妄想日記1<<ORIGIN>>

YAMATO

文字の大きさ
上 下
301 / 354
Chapter26(東京バトル編)

Chapter26-①【君がいない】

しおりを挟む
朝方までユーキの病室で過ごした。
ユーキから電話があったのは、深夜0時30分だった。
「タケル…、た、助けて…。」
その第一声に驚く。
「どうしたんだ?
何処にいるんだ?」
矢継ぎ早に聞く。
「ヤマトさんの…、近くの公園…。」
それ以降、返事はなくなった。
「おい、どうした!」
音声を発しなくなったスマホを唖然と眺める。
遠くでサイレン車が通過していく。
慌ててZのキーを持ち、駐車場へ向かう。
公園は広く、中々ユーキは見付からない。
外周の遊歩道をひたすら歩く。
所々で電話を掛けるが、反応はない。
何回か掛けたところで、微かな着信音が聞こえた。
感を頼り、池の畔に出る。
耳を澄ませ、辺りを見回す。
池に突き出た東屋が視界に入る。
音の方向と一致した。
全力で走るが、東屋は一向に近付いてこない。
中でユーキが倒れていた。
「ユーキ、どうしたんだ?」
抱え上げるが、意識はない。
赤黒く腫れた顔と、無残に折れ曲がった腕に血の気が失せる。
腕に負担が掛からない様に背負うのは難しい。
両手で抱え、Zに向かった。
その道筋は酷く遠い。
 
病院で治療が続く中、警察が来た。
分かる範囲で説明をした。
「だったらオカマ狩りだな。」
警官は一笑する。
三浦の名前を言いたかったが、証拠はない。
警官は医師と話をすると、帰って行った。
朝方、医師から説明があった。
内臓に異常はないが、右腕の骨折が酷いとの事だった。
全治三ヶ月との診断を受ける。
再三に渡ってヤマトに電話をするが、留守電になるだけだ。
まさかと思うが、ヤマトも襲われた可能性がある。
募る苛立ちの中、空を見上げた。
どんよりした雲に覆われていた。
時折強い風が吹き、草木を揺らす。
スマホを手に取り、リダイアルする。
呼び出し音が続く。
またダメかと切り掛けた時、相手が出た。
「やっと出たか!
どこにいるんだ!」
思わず詰問調になる。
 
安堵の思いで自宅に向かう。
昼まで仮眠したかった。
家の前の公園に差し掛かった時、突然人が飛び出してきた。
咄嗟にブレーキを踏む。
間一髪セーフだが、通行人は道路に倒れた。
急いで車外に出て、男を抱き起こす。
「大丈夫ですか!怪我は?」
相手の顔を覗き込む。
「はあ…、多分大丈夫です。
こちらこそ飛び出して、すみません。」
男は起き上がると、尻を叩く。
「痛っ!」男がよろけた。
「病院へ行きましょう。」
手を差し延べ、身体を支える。
顔がすぐ近くにあった。
どことなくヤマトに似ている。
「本当に平気です。
ちょっと足を捻っただけなんで、少し休めば大丈夫です。」
照れ気味に男が笑った。
「だったら俺の家で休んで下さい。
そこのマンションです。」
建物を指差し、勧める。
「だったら、少しだけ休ませて貰おうかな。」
男は少し離れると、足首を摩った。
 
リビングへ案内する。
「ちょっと待ってて下さい。
ベッドの用意をしてくるので。」
慌ただしく寝室へ向かう。
「構わないで下さい。
このソファーに座らせて貰えれば、充分です。
それより…、何か飲み物を貰えますか?」
遠慮勝ちに言ってきた。
「気が付かなくて、すみません。」
寝室に行くのを止め、キッチンでコーヒーを注ぐ。
「ブラックしかないけど。」
テーブルにグラスを二個置く。
「ありがとう。俺もコーヒーはブラックしか飲みません。
エイタと言います。
俺の不注意なのに、迷惑掛けてすみません。」
坊主頭を下げる。
「いや、俺の方こそ。
でも大事に至らなくて良かった。」
大分落ち着いてきた。
正面から見ると、益々ヤマトに似ている。
顔の作りもそうだが、ピッタリ張り付いたTシャツから伺えるボディも非情に似ていた。
座ったエイタの短パンがずり上がり、太い腿が露出している。
発達した大腿二頭筋が膨らんでいた。
『こんな時に、何を考えているんだ!』
自分の不謹慎さに呆れる。
「ベッドを用意してくるので、寛いでいて下さい。」
邪心から逃れる様に、腰を浮かした。
 
 
(つづく)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

消防士の義兄との秘密

熊次郎
BL
翔は5歳年上の義兄の大輔と急接近する。憧れの気持ちが欲望に塗れていく。たくらみが膨れ上がる。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

泥々の川

フロイライン
恋愛
昭和四十九年大阪 中学三年の友谷袮留は、劣悪な家庭環境の中にありながら前向きに生きていた。 しかし、ろくでなしの父親誠の犠牲となり、ささやかな幸せさえも奪われてしまう。

処理中です...