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Chapter1(光明編)
Chapter1-①【卒業の唄 ~アリガトウは何度も言わせて~】後編
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帰り際、中嶋が封筒を差し出す。
「餞別です。
少ないですが、何かの足しにして下さい。
帰国する時は必ず連絡下さい。」
厚みがある封筒をポケットへしまう。
乗客の少ない車内で、中身を確認する。
10万円入っていた。
元に戻そうとすると、何かに引っ掛かる。
それは小さなメモ紙だ。
『困った時は連絡よこせ。
スーパーマンが助けにいってやる。』
鉛筆で書いた汚い文字が滲んで見えた。
「って、アフリカに独りで来れるのかよ…。」
力ない突っ込みは社内アナウンスに掻き消された。
仕事は至って単純だ。
午前中はリーダーのクワメに付いて、農園を回る。
拙い英語の説明を適当に聞き流して頷く。
広い農園から戻ると、ランチが待っている。
トウモロコシ粉を使った料理が多いが、たまに米も出た。
食に拘りのないワタルの腹を満たすには充分だ。
午後は大してする事はない。
クワメから聞いた説明を本社に報告するだけだ。
数行のメールを送ったら、それで午後の仕事は終りだった。
山下は日がな一日居眠りしている。
仕事がない事を苦痛に思う人もいるが、ワタルには正に楽園だった。
ネットを見ているだけで仕事になるのだから、笑いが止まらない。
だが1ヶ月も過ぎると、そんな生活も飽きてくる。
毎日更新されるサイトは少なく、時間を潰せなくなってきた。
「何か簡単な作業はないかな?
力仕事なら何でもいいからさ。」
庶務のエクアに聞いてみる。
「なら木を切りませんか?
弟のコベナがやっているので、聞いてみます。」
エクアはコーヒーを置くと、事務所から出ていった。
倒木の作業は簡単な仕事ではなかった。
だがジムのない環境ではいい筋トレになる。
汗だくの現場でシャツを着ている者はいない。
ワタルも上半身裸になり、倒木を運ぶ。
1日があっという間に終わり、一年は瞬く間に過ぎた。
ここでの密かな楽しみはネットへの投稿だった。
ガテン野郎と名乗り、画像を載せると、日本からメッセージが届く。
農園での裸体は日本のゲイには新鮮に見える様で、パソコンを起動する度に未読が増
えていく。
それが面白く、頻繁に投稿した。
返事は敢えて出さない。
会える見込みがないのに、気を持たせたくなかったからだ。
しかし一人だけ気になる人物がいた。
投稿すると、必ずメールを寄こす。
メールを返さなくても、その都度送ってくる。
画像は添付されておらず、却って気になった。
アプリの検索ワードにマッスルビートを入力し、最初のメールを読み直す。
『初めまして。
マッスルビートと言います。
年は23才です。
理想の筋肉だったので、堪らずメールしてみました。
以前はウェイトをやってたのですが、肩を壊してからは泳ぐだけになりました。
また投稿を楽しみにしてます。』
『いつも画像がアップされるのを楽しみにしています。
今日のケツワレ姿は強烈でした。
あんな大胆な格好で仕事が出来るなんて羨ましいです。』
『今日の海画像は最高です。
チンコくっきりで興奮しました。
撮影者もきっと勃起してたんでしょうね。』
『今日は珍しく全裸でしたね。
股間の手が邪魔でしたが。
俺もガテン野郎さんの筋肉に感化されて、筋トレを再開しました。
気持ち良く寝れそうです。
おやすみなさい。』
(つづく)
「餞別です。
少ないですが、何かの足しにして下さい。
帰国する時は必ず連絡下さい。」
厚みがある封筒をポケットへしまう。
乗客の少ない車内で、中身を確認する。
10万円入っていた。
元に戻そうとすると、何かに引っ掛かる。
それは小さなメモ紙だ。
『困った時は連絡よこせ。
スーパーマンが助けにいってやる。』
鉛筆で書いた汚い文字が滲んで見えた。
「って、アフリカに独りで来れるのかよ…。」
力ない突っ込みは社内アナウンスに掻き消された。
仕事は至って単純だ。
午前中はリーダーのクワメに付いて、農園を回る。
拙い英語の説明を適当に聞き流して頷く。
広い農園から戻ると、ランチが待っている。
トウモロコシ粉を使った料理が多いが、たまに米も出た。
食に拘りのないワタルの腹を満たすには充分だ。
午後は大してする事はない。
クワメから聞いた説明を本社に報告するだけだ。
数行のメールを送ったら、それで午後の仕事は終りだった。
山下は日がな一日居眠りしている。
仕事がない事を苦痛に思う人もいるが、ワタルには正に楽園だった。
ネットを見ているだけで仕事になるのだから、笑いが止まらない。
だが1ヶ月も過ぎると、そんな生活も飽きてくる。
毎日更新されるサイトは少なく、時間を潰せなくなってきた。
「何か簡単な作業はないかな?
力仕事なら何でもいいからさ。」
庶務のエクアに聞いてみる。
「なら木を切りませんか?
弟のコベナがやっているので、聞いてみます。」
エクアはコーヒーを置くと、事務所から出ていった。
倒木の作業は簡単な仕事ではなかった。
だがジムのない環境ではいい筋トレになる。
汗だくの現場でシャツを着ている者はいない。
ワタルも上半身裸になり、倒木を運ぶ。
1日があっという間に終わり、一年は瞬く間に過ぎた。
ここでの密かな楽しみはネットへの投稿だった。
ガテン野郎と名乗り、画像を載せると、日本からメッセージが届く。
農園での裸体は日本のゲイには新鮮に見える様で、パソコンを起動する度に未読が増
えていく。
それが面白く、頻繁に投稿した。
返事は敢えて出さない。
会える見込みがないのに、気を持たせたくなかったからだ。
しかし一人だけ気になる人物がいた。
投稿すると、必ずメールを寄こす。
メールを返さなくても、その都度送ってくる。
画像は添付されておらず、却って気になった。
アプリの検索ワードにマッスルビートを入力し、最初のメールを読み直す。
『初めまして。
マッスルビートと言います。
年は23才です。
理想の筋肉だったので、堪らずメールしてみました。
以前はウェイトをやってたのですが、肩を壊してからは泳ぐだけになりました。
また投稿を楽しみにしてます。』
『いつも画像がアップされるのを楽しみにしています。
今日のケツワレ姿は強烈でした。
あんな大胆な格好で仕事が出来るなんて羨ましいです。』
『今日の海画像は最高です。
チンコくっきりで興奮しました。
撮影者もきっと勃起してたんでしょうね。』
『今日は珍しく全裸でしたね。
股間の手が邪魔でしたが。
俺もガテン野郎さんの筋肉に感化されて、筋トレを再開しました。
気持ち良く寝れそうです。
おやすみなさい。』
(つづく)
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