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Chapter27(青春編)
Chapter27-②【眠れぬ夜】
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「ねっ、行こうよ。
ハロウィンナイトは年に一回きりだし。」
ユーキが執拗に誘う。
「ヤマトさんと行けよ。」
うんざりした口調で言うが、聞き入られる気配はない。
「その日はヤマトさんが出張でいないんだ。
だから誘っているんだよ。」
「一人で行った方が自由が利くぞ。
好きな時間に行って、好きな時間に帰った方が楽だぞ。」
適当な理由を探し、説得を試みる。
「だってあのクラブ、辺鄙な場所にあるじゃん。
車ないと不便なんだよ。
タケルだったら、流れ解散でも怒らないでしょ?」
勝手な理由を堂々と述べた。
「ユーキには負けたよ。
まあ、快気祝いだ。」
口では勝てそうもない。
面倒臭いと思いながらも、引き受けてしまった。
ところが当日になって、キャンセルのラインが届いた。
『ゴメン。今日、行けなくなっちゃった。
不動産屋から連絡があって、引っ越し先を見に行く事になっんだ。
タケルも楽しみしてたのに、本当にゴメンね。』
ラインを読んで、苦笑する。
それでも許してしまうのは自分の甘さか、ユーキの人柄の良さか。
それにしても突然のキャンセルに戸惑う。
夏の事件以降、自分を制御出来ずにいた。
絶えず欲望の焔が燻っている。
時間を見付けては様々なSMクラブに顔を出す。
そこで多くの男達を責め立てるが、欲求は満たされない。
焔は決して燃え盛る事はないが、鎮火する事もなかった。
ベッドに入ったが、眠りが訪れて来る気配はない。
ベッドを出ると、ナイトに向かう事にした。
人混みで踊っていると、あらゆる所から伸びた手が股間を触る。
最近はクラブでも、レザーパンツとエンジニアブーツで通していた。
しかし今日は革製の短パンとハーネス、そしてロングブーツという装いだ。
あからさまに触ってくる男が肌を密着させてきた。
踊るのは諦めるしかなさそうだ。
人で溢れるフロアを横切り、隅に置かれたテーブルを陣取る。
20代も半ばを過ぎると、一時間も踊ると休憩が必要だ。
「タケル、おはよう。」
途中、何人かと挨拶するが、名前も知らない奴もいる。
「おいおい、今日は随分、派手だな。」
エナメルの短パンとシャツを着たミサキがニヤニヤしながら近付いて来た。
「まあ、ハロウィンだからな。
あの時はありがとな。」
三浦の事件で、助けてくれた礼を言う。
「気にするなよ。」
照れ隠しに、タケルの乳首のピアスを引っ張った。
「今日はヤマトと一緒か?」
ミサキが辺りを見ながら聞く。
「いや、一人だ。
ヤマトさんは出張らしい。」
ユーキから聞いてた情報を伝える。
「一人なんて、モテモテのタケルが珍しいじゃん。
なら、人違いか。
ヤマトに似ている奴が、踊っていたんだよな。」
ミサキが腕時計を見ながら言う。
表情が一瞬変わった事に、気付かれていない。
「そろそろ時間だ。
盛り上げてくるか。」
ミサキはエナメルのシャツを翻すと、高台に上がって行った。
ノンアルコールを飲み干すと、その場を離れた。
人を掻き分け、奔走する。
大音響が轟くスピーカーの前で踊っている男を見付けた。
暫くその姿を見守る。
男はポロシャツにジーンズという、至って普通の服装だった。
袖から出ている二の腕や、はち切れそうなジーンズからその筋量は見当が付く。
『あの筋肉に張り付くウエアを着せたい。
そして欲望の赴くままに凌辱したい!』
身体の中の焔が沸々と燃え立つ。
男は汗を拭うと、空いているテーブルに向かう。
後を追う足が止まる。
そのテーブルにビールを二本置く奴がいた。
上半身は裸で、ショートスパッツを穿いたビルダーだ。
