盛ったのだ。
飲み掛けの赤ワインを疎ましく睨む。
その隣のグラスも殆どワインは残ってない。
『タクも同じ物を飲まされた!』
慌ててバスルームに引き返す。
「もう遅いよ。
先生は今頃、夢の中さ。」
ユーリの声が追ってきた。
「何考えているんだ!」
震える足を止め、叫ぶ。
「だって感動的な再会に先生は邪魔じゃん。
ちょっと多目に睡眠薬入れちゃった。
ワタルもその方がありがたいだろ?」
子供の様な言い方に怒りが退いていく。
替わりにじわじわと恐怖が入り込んできた。
「ねぇ、またやり直そ。
楓もワタルなら許してくれそうだし。」
後方からワインを注ぐ音が聞こえる。
「かっ、楓って…、誰?」
分かっているが、聞かずにいられない。
「あれっ、まだ紹介してなかったっけ?
俺の奥さん。」
ワタルはその場に座り込み、両手で顔を覆う。
夜の来訪者の正体に、もう目を背けられない。
そしてケイジとレンの死の原因が自分にある事も。
もしかするとクルーズ船の白人も死んでいるかもしれない。
シンは察していたのだ。
だから自分を避けた。
これで全てが繋がる。
この先、呪われて生きる位なら、ユーリといた方がいいかもしれない。
そんな思いが頭を過る。
「さあ、立って、こっちを向いて。
楓を紹介するよ。」
ユーリが囁いた。
「なあ楓、ワタルの恥態を見たくないか?
ハリガタ責めか、それとも浣腸か?
えっ、両方かよ。
欲張りだな。」
ユーリの笑い声が部屋に響く。
振り返るのが怖い。
本当に楓がソファーに座っている気がした。
固く固く瞼を閉じる。
それだけが今出来る唯一の防御だった。
「これから毎晩見れるんだから、今日は片方にしろよ。」
ユーリが狂っているのか、自分が壊れたのか分からない。
だが確実に第三者の気配を感じた。
(つづく)
久し振りに入れてあげようか?
それ、好物だったろ。」
肩越しからユーリがファインダーを覗く。
咄嗟にデジカメを伏せ、視線を上げる。
タクは瞳を閉じ、ぶつぶつ呟いていた。
ユーリの声に気付いてない。
「見立ては先生に任せて、こっち来いよ。」
「いや勝手な事は出来ないんだ。」
汗が背筋を伝う。
「サイン見ただろ。
そのサインに頷いたじゃないか。
契約は守ってもらうよ。」
「いや、あれは…。」
「この家ではここの仕来たりに従ってもらうよ。
前にそう伝えたよね。」
ユーリが出て行くのが気配で分かる。
ワタルは鏡をデジカメで撮ると、バスルームを後にした。
「まさかワタルと再会出来るとは!
これって運命かな?」
無邪気さを装うユーリが不気味に感じられた。
「ワタルが俺を見て、欲情してくれて嬉しいよ。
さあ、再会に乾杯だ。」
ユーリはグラスをワタルの股間に当てる。
この時、初めて自分が勃起している事に気付く。
こんな状況で興奮する訳がない。
それに加えて、この寒気のする部屋で汗が止まらない。
理由は安易に想像が付く。
ユーリが何かを盛ったのだ。
飲み掛けの赤ワインを疎ましく睨む。
その隣のグラスも殆どワインは残ってない。
『タクも同じ物を飲まされた!』
慌ててバスルームに引き返す。
「もう遅いよ。
先生は今頃、夢の中さ。」
ユーリの声が追ってきた。
「何考えているんだ!」
震える足を止め、叫ぶ。
「だって感動的な再会に先生は邪魔じゃん。
ちょっと多目に睡眠薬入れちゃった。
ワタルもその方がありがたいだろ?」
子供の様な言い方に怒りが退いていく。
替わりにじわじわと恐怖が入り込んできた。
「ねぇ、またやり直そ。
楓もワタルなら許してくれそうだし。」
後方からワインを注ぐ音が聞こえる。
「かっ、楓って…、誰?」
分かっているが、聞かずにいられない。
「あれっ、まだ紹介してなかったっけ?
俺の奥さん。」
ワタルはその場に座り込み、両手で顔を覆う。
夜の来訪者の正体に、もう目を背けられない。
そしてケイジとレンの死の原因が自分にある事も。
もしかするとクルーズ船の白人も死んでいるかもしれない。
シンは察していたのだ。
だから自分を避けた。
これで全てが繋がる。
この先、呪われて生きる位なら、ユーリといた方がいいかもしれない。
そんな思いが頭を過る。
「さあ、立って、こっちを向いて。
楓を紹介するよ。」
ユーリが囁いた。
「なあ楓、ワタルの恥態を見たくないか?
ハリガタ責めか、それとも浣腸か?
えっ、両方かよ。
欲張りだな。」
ユーリの笑い声が部屋に響く。
振り返るのが怖い。
本当に楓がソファーに座っている気がした。
固く固く瞼を閉じる。
それだけが今出来る唯一の防御だった。
「これから毎晩見れるんだから、今日は片方にしろよ。」
ユーリが狂っているのか、自分が壊れたのか分からない。
だが確実に第三者の気配を感じた。
(つづく)
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