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Chapter21(略奪編)
Chapter21-⑤【トラブルメイカー】
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「で、ユーキはそのDVDを持っているのか?」
セイジが身を乗り出して聞く。
「いや、俺は持ってない。
ヤマトさんが自分で持っていると思う。」
ユーキが答えた。
「先ずはヤマトさんに電話してみろよ。
ガセかもしれないぜ。」
言われた通りに助言をする。
「あっ、そうか!」
ユーキは受話履歴からリダイアルする。
しかし留守番のメッセージが流れるばかりだ。
10回掛けたところで諦める。
これで拉致を信じ込んだはずだ。
「警察に行くか?」
上目遣いで、蒼褪めた顔に聞く。
「それは最後の手段だ。
タケルに相談してみる。」
ユーキはスマホを操作し始めた。
「タケルって、誰なんだ?」
セイジは胸を撫で下ろし、核心を尋ねる。
警察沙汰になるようだったら、逃げ出すつもりだった。
「タケルは前回も三浦とトラブルになった時に、助けてくれたんだ。」
ユーキの答えに、零れ出る笑みを堪える。
「そのタケルって、どんな奴なんだ?」
尚も質問を続ける。
「一言で言うとスーパーマンかな。
どんな難題でも解決してくれるんだ。
まあ、バックに裏組織がいるから、無敵なんだよ。
あっ、ちょっと待って。繋がった。」
ユーキは自分の想像をさも本当の様に説明した。
『裏組織?警察よりヤバくないか?
まあ、俺はそのそいつの素性を伝えるだけだ。
それで金貰ったら、とっとと手を引こう。
深入りは絶対にしない!』
セイジは決心を復唱する。
「これからタケルと会ってくるよ。」
ユーキがリュックを持つ。
「俺も一緒に行っていいか?
ヤマトさんが心配だ。」
一緒に席を立つ。
時計は5時を回っていた。
待ち合わせのカフェに入ると、既に男の前の灰皿はテンコ盛りだ。
タケルを紹介され、本題に入る。
ユーキが先日の画像投稿事件の話をした。
「それは宣戦布告だな。
何でその時に、連絡して来ないんだ!」
タケルが一喝する。
ドスの効いた声にユーキが縮こまった。
「だってヤマトさんが、タケルに迷惑掛かるからって…。」
言い訳は最後まで言えない。
「ったく!結局、掛けているじゃないか!」
タケルの苛立ちは納まらない。
煙草に火を点けると、咥えたまま黙った。
冷静さを取り戻す努力をしている様子だ。
「それにしても変だよな?」
タケルが口を開く。
「何が?」ユーキが聞く。
「だって逆だろう。
ユーキを監禁して、ヤマトさんにDVDを持って来させるのが普通だ。
しかも宣戦布告までして。」
落ち着きを取り戻したタケルが推理していく。
「確かに。」ユーキが頷く。
「これは裏に何かあるな。」
タケルが断言する。
「裏って?」ユーキが同じ単語を繰り返す。
「うーん、そこまでは分からん。」
咥えた煙草から灰が落ちた。
『答えはお前だよ!』
セイジは内心、ほくそ笑む。
「後30分で時間だ。
とりあえずヤマトさんがDVDを持っているからと言って、会いに行くしかないな。
会えば突破口が見えるかもしれない。
ユーキが独りで行って、いざという時は俺がバックアップする。
多少無謀だが、これしかない。」
タケルが結論付ける。
ユーキのスマホが鳴った。
三人がスマホを見る。
「独りで行くと言うんだぞ。」
タケルが念を押す。
頷いたユーキが電話に出る。
「ヤ、ヤマトさん!」
ユーキが素っ頓狂な声を張り上げた。
「セイジにも迷惑掛けちゃったな。
こんなに心配してもらって…、改めてお礼するから。
伝えておいてよ。」
馴染みのカフェで合流し、ユーキに礼を言う。
セイジは顔を見ると、安心して帰って行った。
爽やかな笑顔のセイジに、好感度はすっかりV字回復していた。
「それを聞いたら、セイジもきっと喜ぶよ。」
ユーキが微笑む。
「これって、どういう事かな?」
全ての話を聞いたが、益々納得がいかない。
「だな、どうも腑に落ちない。」
タケルも首を捻る。
答えの出ない疑問に沈黙が長引く。
「でもさ、タケルがいてくれて、助かったよ!