汗だくの男にビールを勧めている。
「チッ!」先を越され、舌打ちが出た。
(つづく)
ハロウィンナイトは年に一回きりだし。」
ユーキが執拗に誘う。
「ヤマトさんと行けよ。」
うんざりした口調で言うが、聞き入られる気配はない。
「その日はヤマトさんが出張でいないんだ。
だから誘っているんだよ。」
「一人で行った方が自由が利くぞ。
好きな時間に行って、好きな時間に帰った方が楽だぞ。」
適当な理由を探し、説得を試みる。
「だってあのクラブ、辺鄙な場所にあるじゃん。
車ないと不便なんだよ。
タケルだったら、流れ解散でも怒らないでしょ?」
勝手な理由を堂々と述べた。
「ユーキには負けたよ。
まあ、快気祝いだ。」
口では勝てそうもない。
面倒臭いと思いながらも、引き受けてしまった。
ところが当日になって、キャンセルのラインが届いた。
『ゴメン。今日、行けなくなっちゃった。
不動産屋から連絡があって、引っ越し先を見に行く事になっんだ。
タケルも楽しみしてたのに、本当にゴメンね。』
ラインを読んで、苦笑する。
それでも許してしまうのは自分の甘さか、ユーキの人柄の良さか。
それにしても突然のキャンセルに戸惑う。
夏の事件以降、自分を制御出来ずにいた。
絶えず欲望の焔が燻っている。
時間を見付けては様々なSMクラブに顔を出す。
そこで多くの男達を責め立てるが、欲求は満たされない。
焔は決して燃え盛る事はないが、鎮火する事もなかった。
ベッドに入ったが、眠りが訪れて来る気配はない。
ベッドを出ると、ナイトに向かう事にした。
人混みで踊っていると、あらゆる所から伸びた手が股間を触る。
最近はクラブでも、レザーパンツとエンジニアブーツで通していた。
しかし今日は革製の短パンとハーネス、そしてロングブーツという装いだ。
あからさまに触ってくる男が肌を密着させてきた。
踊るのは諦めるしかなさそうだ。
人で溢れるフロアを横切り、隅に置かれたテーブルを陣取る。
20代も半ばを過ぎると、一時間も踊ると休憩が必要だ。
「タケル、おはよう。」
途中、何人かと挨拶するが、名前も知らない奴もいる。
「おいおい、今日は随分、派手だな。」
エナメルの短パンとシャツを着たミサキがニヤニヤしながら近付いて来た。
「まあ、ハロウィンだからな。
あの時はありがとな。」
三浦の事件で、助けてくれた礼を言う。
「気にするなよ。」
照れ隠しに、タケルの乳首のピアスを引っ張った。
「今日はヤマトと一緒か?」
ミサキが辺りを見ながら聞く。
「いや、一人だ。
ヤマトさんは出張らしい。」
ユーキから聞いてた情報を伝える。
「一人なんて、モテモテのタケルが珍しいじゃん。
なら、人違いか。
ヤマトに似ている奴が、踊っていたんだよな。」
ミサキが腕時計を見ながら言う。
表情が一瞬変わった事に、気付かれていない。
「そろそろ時間だ。
盛り上げてくるか。」
ミサキはエナメルのシャツを翻すと、高台に上がって行った。
ノンアルコールを飲み干すと、その場を離れた。
人を掻き分け、奔走する。
大音響が轟くスピーカーの前で踊っている男を見付けた。
暫くその姿を見守る。
男はポロシャツにジーンズという、至って普通の服装だった。
袖から出ている二の腕や、はち切れそうなジーンズからその筋量は見当が付く。
『あの筋肉に張り付くウエアを着せたい。
そして欲望の赴くままに凌辱したい!』
身体の中の焔が沸々と燃え立つ。
男は汗を拭うと、空いているテーブルに向かう。
後を追う足が止まる。
そのテーブルにビールを二本置く奴がいた。
上半身は裸で、ショートスパッツを穿いたビルダーだ。
汗だくの男にビールを勧めている。
「チッ!」先を越され、舌打ちが出た。
(つづく)
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