妄想日記1<<ORIGIN>>

YAMATO

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Chapter17(中野編)

Chapter17-②【天使のウィンク】

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休日のジムは大変な混み方だった。
「めちゃ混んでるね。目移りしゃう。」
ユーキはキョロキョロしながら、フリーウエイトエリアを徘徊する。
丁度空いたベンチに素早く荷物を置く。
「ヤマトさん、久し振りです。」
背後から声を掛けられた。
振り向くと、笑みを湛えた三浦が立っていた。
いや、笑っているのは口元だけで、目は笑っていない。
今日もビルダータンクとショートスパッツを着ている。
「ご無沙汰してます。」
差し出された掌の中でねっとりとした汗が纏わりつく。
「ヤマトさん、シングレットの件、覚えてますか?」
三浦が強かな顔で聞いてきた。
鎌倉のラブホテルでした約束の事を言ってるらしい。
「ええ、まあ。友達のユーキです。」
答えに窮し、ユーキの背中を押す。
「さすがヤマトさんのお友達だけあって、凄い筋肉ですね。」
ユーキにも握手を求めた。
握手した二人の視線が絡み合う。
「シングレットの件って何?」
ユーキがまた話題を戻す。
その無神経さに腹が立つ。
さっきはユーキが頼もしく思えたのに、おかしなものだ。
つい苦笑してしまう。
「ヤマトさん、何思い出し笑いしてるの?」
ユーキは尚も、空気の読めない質問をしてきた。
 
「ヤマトさんも私もシングレットが好きなのです。
それでお互いに着て会いましょうと、以前約束したんですよ。」
三浦が代わりに説明する。
「シングレット!」ユーキが食い付いた。
「ユーキさんもシングレットがお好きですか!
だったら三人でどうですか?」
三浦が妙な提案をする。
話がどうも変な方向へ向かっていく。
「いいね、いいね!」ユーキも乗り気だ。
「でも三浦さんの住まいは藤沢ですよね。」
話を収束させる方向へ持っていく。
さすがにユーキも、これから藤沢には行かないだろう。
「ご心配なく。
仕事で遅くなった時のために、都内に部屋を借りています。
ここから近いですよ。」三浦がにやりと笑う。
「だったら便利じゃん。」ユーキは行く気満々だ。
「お二人は来たばかりですよね。
二時間後に出口で待ち合わせしましょうか。」
三浦は具体的な時間を指定する。
もう逃げられない。
 
それでも微かな抵抗を試みる。
「ユーキさ、まだ風邪が治りきってないから、今日は有酸素だけにしておくよ。」
額に手を当て、ベンチを後にする。
「ユーキさん、サポートは私がしますよ。
遠慮なく言って下さい。」
三浦の声が、後ろから聞こえた。
イヤホンをして、有酸素運動を始める。
見る気はないが、バラエティ番組にチャンネルを合わせる。
「ぐおぉぉお!」イヤホン越しに咆哮が聞こえた。
ユーキがブリッジして、120キロを挙げている。
三浦が腰を下ろし、サポートしている。
前回と同様、ユーキの顔ギリギリまで尻を下ろしていた。
あざといナンパの手段に感心する。
それより、この場を脱出する方法を模索する。
今はカオル以外と、肌を合わせたくない。
ユーキは年上のマッチョがタイプだから、ビルダーの三浦はストライクど真ん中の筈だ。
ここは好意を持つユーキに押し付けようと画策する。
きっと三浦の事だから、ユーキとの一戦を動画に残したいと言うだろう。
それを逆手に取る作戦を練る。
『よし、作戦のシナリオは決まった。
後は実行するのみだ。』
キューピット役に徹する事で、罪悪感を相殺とした。
有酸素マシンを降りると、二人の元に歩み寄る。
「ちょっと疲れたから、駅前のコーヒーショップで待ってる。
ゆっくりしてきていいよ。」
二人に声を掛けた。
「えっ、帰らない?本当に待っててくれる?」
ユーキが驚いて、確認する。
「大丈夫、待ってるよ。」
満面の笑顔でウインクすると、手を挙げその場を去った。
二人の股間の盛り上がりは想定通りだ。
ユーキに至っては、先走りで股間が濡れていた。
三浦がそれを見落とす訳がない。
全てはシナリオ通りだった。
 
 
(つづく)
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