俺独りじゃ、対応し切れなかった。」
オーバーアクションのユーキが笑いを誘った。
(つづく)
セイジが身を乗り出して聞く。
「いや、俺は持ってない。
ヤマトさんが自分で持っていると思う。」
ユーキが答えた。
「先ずはヤマトさんに電話してみろよ。
ガセかもしれないぜ。」
言われた通りに助言をする。
「あっ、そうか!」
ユーキは受話履歴からリダイアルする。
しかし留守番のメッセージが流れるばかりだ。
10回掛けたところで諦める。
これで拉致を信じ込んだはずだ。
「警察に行くか?」
上目遣いで、蒼褪めた顔に聞く。
「それは最後の手段だ。
タケルに相談してみる。」
ユーキはスマホを操作し始めた。
「タケルって、誰なんだ?」
セイジは胸を撫で下ろし、核心を尋ねる。
警察沙汰になるようだったら、逃げ出すつもりだった。
「タケルは前回も三浦とトラブルになった時に、助けてくれたんだ。」
ユーキの答えに、零れ出る笑みを堪える。
「そのタケルって、どんな奴なんだ?」
尚も質問を続ける。
「一言で言うとスーパーマンかな。
どんな難題でも解決してくれるんだ。
まあ、バックに裏組織がいるから、無敵なんだよ。
あっ、ちょっと待って。繋がった。」
ユーキは自分の想像をさも本当の様に説明した。
『裏組織?警察よりヤバくないか?
まあ、俺はそのそいつの素性を伝えるだけだ。
それで金貰ったら、とっとと手を引こう。
深入りは絶対にしない!』
セイジは決心を復唱する。
「これからタケルと会ってくるよ。」
ユーキがリュックを持つ。
「俺も一緒に行っていいか?
ヤマトさんが心配だ。」
一緒に席を立つ。
時計は5時を回っていた。
待ち合わせのカフェに入ると、既に男の前の灰皿はテンコ盛りだ。
タケルを紹介され、本題に入る。
ユーキが先日の画像投稿事件の話をした。
「それは宣戦布告だな。
何でその時に、連絡して来ないんだ!」
タケルが一喝する。
ドスの効いた声にユーキが縮こまった。
「だってヤマトさんが、タケルに迷惑掛かるからって…。」
言い訳は最後まで言えない。
「ったく!結局、掛けているじゃないか!」
タケルの苛立ちは納まらない。
煙草に火を点けると、咥えたまま黙った。
冷静さを取り戻す努力をしている様子だ。
「それにしても変だよな?」
タケルが口を開く。
「何が?」ユーキが聞く。
「だって逆だろう。
ユーキを監禁して、ヤマトさんにDVDを持って来させるのが普通だ。
しかも宣戦布告までして。」
落ち着きを取り戻したタケルが推理していく。
「確かに。」ユーキが頷く。
「これは裏に何かあるな。」
タケルが断言する。
「裏って?」ユーキが同じ単語を繰り返す。
「うーん、そこまでは分からん。」
咥えた煙草から灰が落ちた。
『答えはお前だよ!』
セイジは内心、ほくそ笑む。
「後30分で時間だ。
とりあえずヤマトさんがDVDを持っているからと言って、会いに行くしかないな。
会えば突破口が見えるかもしれない。
ユーキが独りで行って、いざという時は俺がバックアップする。
多少無謀だが、これしかない。」
タケルが結論付ける。
ユーキのスマホが鳴った。
三人がスマホを見る。
「独りで行くと言うんだぞ。」
タケルが念を押す。
頷いたユーキが電話に出る。
「ヤ、ヤマトさん!」
ユーキが素っ頓狂な声を張り上げた。
「セイジにも迷惑掛けちゃったな。
こんなに心配してもらって…、改めてお礼するから。
伝えておいてよ。」
馴染みのカフェで合流し、ユーキに礼を言う。
セイジは顔を見ると、安心して帰って行った。
爽やかな笑顔のセイジに、好感度はすっかりV字回復していた。
「それを聞いたら、セイジもきっと喜ぶよ。」
ユーキが微笑む。
「これって、どういう事かな?」
全ての話を聞いたが、益々納得がいかない。
「だな、どうも腑に落ちない。」
タケルも首を捻る。
答えの出ない疑問に沈黙が長引く。
「でもさ、タケルがいてくれて、助かったよ!
俺独りじゃ、対応し切れなかった。」
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