妄想日記1<<ORIGIN>>

YAMATO

文字の大きさ
上 下
300 / 354
Chapter25(沖縄新原編)

Chapter25-⑪【The end of the world】

しおりを挟む
「襲われたって、誰に?」
答は分かっていた。
「ユーキの意識が戻らないから、はっきり分からない。」
タケルは溜息を漏らす。
「でも、三浦だよね?」
忌まわしい名前を口にする。
「ああ、間違いないだろう。
ヤマトさんはいつ戻るんだ?」
冷静さを取り戻したタケルが聞く。
「昼の便を予約してるけど、これから空港に行って変更出来るか聞いてみるよ。」
居ても立ってもいられず、スマホを片手に荷物を片す。
「なら便が決まったら、連絡してくれ。
羽田に向かいに行く。」
「助かるよ、後でライン入れとく。」
それだけ言うと、通話は切れた。
「どうかしたのか?」
心配そうな表情が覗き込む。
「知り合いが事故にあったんだ。
悪いんだけど、空港まで一緒に来てくれない?
レンタカーを返して欲しいんだ。」
ユーキの名前は伏せて、説明する。
「そりゃ大変だ。
だったらレンタカーで空港へ向かおう。
車は返しておくから、安心しろ。」
タクミは面倒な依頼を快く引き受けてくれた。
運良く、朝一のフライトに空きがあった。
「面倒なこと頼んで、本当にゴメン。
マジ助かったよ。」
深々と頭を下げる。
レンタカー会社が開くのを、いらいらしながら待たなくて済んだ。
心から礼を言う。
「ユーキにヨロシク言ってくれ。」
最後の握手は慌ただしい中、呆気なく終わった。
 
ユーキの具合が気になる。
タケルに電話するが、圏外で繋がらない。
仕方なく、到着時間をラインで知らせた。
着信履歴を確認する。
最新の画面はタケルの名前で埋まっていた。
前のページへスクロールする。
その中にユーキの名前があった。
時間は00:24を表示している。
その一時間後から、タケルの着信が連続していた。
『ユーキは俺に助けを求めたんだ。』
ユーキの文字が、滲んで見えない。
涙を拭うと、立ち上がる。
スマホの電源を切り、機中へ向かう。
『きっと罰が当たったんだ。』
幾ら悔やんでも、悔やみきれない。
『罰が当たるなら、俺自身に当たればいい。
どうしてユーキなんだ!』
拳を握り締める。
矛先のない怒りに、余計苛立ちを覚えた。
 
定刻通りのフライトだった。
到着フロアには多くの人がいたが、タケルの姿はない。
電話をしてみるが、圏外のままだ。
タケルが来ない事には、入院先が分からない。
とりあえず到着した旨をラインし、喫茶店に入る。
『まさか、タケルまで…。』
不安が押し寄せてきた。
コーヒーが冷めていく中、鳴らないスマホを睨み続ける。
1時間待ったが、連絡は来なかった。
ここにいつまでいても、埒が明かない。
ユーキの家に向かう事を思い付く。
入院せずに、家で寝ている可能性もある。
呼び鈴を押すが、返事はない。
こんな事なら、ススムの連絡先を聞いておけば良かった。
今更後悔しても始まらない。
無駄足かもしれないが、タケルのマンションに向かう。
じっと待つのは辛すぎた。
エントランスで部屋番号を押すが、応答はない。
帰ろうと思ったが、何かが引っ掛かる。
丁度宅配業者が出て来たので、入れ違いに中に入った。
直に部屋に行ってみる。
呼び鈴を何回か押すが、やはり応答はなかった。
やはりタケルに限って、寝過ごす事はない様だ。
諦めて踵を返した瞬間、中から足音がした。
「はぁーい。」知らない声だ。
「ヤマトと言いますが、タケル君いますか?」
恐る恐る聞いてみる。
内鍵が開く音がした。
ドアが開くと、浅黒い男が立っている。
タケルと同年代に見える男はボクサーパンツ一枚の裸体だった。
「あの…、タケル君はいますか?」
もう一度聞いてみる。
「タケルは寝ているよ。
ちょっと張り切り過ぎて、ダウンしてるんだ。
裸だけど、起こしてこようか?」
男が悪戯っ子の様に笑う。
「いや、寝てるならいいです。
失礼します。」
振り返り、エレベーターに向かう。
唯一の救いだったタケルに裏切られた。
その思いが重く伸し掛かる。
それでも戦わなくてはならない。
これで最後にしよう。
そう決心し、都心を目指した。
 
 
(完)
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

屈した少年は仲間の隣で絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...