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番外編2(Physical Attraction)
番外編-⑪【Love Don’t Live Here Amymore】
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吹き上げてきた強い風でイチが体勢を崩す。
舞い上がった服がゆらゆらと崖下に落ちていく。
イチのスパッツを下げ、直に貞操具を口に含む。
強烈な刺激臭が思考を止めた。
振りかざしたパンチをイチの腹に当てる。
弱々しいパンチは跳ね返された。
もう一度拳を振り上げる。
今度はスピードを上げてみた。
拳が腹筋にめり込んだ。
次はもっと速く打ち付ける。
イチの体勢が大きく揺らいだ。
自分の願望を実践してみる。
初めて叩く音に欲情した。
飛び散る汗が顔を濡らす。
我を忘れ、殴り続けた。
貞操具の臭いが一段と強まった。
「射精しちまった。」
照れ顔が崖下を覗き込む。
「服、落ちちゃったな。どうする?」
「うん、何か着るもの持ってる?」
波間で漂う服に未練はない。
「ああ、車に何かあるだろう。
そろそろ行くか。」
一番重い拳が腹筋を貫いた。
恍惚の中で膝をつく。
見上げる顔は逆行で表情は分からない。
往復ビンタが旅の終わりを告げた。
「ここで服を買え。
流石にその汚れたスパッツじゃ、飛行機に乗れんだろ。」
車は大きなスポーツ用品店の駐車場で停車した。
斜め前に宿泊しているホテルの看板が見える。
別れが近い事を知った。
「ありがとう。」
二人で店内に入る。
Tシャツとサーフパンツを入れた籠を持ち、レジに並ぶ。
急に重みを感じた。
隣に明後日の方向を見ているイチが立つ。
籠の中にスパイクが入っていた。
「俺からのプレゼントだ。
東京に帰ったら、それで誰かに踏んでもらえ。」
視線を合わす事なくイチが札を差し出す。
「遠慮なく貰っておくよ。
でもこれを履くのは誰かじゃない。
次回来た時にこれで責めてくれないか?」
スパイクの凹凸に聞いてみる。
「気が向いたらな。
俺、約束って嫌いなんだ。
その時の風向き次第だな。
お前だって帰ったら、風向きが変わってるかもしれないぞ。」
札が籠の中へ舞い落ちた。
イチらしいと思う。
連絡先の交換は諦めるしかなさそうだ。
沖縄へ来て、自分の中で何かが変わった。
これでユーキを責めてやろう。
殴るコツは覚えた。
『泣いても許してやらないぞ。』
内心ほくそ笑む。
ユーキの泣き顔を想像すると、股間が熱くなった。
「お客様、こちらのお金は?」
店員が籠の中に散乱する千円札を見て、怪訝な声を出す。
隣にイチの姿はない。
本当に実在したのか、自信がなくなる。
籠の中のスパイクをギュッと掴む。
一番会いたいのはイチの筈だ。
スパッツの染みが拡大しているが、今は気にならない。
『野郎は拳で語るのさ。』
それを実践するだけだ。
出発ゲートで搭乗案内を待っていると、ポケットの中でスマホが揺れた。
淫らな妄想を止められ、渋々ロックを解除する。
メールマークが点滅していた。
『元気か?
あれから良く考えたんだけど、やはり俺にはお前が必要なんだ。
やり直せないか?
連絡待ってる。』
差出人を見て、益々不愉快になる。
どうしてこんなメールを送ってこれるのか?
その厚かましさに呆れてしまう。
こんな男を好きだった事が信じられない。
頭を振って、再び浮かんだ顔を追い払う。
『あっ、そうそう。
お前ってさ、オカマとしての魅力に欠けるんだよな。
幾らマッチョでもバックもフェラも出来ないんじゃ、物足りないんだ。
悪いけど、もう連絡しないでくれ。』
最後の言葉を思い返すと、拳が震えた。
(つづく)
舞い上がった服がゆらゆらと崖下に落ちていく。
イチのスパッツを下げ、直に貞操具を口に含む。
強烈な刺激臭が思考を止めた。
振りかざしたパンチをイチの腹に当てる。
弱々しいパンチは跳ね返された。
もう一度拳を振り上げる。
今度はスピードを上げてみた。
拳が腹筋にめり込んだ。
次はもっと速く打ち付ける。
イチの体勢が大きく揺らいだ。
自分の願望を実践してみる。
初めて叩く音に欲情した。
飛び散る汗が顔を濡らす。
我を忘れ、殴り続けた。
貞操具の臭いが一段と強まった。
「射精しちまった。」
照れ顔が崖下を覗き込む。
「服、落ちちゃったな。どうする?」
「うん、何か着るもの持ってる?」
波間で漂う服に未練はない。
「ああ、車に何かあるだろう。
そろそろ行くか。」
一番重い拳が腹筋を貫いた。
恍惚の中で膝をつく。
見上げる顔は逆行で表情は分からない。
往復ビンタが旅の終わりを告げた。
「ここで服を買え。
流石にその汚れたスパッツじゃ、飛行機に乗れんだろ。」
車は大きなスポーツ用品店の駐車場で停車した。
斜め前に宿泊しているホテルの看板が見える。
別れが近い事を知った。
「ありがとう。」
二人で店内に入る。
Tシャツとサーフパンツを入れた籠を持ち、レジに並ぶ。
急に重みを感じた。
隣に明後日の方向を見ているイチが立つ。
籠の中にスパイクが入っていた。
「俺からのプレゼントだ。
東京に帰ったら、それで誰かに踏んでもらえ。」
視線を合わす事なくイチが札を差し出す。
「遠慮なく貰っておくよ。
でもこれを履くのは誰かじゃない。
次回来た時にこれで責めてくれないか?」
スパイクの凹凸に聞いてみる。
「気が向いたらな。
俺、約束って嫌いなんだ。
その時の風向き次第だな。
お前だって帰ったら、風向きが変わってるかもしれないぞ。」
札が籠の中へ舞い落ちた。
イチらしいと思う。
連絡先の交換は諦めるしかなさそうだ。
沖縄へ来て、自分の中で何かが変わった。
これでユーキを責めてやろう。
殴るコツは覚えた。
『泣いても許してやらないぞ。』
内心ほくそ笑む。
ユーキの泣き顔を想像すると、股間が熱くなった。
「お客様、こちらのお金は?」
店員が籠の中に散乱する千円札を見て、怪訝な声を出す。
隣にイチの姿はない。
本当に実在したのか、自信がなくなる。
籠の中のスパイクをギュッと掴む。
一番会いたいのはイチの筈だ。
スパッツの染みが拡大しているが、今は気にならない。
『野郎は拳で語るのさ。』
それを実践するだけだ。
出発ゲートで搭乗案内を待っていると、ポケットの中でスマホが揺れた。
淫らな妄想を止められ、渋々ロックを解除する。
メールマークが点滅していた。
『元気か?
あれから良く考えたんだけど、やはり俺にはお前が必要なんだ。
やり直せないか?
連絡待ってる。』
差出人を見て、益々不愉快になる。
どうしてこんなメールを送ってこれるのか?
その厚かましさに呆れてしまう。
こんな男を好きだった事が信じられない。
頭を振って、再び浮かんだ顔を追い払う。
『あっ、そうそう。
お前ってさ、オカマとしての魅力に欠けるんだよな。
幾らマッチョでもバックもフェラも出来ないんじゃ、物足りないんだ。
悪いけど、もう連絡しないでくれ。』
最後の言葉を思い返すと、拳が震えた。
(つづく)
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